技能を鍛え、心を磨き 安定供給への強い使命感を育てる

vol.08

中国電力 お客さまサービス本部
(配電教育担当)

竹田 雄介さん

「考えながら動けや!」。
「お前らお客さまを待たせとるんで! 分かっとるんか」。
電柱で作業する入社1年目の若手社員に竹田の厳しい声が飛ぶ。口答えなど許される雰囲気ではない。

「この日、中国電力・南原研修所では、電線の断線による停電事故を模擬した復旧訓練が行われていた。若手は切れた電線をつなぎ合わせ、電柱に張り直す作業に一心不乱で取り組むが、竹田の眼には「まだ手元がぎこちない」「スピード不足」と映る。自ずと指導にも熱がこもる。

「安全確認を怠れば、墜落事故や感電の危険がある。何より停電でお客さまにご迷惑をおかけしている。1秒でも早く復旧するにはどうすればいいか、常に意識させたい。甘えや横着は許されない」。作業中の一挙一動が復旧にかかる時間を左右し、電気を待つ人々に影響する。若手を叱るような口調も、よく聞けば、電力供給の回復という目的から「逆算」して、細かい作業一つひとつまで、安全かつ無駄のない動きを身につけさせる指導と分かる。

竹田は、若手が配電技術者として独り立ちするには技術や知識に加え、「人間性を磨くことが欠かせない」と話す。街中で電柱や電線を扱う作業は、自ずと人々の眼にふれる。停電事故であれば「いつ電気は来るんだ」と問い詰められることもある。研修では「お客さまに接した時の態度、声の質やトーンまで考えさせる。技術系社員であろうと、私たちが会社の顔になるのだから」。電気を使う人たちを思い、感謝する心を忘れてはならない。そんな思いを指導に込める。

竹田自身、入社して間もなく研修を受けた。その時、指導員の持つ技術や安定供給にかける強い思いに圧倒された。そして目標ができた。「いつか自分も指導員になる」。配属先の現場で技能を磨き、経験を積み重ねるうち、周囲からも認められ、指導員への道が開けた。念願を果たした今、思うのは「この仕事はあくまで黒子」ということ。作業に失敗した若手は悔しさのあまり泣き出すこともある。時に指導員の立場を離れ、一人の先輩として彼らの相談に乗る。「教える方も教わることがある。ともに育っていければ嬉しい」。

人を育てるには時間も手間もコストもかかる。しかし、これを怠れば将来に亘る安定供給は覚束ない。先輩から受け継いだものを次の世代に引き継ぐため、今日も竹田の厳しい声が響く。

Enelog No.8 繋ぐ力インタビュー映像