FOCUS

2026.03

脱炭素と安定供給の両立へ
火力の継続利用は不可欠

2050年カーボンニュートラルを実現するには、さまざまな方策でCO₂排出を削減する必要があります。一方で、暮らしや産業を支えるエネルギーの安定供給も欠かすことはできません。現在の電力供給の主力である火力発電は、第7次エネルギー基本計画でも重要な役割を担う電源として位置付けられています。あらためて、火力が安定供給に果たす役割とCO₂排出削減へ向けた取り組みを解説します。

現状は主力の供給力
AI社会でも重要な役割

日本の電力供給の約7割を支える火力発電は、現在、カーボンニュートラルの実現という大きな目標に向けて重要な転換期にあります。化石燃料を燃やす際に生じるCO₂の削減は避けて通れない課題ですが、一方で火力を急速にゼロに近づけることは、生活や産業を支える電力の安定供給を揺るがしかねません。

特に近年の生成AIの急速な普及やデータセンターの相次ぐ新増設によって、今後の電力需要はこれまでの予測を大きく上回る勢いで増加することが見込まれています(詳しくはEnelog Vol.70Vol.72をご覧ください)。膨大なデータを処理するデータセンターは、24時間365日、絶え間なく大量の電力を必要とします。こうした新たな社会インフラを支えるためには、気象条件に左右されず、必要なときに必要なだけの電気を供給できる安定した電源が欠かせません。

他にも火力には、柔軟に出力を調整し、天候や季節による再生可能エネルギー(以下、再エネ)の出力変動などをカバーする「調整力」としての重要な役割があります。また、万が一の事故などで送電網から供給力が急激に失われた場合でも、発電所にある巨大で重いタービンがその重みで回転し続ける「慣性力」が作用し、電気の周波数の乱れを抑えて大規模な停電を防ぐ役割を担っています。

こうした火力が持つ柔軟な調整力や物理的な安定化機能を、現在の再エネや蓄電技術だけで代替しようとすると莫大なコストがかかるため、火力を完全に代替することは難しいといえます。

昨年決定された第7次エネルギー基本計画でも、これらの特性を持つ火力を重要な役割を担う電源と位置づけており、安定供給のために必要な設備としての発電容量(kW)を維持・確保していくことが明確に打ち出されています。

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継続利用支える新技術
CCUSなどの実装目指す

第7次エネルギー基本計画では脱炭素を進めながら火力を継続的に利用するための具体的な取り組みとして、CO₂排出が比較的少ないLNG火力の確保に注力することとともに、燃焼時にCO₂を排出しない次世代燃料である水素やアンモニアの活用、そして発生したCO₂を捕集して再利用、あるいは地中に貯留する技術「CCUS」の社会実装が挙げられています。

CCUSとは、CO₂を化学材料や合成メタンなどに変換して有効利用する「CCU」と、地中深くの岩盤に閉じ込める「CCS」の総称です。特にCCSについて、経済産業省は2023年に「CO₂排出削減が困難な産業にとっての最後の砦(とりで)」と定義し、2030年までをビジネスモデル構築期、2050年までを本格展開期とする長期ロードマップを掲げました。

エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による支援も加速しており、2024年度に北海道・苫小牧での事業を含む9件を、今後重点的に支援する事業として選定しています。そして電力業界もCCSを脱炭素化への有効な選択肢と捉えて、多くのプロジェクトに参画しています。

現場での技術開発も着実に成果を上げています。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業では、関西電力グループなどが参画し、舞鶴発電所(京都府舞鶴市)で回収したCO₂を液化し、船舶で苫小牧まで輸送する大規模な実証が進められています。

中国電力とJパワーの共同出資会社である大崎クールジェン(広島県大崎上島町)では、次世代の石炭ガス化複合発電(IGCC)において、発生したCO₂の90%以上を効率よく回収することに成功しました。

電力需要増加が見込まれる中では、CCUSなどの取り組みによって脱炭素化を進めながら、火力を活用して安定供給を維持していくことが重要です。政府による2040年度のエネルギーミックスにおいても、火力は全体の3~4割程度の供給を担う見通しとされております。

電気事業者としましては、脱炭素化関連技術の開発・実装に向け、引き続き取り組んでまいります。

※ 石炭をガス化してガスタービンで発電し、その排ガスを利用して作った蒸気により蒸気タービンでも発電する方式

第7次エネ基で示されたエネルギーミックス

第7次エネ基で示されたエネルギーミックス

CCSのイメージ図(陸上・海上輸送の場合)

CCSのイメージ図(陸上・海上輸送の場合)

  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)
    サーキュラーエコノミー部CCSチーム
    チーム長 プロジェクトマネージャー
  • 布川 信NUNOKAWA MAKOTO

脱炭素に必要な選択肢「CCS」
世界への貢献視野に実装を

国内の多くのCCS関連実証プロジェクトのマネジメントに携わるNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の布川信氏は、火力の継続利用とそれを支える技術の一つとしてCCSの有用性を説きます。火力の脱炭素には多様な道がありますが、CCSは「CO₂排出削減に必要な選択肢」と指摘。日本の技術的優位性や世界への貢献の観点からも、コスト低減や社会実装に向けた理解醸成といった課題に取り組み、実装を後押しする構えです。

脱炭素へ向け再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入が進む中でも、火力発電は必要であり続けます。電力安定供給には発電電力量の確保に加え、火力を中心とした発電設備が有する調整力なども重要です。

