トラブル対応に知恵つくして総力戦 なんとしても早期復旧を

vol.15

田中 茂さん

九州電力 相浦発電所
発電保修グループ 副長

田中 茂さん

国内の原子力発電所が長期停止する中、2014年夏季の電力需給も厳しい運用を迫られた。特に九州では、電源開発 松浦火力2号機(100万kW)の運転再開が見込めず、電力需要のピークの時期には節電をお願いするなど、安定供給に最低限必要な予備力(予備率3%)を辛うじて確保したものの、予断を許さぬ状況であった。

九州電力 相浦発電所

九州電力 相浦発電所

長崎県佐世保市にある石油火力の九州電力相浦発電所(1号機:37.5万kW、2号機:50万kW)は、東日本大震災以降、高稼働を続けている。
運転開始から約40年を経ているため、通常のパトロールや運転状態の監視強化はもとより、技術陣を総動員して設備異常の早期発見に取り組む。
また、工事が必要であれば電力供給に影響が少ない夜間休日に実施している。
発電設備の維持・補修を担当するベテランの田中は、「発電所を絶対に停止できない状況の中、異常の早期発見、早期処置に努めている」と語る。

ポンプ点検
男の背中

こうした細心の注意を払ってもなお、トラブルに見舞われることもある。
需要のピークを迎える夏を控えた休日明けの6月30日、2号機の起動中に電動給水ポンプが異常で緊急停止した。
現場からの急報に、中央制御室にいた田中らは凍りついた。このポンプが動かなければ2号機を起動することができない。
直感的に重大な事態だと分かった。
それでも「何としても本格的な夏の需要に間に合わせたい」との復旧への思いが湧き上がった。

確認してみると、ポンプの駆動軸が折れていた。
田中は「7月中旬の復旧を念頭に、やれることを確実にやり遂げよう」とあらゆる可能性を探る。
幸いにもダメージのあった駆動軸を含むポンプの主要部分は予備品を確保していた。
それ以外の部品についても、調査の結果、応急処置で対応できることが分かった。
コミュニケーションを密にして各工程での意思決定の迅速化を図るため、設備メーカーの全面的な協力を得た上で、発電所の担当者1人をメーカーの工場に常駐させた。
こうして必要な補修・点検を総力戦で遂行し、異常検知からわずか2週間余りの7月15日に、驚異的なスピード復旧を果たした。

今年の夏の需要のピークを何とか無事に乗り切ったが、今度は冬の需要ピークが控えている。
現場では、田中らの奮闘が電力の安定供給を支えていく。

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