FOCUS

2026.01

電力需要の拡大を見据え 高まる原子力建て替えの必要性

GX(グリーン・トランスフォーメーション)の進展やAI(人工知能)の活用拡大などにより今後、電力需要が拡大するとの見方が高まっています。そうした状況下で、政府による2040年度のエネルギーミックスにおいて、原子力は電力需要の2割を担うとされました。その実現に向けては、既設炉の最大限活用とともに、計画から運転までの長期にわたるリードタイムも意識した建て替えに取り組んでいく必要があります。

安定電源の
設備容量確保を

昨年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、GXの進展などで電力需要の増加が見込まれる中、安定供給と脱炭素を両立する観点から、再生可能エネルギー、原子力、次世代火力など使える技術は全て活用し、バランスの取れた電源構成を目指す方向性が示されました。

また電力広域的運営推進機関(広域機関)が昨年7月に公表した電力需給シナリオでは、多くのケースで将来の供給力不足が懸念される結果が示されました(詳しくはEnelog Vol.72をご覧ください)。中長期の安定供給維持には、原子力や火力といった安定電源の設備容量を確保していくことが重要になります。

このうち原子力について事業者は、今後多くのプラントが廃止措置に移行する中で、安全確保を大前提に既設炉を最大限活用するために、日常的な安全・安定運転はもとより、さらなる利用率向上や長期運転を見据えたデータ拡充などの取り組みを進めています。

その上で、安全性の確保と地元の理解を大前提に、原子力発電所の建て替えを進めていく必要があります。事業者が建て替えを判断するためには「国による原子力発電の見通し・将来像の設定」「建て替えを後押しする事業環境の整備」「規制の予見性向上」が非常に重要になります。

事業者の建て替え判断に必要となる要素

漸減する供給力
手当てをするのは今

運転開始から60年で既設炉を廃止すると仮定したとき、原子力は2030年度時点の供給力に対して、2040年度には約360万kW、2050年度には約1400万kWの供給力が失われている見通しです。

特に原子力は火力などと比べて建設に長い時間を要します。原子力人材やサプライチェーン維持・強化という課題に加え、発電所の建設経験の不足による遅延リスクなども想定されます。これらを踏まえると、極力早く建て替えに着手する必要があります。

これらの状況を踏まえ、政府による2040年度のエネルギーミックスにおける発電電力量1.1兆~1.2兆kWhの最大ケースである「1.2兆kWh」を前提に、原子力が担うとされる2割相当を供給するための設備容量を確保するとした場合、「2040年代に約550万kWの建て替え」が必要になる可能性があると考えています。この数値を、中長期的な原子力発電の見通し・将来像を議論するための出発点とし、将来の原子力の最大限活用へ議論を進めることが重要です。

また仮に2050年代も2040年度と同程度の発電電力量を原子力が担うとした場合、約1270万~1600万kWの設備容量分の建て替えが必要になる可能性があります。将来にわたり安定供給に必要な容量を確保するには、第7次エネルギー基本計画で示された「廃止プラントを保有する原子力事業者による建て替え」に加えて、新増設も必要になります。この点に関しても電力業界は国とともに検討していきたいと考えています。

既設原子力発電所の60年運転を仮定し建て替え・新増設を行わなかった場合の設備容量推移

2025年10月1日 第46回原子力小委員会資料を基に作成

関電、美浜で地質調査着手 万全の安全へ念入りに

関西電力は昨年11月、美浜発電所の後継機設置検討の一環としての自主的な地質調査を再開しました。この調査は2010年に着手しましたが、東日本大震災の発生を受けて2011年に中断していました。

今後、ボーリング調査などにより地中の地質や岩盤の性状を確認することで「将来活動する可能性のある断層等」の有無を調べます。採取した試料の分析を含む概略調査を2027年3月まで行い、それに続いて詳細調査を2029~2030年頃まで行います。

原子力発電所の建設はこのように原子力安全の確保や環境保全に万全を期すため、建て替えであっても念入りな調査が必要であり、長期の取り組みとなります。同社では地質調査の結果に加え、革新軽水炉の開発状況や規制方針、国の事業環境整備を総合的に考慮して、建て替えるかどうかを判断する予定です。

原子力発電所の「特重施設」とは?

原子力の再稼働に関連したニュースでよく耳にする「特重施設」は「特定重大事故等対処施設」の略称で、メディアで「テロ対策施設」などの呼称で報じられることもあるとおり、テロなどによる外部脅威への対策として発電所に整備されるものです。その役割を詳しく解説します。

福島第一原子力発電所の事故の教訓や世界の最新知見を踏まえて2013年7月に施行された新規制基準では、設備の炉心冷却機能が喪失した場合や、さらに炉心の著しい損傷が発生した場合も想定し、さまざまな対策が求められています。具体的には、炉心の著しい損傷を防止する「炉心損傷防止対策」、炉心の著しい損傷が発生した際に原子炉格納容器の破損を防止する「格納容器破損防止対策」、さらに原子炉格納容器も破損した場合において、屋外への放射性物質の拡散を抑制する「放射性物質の拡散抑制対策」などといった多層的な安全対策が挙げられます。

特重施設は、これらに加え、さらなる安全性向上のため、そのバックアップ対策として、故意の航空機衝突やその他テロで炉心に著しい損傷が発生するおそれがある、または発生したときに、原子炉格納容器の破損による放射性物質の放出を抑制するための施設です。具体的には緊急時制御室、注水設備、電源設備、通信連絡設備などが特重施設として常設されます。その役割から、原子炉建屋と特重施設が同時に破損することを防ぐために必要な離隔距離を確保するか、故意の航空機衝突に耐えられる頑健な場所に設置する必要があります。

現行では原子力規制委員会による本体施設の設計および工事の計画の認可から5年以内の経過措置期間中に、設置を求められています。それまでに設置が完了しなかった場合、発電所の運転を止める必要があるなど、事業者には厳格な対応が求められています。

特定重大事故等対処施設(特重施設)の役割