海外電力関連 解説情報

「米国の2040年までのエネルギー展望」

2013年3月29日

 米国エネルギー情報局(EIA)は先頃、エネルギー年次見通し2013年速報版(AEO2013ER)を公表した。2012年6月に発表された2012年版(AEO2012)の予測からさらに5年先の2040年までを展望する内容で、現行の法規制が今後も大きく変わらない条件のもとで数値が試算されている。

 2013年速報版で注目されるのは、最先端の原油生産技術により、陸上でのシェールオイルなどの生産が拡大する見通し、安価な天然ガス価格を背景に今後も産業用や発電用で天然ガスの利用が増加することが見込まれている点である。試算ではシェールガスを中心に天然ガス産出が2020年まで国内消費を上回るペースで続く見込みで、米国が天然ガスの純輸出国になる時期について、2013年速報版では2012年版よりも早くなる可能性が示唆されている。また、安価な天然ガスは原料価格やエネルギー価格を低下させるため、2025年まで生産活動が特に活発に継続される見通しとなっている。

□2040年の総発電量は石炭、天然ガス、原子力、再エネの順位

 電力に関しては、2040年の自家発等を含む総発電量が5兆2120億kWhで、2036年に5兆kWhを超える見通し。燃料別の発電量構成比は、2040年が石炭35.1%、天然ガス30.4%、原子力17.3%、再エネ10.7%、水力5.7%、石油0.3%などとなっている。また、2013速報版と2012年版の2035年における発電量構成比を比較すると、2013年速報版では石炭の発電比率が2012年版よりもさらに低下して推移する見通しで、それに代わって天然ガス比率がさらに高まることが見込まれている。

 設備容量は、2013年速報版では再エネの割合が高まり、コンバインドサイクルやガスタービンの割合も2020年以降から特に高まる見通しとなっている。2032年には、コンバインドサイクルが石炭火力の設備容量を超える見込みだ。一方、石油火力は設備の廃棄や廃止などが進み、2020年以降は急速に割合が低下していくとなった。この結果、2040年の発電設備容量は12億1230万kWとなり、電源別構成比はコンバインドサイクル25.9%、石炭22.5%、ガスタービン17.5%、再エネ(水力を含む)17.1%、原子力9.3%、石油・天然ガス5.3%などとなる。なお、全体の割合としては小さいものの、2013年速報版では天然ガス利用の分散型電源の導入見通しが、2010年代後半以降に大きく伸びると見込まれている。

□再エネの総発電量に占める比率は2040年時点で10.7%

 水力を除く再エネについては、2039年に総発電量に占める割合が1割を超える見込みで、2040年の再エネ発電量は5589億5000万kWh、総発電量に対する比率は10.7%となる。内訳は、風力2589億kWh、木質系バイオマス1318億9000万kWh、太陽光989億2000万kWh、地熱564億kWh、廃棄物176億4000万kWhとなっている。再エネの設備容量は、2040年に風力8835万kW、太陽光5096万kW、木質系バイオマス1388万kW、地熱746万kW、廃棄物389万kWとなる見通し。風力発電や太陽光発電の初期コストが2012年版の試算時に比べて大きく低下しており、これを2013年速報版予測に織り込んだ結果、風力や太陽光の導入容量が2012年版から増加することになった。連邦補助金の影響も今回試算に織り込んだ。なお、2012年末に期限切れを迎えた発電税額控除(PTC)は2013年1月1日に、連邦議会で1年間延長が可決された。

 

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