現場の緊密な連携で難局打開 経験を積み重ね技術確立

vol.12

日本原燃 再処理事業部 再処理工場
ガラス固化施設部 ガラス固化課長

猪野 徹さん

2009年7月、他部門から現職に異動した当時、青森県六ヶ所村の再処理工場では、再処理工程で発生する高レベル放射性廃液をガラスと固めるガラス固化の試験が重大な課題に直面していた。度重なる不具合や作業ミスが発生。耐火レンガの一部がガラス溶融炉内に落下する事態も起き、試験が中断していた。猪野に求められたのは、いち早い復旧と、その後のガラス固化試験の再開。技術的な対応のみならず、まず焦る現場を落ち着かせ、より緊密な連携を心がけた。「組織として十分に話し合い、方向性を一致させるとともに、現場の社員が業務の重要性を理解し、納得して進めることを目指した」と振り返る。

また、設備の復旧と並行してガラス溶融炉の運転方法の改善にも取り組んだ。茨城県東海村にあるモックアップ※施設を用いた試験を通じてノウハウを蓄積し、六ヶ所村のガラス溶融炉を運転する技術・技能の向上につなげた。ガラス固化の工程はすべてが遠隔操作による作業で、当然ながらガラス溶融炉の中を直接見ることはできない。だからこそ、総力を結集して、「溶融炉の状態を複数の温度計や電圧・電流のデータから推定し、とにかく安定した運転を継続させることだけを全員で考えた」。想像以上に綿密な訓練と知恵や工夫が求められた。

その結果、2012年に再開したガラス固化試験は大きなトラブルもなく、翌年5月に無事終了。試行錯誤の末、ガラス溶融炉の安定した運転に見通しを得た今、「様々な経験をしたことが社員の成長と自信につながった」と捉え直す。確立したガラス固化技術の貴重な知見は、現在取り組んでいる新型溶融炉の開発にも活かす。現場には、やる気に満ちた熱気が漂う。

再処理工場は最後のハードルとなる使用前検査を残すのみ。現在、原子力規制委員会により新たな規制基準への適合性を確認する審査が進められており、「まずは皆で力を合わせてその対応をしっかりと的確に進め、使用前検査に臨みたい」。一歩ずつ、着実に、再処理工場の竣工を目指す猪野。ただ、そこからが本当のスタートだということをはっきりと自覚し、一層気を引き締める。
※放射性物質は扱わない実規模の試験設備。

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