NEDOは火力のCO₂排出削減について、設備の高効率化に関する技術開発を中心に取り組んできましたが、化石燃料を使用する限りCO₂は発生します。カーボンニュートラルを見据えるとCO₂を回収し、固定化する技術が重要です。回収したCO₂を資源として利用するカーボンリサイクルも有効ですが、利用される量が少ないため、大量のCO₂を固定するCCSがひとつの解決策です。生育過程でCO₂を吸収するバイオマス由来の燃料とCCSを組み合わせれば、カーボンネガティブ(大気中の炭素量を減らす)も可能であることも特長です。

CCS実装にはコスト低減とともに社会受容性が鍵です。「貯留したCO₂が漏れ出すのでは」「CO₂の貯留が地震を誘発するのでは」といった不安に対しては、「地層構造が持つCO₂の遮蔽性により漏れ出ない」「CO₂を貯留したことと近郊で発生した地震との因果関係があるとは考えられない」といったCCS実証試験で得られた科学的知見をもって、丁寧な説明でご理解いただくことが大切です。

CCSはノルウェーや米国、カナダ、オーストラリアなどでも本格展開が始まっています。日本の強みは個別技術に加え、それらをつなぐ輸送の技術もあります。CO₂の排出源と貯留地が離れている場合、効率的な輸送手段が必要です。日本ではCO₂を液化し船舶で大量輸送する技術実証が進んでおり、世界初の低温・低圧条件での輸送にも成功しました。これは海に囲まれた日本ならではの優位性です。

コスト低減に向けて「CO₂分離回収」もイノベーションが起きています。液体と化学反応させる化学吸収法に加え、吸収材で捕集する固体吸収法や、CO₂分離機能を有する膜を使う膜分離法、さらにMOF(金属有機構造体:CO₂など特定の分子を圧力・温度操作により捕集・解放できる物質)といった新素材の活用で、低コスト化に向けた取り組みを進めています。

世界、特にアジア諸国は火力発電に大きく依存しており、中には再エネ導入余地が少なく脱炭素が難しい国もあります。国内でのCCS実証や商用事業で蓄積した技術成果や知見を生かし、発電からCO₂分離回収、輸送、貯留にわたる技術を海外へ展開できれば、双方にとって大きな利益になると考えます。

(2026年2月4日インタビュー)

PROFILE

1993年東京工業大学理工学研究科化学専攻修了、電力中央研究所入所。火力発電技術の研究開発に従事し、石炭ガス化複合発電(IGCC)実証機プロジェクトにも関わる。2017年よりNEDOに出向。火力発電、カーボンリサイクル、CCSにかかる技術開発・実証事業のマネジメント業務に携わるとともに、経済産業省の有識者会議(CCS長期ロードマップ検討会、CCS事業の支援措置に関するワーキンググループなど)における委員・オブザーバーを務める。

東京電力柏崎刈羽6号機が再稼働
安全と地域の理解を最優先に

柏崎刈羽原子力発電所6号機中央制御室で原子炉モードスイッチを起動に切り替える運転員(1月21日)

柏崎刈羽原子力発電所6号機中央制御室で原子炉モードスイッチを起動に切り替える運転員(1月21日)

東京電力ホールディングス柏崎刈羽原子力発電所6号機(新潟県柏崎市・刈羽村、135万6000kW)は、2025年12月23日に新潟県の花角英世知事が再稼働の容認を表明したことを踏まえ、2026年1月21日に原子炉を起動しました。その後、制御棒に関連した警報の不具合により一旦原子炉を停止、解消後に再起動し、2月16日には発送電を開始。3月3日には最大出力に到達しました。

しかし3月12日、発電機からの微小な漏電を示す警報が作動し、原因究明のため3月14日に発送電を停止。3月16日現在、原子炉の出力を20%程度に下げた状態を維持しながら、警報が作動した原因を慎重に調べています。東京電力ホールディングスは改めて今後の工程を検討することとしており、営業運転の時期は未定です。

柏崎刈羽原子力発電所6号機の再稼働により、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を受けて施行された新規制基準のもとでの再稼働は計15基になります。当初は加圧水型軽水炉(PWR)と呼ばれるタイプの再稼働が先行していましたが、2024年11月に東北電力女川原子力発電所2号機(宮城県牡鹿郡女川町・石巻市、82万5000kW)、同年12月には中国電力島根原子力発電所2号機(島根県松江市、82万kW)が再稼働し、今回の柏崎刈羽原子力発電所6号機により、沸騰水型軽水炉(BWR)の再稼働は3基となります。

また、柏崎刈羽原子力発電所6号機は、女川原子力発電所2号機に続く東日本で2基目の再稼働です。安定的な電力供給には電源のエリアごとの偏在を少なくすることが大切であり、この点で、今回の再稼働は大きな意味をもちます。

今後も事業者各社は、安全性の確保を大前提に、再稼働と安全・安定運転に取り組んでいきます。

2026年3月16日時点

エネルギー教育コンテンツのご紹介

未来を担う子どもたちに電気やエネルギーについての理解を深めてもらうため、電気事業連合会では教材制作を行っています。
この度、小学生・中学生向けのエネルギー教育コンテンツを、新たに3教材公開しました。いずれも文部科学省選定を受けているほか、無料で利用することができます。授業用動画やワークシート、指導案とあわせて、学校の授業などでぜひご活用ください。

文部科学省選定 学校教育教材 小学校中学年児童向き 社会 2025年12月10日

文部科学省選定 学校教育教材 中学校生徒向き 社会 2026年2月25日

文部科学省選定 学校教育教材 中学校生徒向き 社会 2026年2月25日

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