2021.11
需給双方の脱炭素化が車の両輪
電力業界の取り組みを紹介
気候変動への対応として野心的な目標や計画が公表されたことで、次に重要となるのはそれらをいかに実現するかという具体的な取り組みです。特にエネルギーにおいては、需要と供給の両面から脱炭素化を進めることが必要です。私たち電力業界もさまざまな取り組みに着手しており、その事例を紹介します。
電源の脱炭素化に注力
電力供給においては、再生可能エネルギーや原子力など二酸化炭素(CO2)を排出しない発電方法の拡大が主な対策となります。特に再エネは、カーボンニュートラル時代の主力電源となることが期待されています。
電力業界もこれまで、メガソーラーや風力発電所など、積極的に再エネ発電設備を導入してきました。電気事業連合会の会員会社が国内に保有する新エネルギー等発電所の総容量は、太陽光が約7万5000kW、風力が約4万5000kW、地熱が約42万6000kW。このほか、グループ会社や合弁会社などを通じて、さらに多くの発電所を設置しています。また、約3,700万kWにおよぶ水力発電所(揚水発電を含む)が電力安定供給を支えています。(資源エネルギー庁2021年度6月分電力調査統計より算定)
今後も再エネの最大限の導入を加速していく方針ですが、適地が限られてくることもあり、特に洋上風力の開発に注力しています。また、増加する再エネ電力を受け入れられるよう、送配電網の強化や運用の最適化などにも取り組みます。

九州電力のグループ会社・九電みらいエナジーが運営する佐世保メガソーラー発電所(長崎県佐世保市、1万kW) 提供:九州電力
再エネが増加すれば、天候による出力変動の幅も大きくなります。その対策として現在の技術では火力発電が不可欠であり、そこから排出されるCO2を減らすことも重要な脱炭素策の一つです。効率の向上やCO2の少ない燃料への転換のほか、カーボンフリーの燃料を混ぜて燃やすなどの方法があります。
近年ではバイオマス燃料の活用が広がっています。例として沖縄電力では今年3月から、金武火力発電所1、2号機(石炭火力、総出力44万kW)で木質バイオマスの混焼を始めました。同社では具志川火力発電所(同、総出力31万2000kW)に続き2プラント目で、県内で発生する建築廃材などから加工したペレットを使用します。2プラント合計で年間約4万トンのCO2削減を見込んでいます。
今後のさらなる火力発電の脱炭素化に向け、水素やアンモニアの燃料利用、CCUS(CO2回収・利用・貯留)などの研究開発や実証に電力業界を挙げて取り組んでいます。

金武火力発電所の木質バイオマス燃料供給設備 提供:沖縄電力
需要の電化も強力に推進
電気以外のエネルギー利用の多くは燃料を燃やす形で行われており、そのままでは大幅なCO2排出削減が困難です。そのため需要側の気候変動対策としては、可能な限り「電化」し、「脱炭素化された電気で動かす」ことが基本となります。身近な例としては住宅の「オール電化」などがあります。
現在、電化の波が最も激しく押し寄せている分野が自動車をはじめとする運輸部門です。ガソリン車から電気自動車(EV)への移行を推進する動きが世界各国で見られます。
電力業界でもさまざまな形でEVの普及拡大に取り組んでいます。一例として、東京電力ホールディングスと中部電力、自動車メーカーなどが出資するe-Mobility Power(イーモビリティーパワー、東京都港区)では、全国でEV充電設備の拡充などを進めています。現在は、国内で初めて急速充電器を公道に設置する実証試験を横浜市で実施。利便性や安全性などの面で地域からも好感触を得ており、本格展開へ順調なステップを踏んでいます。

横浜市の公道に設置したEV充電器のデモンストレーションの様子 提供:電気新聞
電化が期待されるのは陸上だけではありません。船舶の動力に電気を使う研究開発も活発に行われています。関西電力では電気推進(EV)船と燃料電池(FC)船の2種類に参画しており、2025年大阪・関西万博での実用化を目指しています。
e5ラボ(東京都千代田区)を中心に開発が進むEV船では、関電はダイヘンと共同で船載蓄電池向けの「双方向ワイヤレス充放電システム」を担当しています。岩谷産業などと進めるFC船は、水素を燃料として燃料電池で発電し、モーターを動かすもの。関電は地上設備と船内設備のエネルギーマネジメントシステムの構築などを担います。いずれも運航中のCO2排出がないだけでなく、騒音や振動が小さい点なども利点です。

関電と岩谷産業などが検討するFC船のイメージ図 提供:関西電力
英国グラスゴーでは、10月31日から国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催されています。各国が野心的な目標や対策を表明する中、世界中が一致して気候変動対策に取り組むよう、強いメッセージが発信されることが予想されます。私たちも需給両面でこれまで以上に積極的な取り組みを進めていきます。
特設サイト「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて」のご紹介
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私たち電力業界は持てる技術と知恵を結集し、積極的に挑戦していきます。
「電源の脱炭素化」「電化の推進」の両面から、具体的な取り組みを電事連ホームページでご紹介しています。ぜひご覧ください。
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特設サイト「災害にそなえて」のご紹介
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サイトでは、地震や台風などの災害への備えや、発生時の注意点をご紹介するとともに、各エリアの停電情報ページ(各送配電事業者サイト)へのリンクも掲載しています。ぜひご活用ください。
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お子さまの学習に!
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