FOCUS1

2021.08

関電美浜3号機、新基準初の40年超運転
安定供給と脱炭素化の両立に貢献へ

関西電力美浜発電所3号機が、6月に運転を再開しました。運転開始から40年を経過した原子力プラントとして、新規制基準の施行後では全国初の運転となります。今後、電力の安定供給や脱炭素化に大きく貢献することが期待されます。

安全対策経て再稼働

美浜3号機(PWR:加圧水型軽水炉、82.6万kW)は6月23日に原子炉を起動、7月27日に本格運転を開始しました。東日本大震災後の2011年5月に定期検査入りして以来、約10年ぶりの運転再開です。

2013年に改正施行された原子炉等規制法で、原子力発電所の運転期間は40年とし、認可を受ければ1回に限り最大20年延長できるという制度になりました。1976年に運転を開始した美浜3号機では新規制基準に適合するための安全対策に加え、設備の詳細な健全性確認などを行い、2016年10月に原子炉設置変更許可と工事計画認可、同年11月に運転期間延長認可を取得。今年4月の地元・福井県の同意を経て、再稼働に至りました。同社ではほかに高浜発電所1、2号機(ともにPWR、82.6万kW)も延長認可と地元同意を得ています。

美浜3号機の稼働は電力需給の安定化に大きく貢献します。需給逼迫のおそれがあった今夏は、同機の復帰で供給予備率が改善しました。また、火力発電を代替することで二酸化炭素の排出削減や火力燃料費の削減にもつながります。試算では、同機の稼働で「日本全体の約0.2%に相当する温室効果ガス排出削減」になるとのことです。

原子炉を起動した美浜3号機の中央制御室。安全対策の一環で制御盤などがデジタル化された

原子炉を起動した美浜3号機の中央制御室。安全対策の一環で制御盤などがデジタル化された 提供:関西電力

運転延長は技術的に可能

40年という運転期間は、原子力発電所の寿命を示すものではありません。プラントは十分な余裕をもって設計・建設されており、適切な保守管理と、最新の技術基準への対応を常に実施することで、40年を超えても安全に運転を継続することが可能です。

例えば美浜3号機では、プラントの起動・停止回数を200回と設定して設計した機器がありますが、2010年度までの実績は46回でした。しっかり点検などを行えば、60年の使用は十分に可能です。

また、取り替えられる機器や設備は、積極的に新しくより安全性の高いものに交換しています。取り替えが難しい原子炉容器、原子炉格納容器、コンクリート構造物には詳細な「特別点検」を実施。傷や腐食などがないこと、強度などが十分に保たれていることを確認しました。

海外では国により制度はさまざまですが、約40年での運転終了を法律で定めている国は少数です。既に約100基のプラントで40年以上の運転実績があります。米国の場合、運転ライセンスは当初40年、以降申請により20年ずつ更新可能という制度で、現在稼働中の93基のうち85基が1回目のライセンス更新認可を受けています。さらにそのうち6基は2回目の更新を認可され、80年運転が可能になっています。

美浜3号機の蒸気発生器取り替え作業

美浜3号機の蒸気発生器取り替え作業 提供:関西電力

原子力の最大限活用を

原子力は技術的に確立したカーボンフリー電源であり、電力安定供給と脱炭素の両立を考えたときに最も現実的で費用対効果の高い手段です。特に海外では「カーボンニュートラルの実現には原子力の活用が不可欠」という共通認識が広がっています。

日本では2050年カーボンニュートラルという目標を踏まえ、「第6次エネルギー基本計画」の素案が7月にまとめられました。その中で原子力については「安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく」こと、「2030年度の電源構成のうち20~22%を原子力が担う」ことが明記されています。この実現に向け、私たち原子力事業者は既設原子力発電所の再稼働と長期運転実施に全力で取り組んでまいります。

ただ、廃止が決定されたものを除く国内36基の原子力発電所(建設中を含む)がすべて稼働したとしても、運転できる発電所は今後徐々に減っていきます。40年超運転がこれ以上増えない場合、2030年には27基(2,731万kW)、2050年にはわずか3基(414万kW)まで減少。仮に全基が60年運転となっても、2060年には8基(956万kW)となり、カーボンニュートラルの達成は極めて困難になります。必要な設備容量を確保するため、安全を最優先とした運転期間のさらなる延長や発電所の新増設・リプレースが必要であると考えます。

中国電力島根2号機が新規制基準「合格」へ

原子力規制委員会は、中国電力島根原子力発電所2号機に対し、新規制基準への事実上の合格証にあたる「審査書案」を了承しました。このまま正式合格すれば同社では初、全国では17基目、沸騰水型軽水炉(BWR)では5基目となります。

島根2号機(BWR、82万kW)については2013年12月に原子炉設置変更許可申請を行い、規制委で審査が行われてきました。今年6月23日に審査書案が了承された後、原子力委員会と経済産業大臣への意見聴取、30日間の意見募集などを経て、問題がなければ正式に許可交付となります。

新規制基準に対応する安全対策のうち、地震・津波対策としては、敷地南側を走る宍道しんじ断層の長さを約39km、基準地震動の最大加速度を820ガルと評価。基準津波は11.6mと設定しました。これに対し、海抜15mの防波壁をはじめとした浸水対策や機器・配管の耐震補強などを行っています。このほかにも、自然災害やテロへの対策、シビアアクシデント(重大事故)対策などを強化しています。

再稼働は正式合格を経て、地元自治体の同意や安全対策工事の完了後になる見通しです。

島根原子力発電所の外観。左奥が2号機

島根原子力発電所の外観。左奥が2号機 提供:電気新聞

海抜15mの防波壁

海抜15mの防波壁 提供:電気新聞

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