FOCUS

2022.11

今夏の節電へのご協力に感謝
冬に向けても需給両面で対策実施へ

6月末の東京電力管内における電力需給ひっ迫では、予備率が5%を下回る見通しとなったことから「電力需給ひっ迫注意報」が発令される事態となり、皆さまにご不便とご心配をおかけしました。7月以降は、補修点検を終えた発電所の運転開始により供給力が増加したことに加え、広く社会の皆さまに節電へのご協力をいただいたことで、安定的な電力供給を確保することができました。皆さまのご協力に感謝申し上げます。電力業界では引き続き厳しい電力需給状況が想定される冬に向けて、供給力の確保に努めてまいります。皆さまにおかれましても、この冬も無理のない範囲での節電にご協力をお願いいたします。

季節外れの暑さが影響

6月27~30日に需給ひっ迫が生じてしまった要因としては、6月としては過去に例を見ない暑さが続き、電力需要が大幅に増加したことが挙げられます。東京都における最高気温は6月25~30日まで6日間連続で35℃を上回りましたが、過去30年間で6月に最高気温が35℃を超えたのはわずか2日のみで異例の猛暑だったと言えます。

また、発電事業者は、電力需給バランスが緩む春季や秋季の「端境期はざかいき」に発電所の補修点検計画を立てています。今回の需給ひっ迫注意報が発令された6月には約2,000万㎾の火力発電所で補修が計画されており、季節外れの高気温によって電力需給ひっ迫が生じる結果となりました。

図:全国の火力発電所の月別補修量分布

経済産業省の資料をもとに作成

現在は、電力広域的運営推進機関が中心となって、端境期においても、厳気象や供給力変動、電源の計画外停止等のリスクを考慮した供給力確保について検討が進められています。

6月の需給ひっ迫注意報発令時、東京電力エナジーパートナーなどではデマンドレスポンス(DR)を実施して企業に電力需要の抑制を呼び掛けたほか、自家発電設備のたき増しも要請。家庭向けには、東京電力ホールディングスや電気事業連合会などがホームページで節電への協力を呼びかけました。経済産業省によると、需給ひっ迫が生じていた東京電力管内では6月30日に最大約440万㎾の節電が行われたと推計されています。

7月以降は、補修点検を終えた発電所の運転開始により供給力が増加したほか、エリアをまたいだ広域融通を実施するなどして電力需給の安定化に取り組み、さらに電気をお使いになる皆さまの節電へのご協力もあり、安定的な電力供給を確保することができました。

冬は最低限の予備率確保

一方、以前から厳しい電力需給が見込まれているこの冬に向けては、原子力発電所の再稼働や電源の補修点検計画の変更、供給力公募(kW公募)を通じた休止火力の再稼働などによる供給力の積み増しに努めてきました。これらの取り組みにより、10年に一度の厳しい寒さを想定した需要に対する予備率(電力供給の余力)は、最も厳しい1月の東北電力・東京電力管内で4.1%、沖縄電力を除く中部電力以西の各管内で5.6%と、安定供給に最低限必要とされる3%を上回る予備率を確保できる見通しとなりました。

ただ、急激な気温低下による電力需要の増加、予期せぬ発電所トラブルによる供給力の減少リスク、ウクライナ情勢の影響による国際的な燃料調達リスクが継続していることなど、予断を許さない状況に変わりはありません。このため、電力業界では、設備トラブルによる供給力減少リスクに備え、適切な設備保全や燃料確保に努めるほか、需要面でも無理のない範囲でできる限りの節電を呼び掛けるとともに、DRの普及拡大に向けた検討を進めるなど、需給両面で最大限の取り組みを行ってまいります。

10年に一度の厳気象を想定した需要に対する予備率

経済産業省および電力広域的運営推進機関の資料をもとに作成

存在感が高まる火力発電
脱炭素化の取り組みも着々と

厳しい電力需給が続く中、主要な「供給力」と「調整力」の両方の役割を担う火力発電の存在感が増しています。火力発電は発電時に二酸化炭素(CO2)を排出するのが課題ですが、最近ではカーボンフリー燃料やCCUS(CO2の回収・利用・貯留)など、脱炭素化に寄与する技術の確立も期待されています。

2011年の東日本大震災以降、国内の原子力発電所が停止したことによって減少した供給力は主に火力発電所が補ってきました。2012年度には発電電力量に占める火力発電の割合が約88%に達しています。昨今は、気象条件による太陽光発電などの出力変動をカバーする調整力としての役割も大きく、昨年策定された第6次エネルギー基本計画では、火力発電を「引き続き主要な供給力及び再生可能エネルギーの変動性を補う調整力として活用する」ことが示されています。

