FOCUS2

2022.01

2022年度からFIP制度開始 再エネの「自立化」を促進

再生可能エネルギーはカーボンニュートラル時代の主力電源となることが期待されています。その実現には、再エネ自体を自立した産業へと成長させることが重要です。2022年4月から、従来のFIT(フィード・イン・タリフ)制度に加えて、主要な再エネの自立化を目的とした「FIP(フィード・イン・プレミアム)制度」が始まります。その概要を紹介します。

FITの成果と課題

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)は、再エネの導入拡大を目的として2012年に導入されました。再エネで発電された電気を一定の期間、火力などほかの発電方法より高く定められた価格で買い取ることを電力会社に義務付けています。買い取りにかかった費用は「賦課金」として電気料金に上乗せし、すべての消費者から回収する仕組みです。

FITの成果として、再エネの導入量は急拡大しました。2021年6月末までに稼働したFIT対象設備は累計で約7,200万kWにのぼります。増加した再エネの大半は、初期に高い買取価格が設定された事業用太陽光発電です。2011年度には住宅・非住宅合計で500万kW程度だった太陽光は、今や6,000万kW以上になりました。

一方で、FIT制度の課題も明らかになってきました。最大の課題は国民負担の増大です。2021年度の賦課金総額は約2.7兆円、標準的な家庭で年間1万円以上にふくらむ見通しです。

また、FITでは常に買取価格が一定のため、発電事業者は電力の需給状況に合わせて発電量を調整するインセンティブがありません。再エネの導入量が増えるほど、電力の需給バランスに悪影響をおよぼすおそれが大きくなります。

このほか、特に太陽光発電への参入者が急激に増えたことで、設備認定だけ受けて長期間着工しない、施工の安全性が不十分など、事業規律の低い事業者が現れているという問題もあります。

価格を市場連動に

こうした課題に対応するためFIT制度の見直しが行われ、新制度が2022年4月から施行されることになりました。2050年カーボンニュートラルの実現には再エネを主力電源化する必要があり、これまで手厚く保護されていた再エネを自立した電源へと育てていくことが狙いとなります。

新制度の中心となるのがFIP制度です。欧州などでも導入されている同制度では、卸電力取引市場などで売電した価格に一定のプレミアム(補助額)を上乗せした価格が発電事業者の収入になります。

また、一般的に発電事業者はあらかじめ発電量の計画を定め、実際の発電量を計画値に合わせていくことが求められますが、FIT制度ではそれが免除されていました。FIP制度ではこの義務が適用され、計画値と実績値に差(インバランス)が生じた場合には、発電事業者がその差を埋めるための費用を支払う必要があります。

こうした制度によって、再エネの市場への統合などが期待できます。一方、発電事業者自身が市場や相対で電気を取引することで、発電事業者には収入を最大化したり、コストを最小化するための工夫を行うインセンティブがこれまで以上に働きます。具体的には、蓄電池を活用して電力需要が大きい(市場価格が高い)時間帯に売電する、発電量の予測精度を高めてインバランス費用を抑える、などが考えられます。単独で出力調整や発電予測が難しい発電事業者は、アグリゲーター(複数の発電事業者などをとりまとめて電力売買などを行う事業者)の傘下に入る形が増えると予想されます。

主力電源への成長期待

FIP制度は原則として、ある程度の競争力を持つ大規模な電源(太陽光・地熱・水力は1,000kW以上、木質バイオマスは1万kW以上)が対象です。一定規模未満の電源は、FIP制度とFIT制度を選択することができます。

このほか4月からは、①再エネ導入拡大に必要な電力系統増強費用の一部を賦課金方式でまかなう制度②太陽光発電事業者にパネルなどの設備廃棄費用の積み立てを義務付ける制度③設備認定後、一定期間内に運転開始していない案件の認定を失効する制度——も同時に実施されます。

FITからFIPへの移行は、再エネが導入初期から本格的な普及期へと入ってきたことの現れです。FIP制度下で事業者の工夫などが進展して、再エネが他電源と同様に自立した電源になることが期待されます。最終的に補助が不要な競争力を持つことが、再エネの主力電源化の必須条件といえます。

50kW未満はFIT制度のみ適用

図:FITとFIPの比較

資源エネルギー庁資料をもとに作成

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