「S+3E」の観点
資源に乏しい日本においては、安全確保(Safety)を大前提とした、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)の同時達成を目指す「S+3E」の観点から、特定のエネルギーに依存せず、それぞれのメリット、デメリットを考え、火力、水力、原子力、太陽光や風力などをバランスよく組み合わせたエネルギーミックスを実現することが重要です。
各発電方法の主な特徴
水力 | 一般水力 (流れ込み式) |
河川流量をそのまま利用して発電。電力需要への変化に対応できないため、ベース供給力として活用。 |
揚水式水力 | 電力供給に余裕のある時に水を汲み上げ、必要時にその水を利用して発電。発電出力の調整が容易で、急激な電力需要の変化に対する即応性に優れている。電力需要のピーク時や緊急時対応用の供給力として活用。 | |
火力 | 石油火力 | 燃料の運搬・取扱いが石炭・LNG と比べて安易。電力需要のピーク時や緊急時対応用の供給力として活用。 |
石炭火力 | 燃料調達の安定性、経済性に優れており、ベース供給力として活用。 | |
LNG火力 | 燃料調達の安定性に比較的優れており、発電時の CO2排出量が石炭・石油より少ない。電力需要の変化に応じた発電調整を行うミドル供給力として活用。 | |
原子力 | 放射性物質の管理が必要であるが、運転時に温室効果ガスを排出せず、発電コストに占める燃料費の割合が低いことから、燃料費高騰による発電コストへの影響を受けにくい分、ベース供給力として活用。 | |
再生可能 エネルギー |
太陽光・風力 | 温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから重要な純国産エネルギー源だが、発電量が季節や天候に左右されることから火力発電や揚水発電と組み合わせて活用。 |
地熱 | 地下熱源から噴出する蒸気を用いて蒸気タービンを駆動させることにより発電。運転中の CO2排出がほとんどない環境負荷の小さい純国産エネルギー。ベース供給力として活用。 |
安定供給(Energy Security)
日本はエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っているためエネルギー自給率は約1割に留まっており、脆弱なエネルギー構造の上に成り立っています。原油は約9割を中東地域に依存していますが、LNGや石炭はアジアをはじめ多くの国から輸入しています。資源の少ない日本では、原油調達先である中東諸国との関係強化を進めるとともに、調達先の多様化などにより、安定してエネルギーを確保していく必要があります。



経済効率性(Economic Efficiency)
東日本大震災を契機とした原子力発電所の長期停止等により、供給力確保のため、原子力発電の代替として火力発電の割合が増加したこと等から、2014年度にかけて電気料金が上昇しました。原油価格の下落などにより2014~2016年度と新型コロナウイルスの感染拡大の影響により2020年度は低下しましたが、再び上昇傾向です。 また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入により、再生可能エネルギーの導入が急速に進む一方で、買取の原資であり、電気料金に含まれる賦課金も年々増加しています。



環境適合(Environment)
電気事業によるCO2排出量は日本全体の約4割を占めています。東日本大震災を契機とした原子力発電所の長期停止等により、供給力確保のため、原子力発電所の代替として火力発電の割合が増加したこと等から、震災前に比べて CO2 排出量が増加しました。近年においては、原子力発電所の再稼働、再生可能エネルギーの活用拡大、最新鋭の高効率火力発電設備の導入等により、CO2 排出量は低減傾向にありますが、カーボンニュートラルの実現に向けたさらなる深掘りが必要です。


