記録的な大雪に挑んで 停電する孤立地域に電気を

vol.13

小俣 光央さん

東京電力 山梨支店 大月支社
駒橋制御所富士吉田地域配電保守グループ 班長

小俣 光央さん

「お客さまは電気がつかない時に連絡をくれる。東電に連絡すれば電気がつくと信じてくれている。だから、我々が設備を復旧し送電するんだ」。先輩から教わった、この言葉は小俣の心に深く刻まれている。

2014年2月14日から翌15日にかけ、関東甲信地方は記録的な大雪に見舞われた。山梨県は各地で道路網が寸断。孤立地域が多発した。富士吉田市を中心に配電設備の保守を担う現場班長の小俣も、ある程度の雪には慣れていたが「今回の大雪は通常の自然災害とは違う」と感じ取っていた。

積雪も100cmを超えた15日早朝、富士五湖の一つ、精進湖一帯で停電が発生した。
事業所からは17〜18kmの距離だが、現地は大雪で孤立状態にある。
正午近く、主要道路で除雪が始まるとの情報を受けて現場へと出動したが、多くの車両が
立ち往生し、除雪がままならず、作業車は一向に進まない。
事業所周辺では屋根からの落雪で電線が切れる等、他にも停電が発生している。
もどかしい気持ちをおさえ、まずはこれらの復旧に注力した。
夜になって、除雪が進む動きがあり再出動。
ところが、前週の残雪上に積もった大雪の除雪は極めて難航した。
電気の復旧を待つお客さまを思うと一刻も早く駆けつけたいが、雪崩などの二次災害も考えると、引き返さざるを得なかった。
「進むよりも戻る決断をするのはずっと難しい」小俣は苦渋の決断をそう振り返る。

事故地点の倒木の脇を歩く仲間の作業員

16日昼、道路開通の一報を受け、小俣を含め2班・4人は再び精進湖を目指した。車両が入れたのは現場手前約1kmの地点まで。
残りの道のりは20kg以上の資機材を背負い、雪の中をひたすら歩く。
1時間ほどかけて原因箇所に辿り着くと、大きな木が高圧電線に倒れかかり、その重みで傍らの電柱は折損していた。復旧にはさらに1km先にある開閉器の操作も必要だ。
国道から入る脇道には立ち入る者はほとんどなく、雪の上に人の歩ける筋さえない。
新雪に足が沈み、腰まで雪に埋もれ、「10m進めば息は上がり、汗は滝のように流れた」。

腰ほどある雪を分けて、道をつくりながら前進

1日かけて歩いたあとの最後の作業。安全に細心の注意を払う。

午後3時半頃ごろ、ようやく電気の送電を再開。
湖畔の民宿からちょうど出てきた女性2人に、小俣が長時間の停電を詫びると、逆にねぎらいの言葉をもらい、「胸が熱くなった」。
この大雪にも、はやる気持ちを抑えて、安全を最優先にメンバーの力を結集して復旧を遂げることを心がけた小俣。
こうした苦境だからこそ、先輩のあの言葉が厳しい現場に向かう心を支え、迅速な停電復旧への思いを鼓舞した。
大雪を融かすかのような熱い思いとして。

Enelog Vol.13 繋ぐ力インタビュー映像