電力文明支える ベストミックス取り戻せ

vol.11

滋賀大学准教授

柴山 桂太氏

1974年、東京生まれ。京都大学経済学部卒、京都大学人間・環境学研究科博士課程単位取得退学。滋賀大学講師、同助教授を経て現職。主な研究テーマは、ケインズ研究、リスク社会論、国家の発展と衰退。気鋭の経済学者として注目を集め、電力システム改革をはじめ、エネルギー問題にも積極的に発言。著書に「静かなる大恐慌」(集英社新書)がある。

電力は現代生活にとってなくてはならないものだ。オイルショック以後は、主に石炭や天然ガスの火力と原子力を組み合わせた発電のベストミックスが、この高度な電力文明を支えてきた。

だが、いま日本の電力システムは、大きな危機に直面している。原発事故をきっかけに日本中の原子力発電所が停止したことに加えて、中東情勢の混迷から、新たなオイルショックの脅威も高まっている。

懸念材料を上げていけばキリがない。安定的な電力供給体制を維持するには送電網の維持管理が不可欠だが、最近の電力会社の収益悪化で、送電網の設備更新がままならなくなる懸念がある。日本の停電時間が世界的に見て短いのは、故障の度に修復を急ぐ、日本各地の電気事業者の努力のたまものだ。そのコストが支払えなくなれば、停電リスクも高まるだろう。

電気料金の上昇も気になる。人件費の高い日本で製造業が国際競争力を維持するには、安価で高品質の電力が不可欠である。省電力に向けた日本企業の努力には頭が下がる思いだが、このまま電気料金の上昇が続けば、いずれ限界がやってくる。

太陽光や風力などの自然エネルギーに対する世間の期待は高い。だが現時点で、火力や原子力に置きかえることはできない。今後の技術革新に期待したい気持ちはあるが、気象条件に左右されるこれらの発電手段で、安定した電力の生産を行うのはまだずっと先の話だ。

結局、現時点では火力と原子力を軸とした発電のベストミックスを取り戻す以外に、この高度な電力消費文明を維持していくのは難しい。仮に長期的に原発依存度を減らす選択をするとしても、今は動かせる原発を動かす他に、送電網を維持し、電気料金の上昇を抑える方法は見当たらないのではないだろうか。

2013年11月27日寄稿