同計画では、電源構成に占める火力発電の割合を将来的に低減させる方針も示されていますが、短期間での過度な低減は電力の安定供給に支障を生じさせかねません。そのため、再エネの導入状況や系統安定性などを踏まえ、必要な規模を持続的に活用しながら方向性を見極めていくことが重要です。

一方、世界の脱炭素化の潮流は加速しており、2050年カーボンニュートラルを実現するためにも、火力発電によるCO2排出量は削減していかなくてはなりません。燃焼時のCO2排出量をゼロと見なせるバイオマス燃料の活用も進んでいますが、最近は燃焼時にCO2を排出しないアンモニアや水素を使った発電、発生したCO2を回収して地層などに閉じ込めるCCSの技術開発・導入が確実に進展しています。

図:大崎クールジェンプロジェクトの実証内容

中国電力会社案内パンフレットをもとに作成

石炭火力と脱炭素の両立へ

Jパワーと中国電力が実施する大崎クールジェンプロジェクトでは、石炭をガス化して高効率な発電を行う酸素吹石炭ガス化複合発電(酸素吹IGCC)にCO2分離・回収装置と燃料電池を組み合わせた「CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)」の実証試験が行われています。高効率の石炭火力発電を行いながら90%以上のCO2を回収できる次世代型石炭火力発電システム構築を目指した取り組みです。同システムが実用化されれば、石炭火力の持続的な活用とカーボンニュートラルの実現を両立できると期待されています。

アンモニア・水素混焼の実証

国内最大の発電事業者であるJERAは「ゼロエミッション火力」の実現を表明し、アンモニアや水素の混焼実証を進めています。

碧南火力発電所(石炭火力、410万㎾)で行っているアンモニア混焼の実証事業では、2023年度から4号機で混焼割合を20%に高める計画です。大型の商用石炭火力における大量のアンモニア混焼は世界初の試みとなります。

さらに、水素の混焼については、2025年度までに同社の大型LNG火力発電所で混焼率30%での実証試験を行い、2030年代の本格運用を目指すとしています。

碧南火力発電所(愛知県碧南市)提供:JERA

碧南火力発電所(愛知県碧南市)提供:JERA

産業界全体でのCO2削減へ

CO2排出量の削減に寄与する革新的技術のひとつが、発電事業や製品生産工程などの産業活動から排出されるCO2を回収して貯留するCCSと、これを有効に利用するCCUです。経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)等が中心となり北海道苫小牧市で実施した実証実験では、累計30万トンのCO2を海底下に圧入しました。今後、CCSは法的整備等を経て、2030年までの事業開始が計画されています。

また、関西電力ではCO2を分離・回収してから貯留地へ運ぶまでに必要となる技術やコストを精査し、合理的なCCSの実施方法に関する検討を行うと表明。東北電力も他社と共同で、CCSに関わるサプライチェーン構築に向けた共同調査を行うとしており、CCSの早期実現に向けた動きが活発化しています。

電力の安定供給に欠くことのできない火力発電の脱炭素化は産業界全体で取り組むべき課題であり、国・メーカー・他産業とも連携して取り組んでまいります。

女優の今田美桜さんがご出演
Web限定スペシャルムービーをご紹介

  • 女優の今田美桜さんご出演によるWeb限定スペシャルムービー「だいじな話は突然に。」を、電気事業連合会の特設Webサイトで配信しています。今田さんが恋人や親友との会話の中で、地球温暖化やエネルギー自給率といった問題についてわかりやすく伝えるストーリーです。

    9月に配信をスタートしたWebムービー第2弾「依存というリスク」では、エネルギー資源のおよそ9割を海外からの輸入に頼る日本の現状を紹介するとともに、日本が将来にわたって安定した電力供給を確保するためには、安全性の確保を大前提に、火力、再生可能エネルギー、原子力をバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」が大切であることをお伝えしています。

    特設サイトでは、Webムービー第1弾「その恋、CO2出しますか?」も引き続きご視聴いただけます。今田さんの一言から急展開する2本のストーリー、ぜひご覧ください。

    Web限定スペシャルムービー特設サイトはこちら
    https://www.fepc.or.jp/sp/daijinahanashi/

    CM特設サイトはこちら
    https://www.fepc.or.jp/sp/energymix/

    節電情報ポータルサイトはこちら
    https://www.fepc.or.jp/sp/setuden/

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