海外電力関連 解説情報

「世界各国の再エネ導入に伴う、雇用創出・CO2削減の状況」

2013年4月26日

 世界各国は、再生可能エネルギーの導入に取り組んでおり、導入量の増加、関連産業での雇用創出、CO2排出量の削減といった、いわゆる再エネ導入効果が着実に現れつつある。ここでは、各種データから世界の再エネ導入状況とともに、再エネ効果の実情を紹介する。

 

□88カ国で再エネ電力購入支援策を実施

 2013年2月時点で再エネ導入目標値を設定している国は、欧州、北米、ロシア、アジア、中東、アフリカの一部など132カ国に達している。このうち、大部分の国が採用しているのが、①一次エネルギー消費量に占める再エネの割合②最終エネルギー消費量に占める再エネの割合③発電電力量に占める再エネの割合―の3種類の目標値である。各国はこれら3種類のいずれか1種類、あるいは複数の種類を目標値に選択している。例えば、欧州連合(EU)27カ国では、2020年までに最終エネルギー消費量に占める再エネ比率を20%にすることを目指している。

 目標値達成のために各国で採られている再エネ導入支援制度は、再エネ電力購入支援策と再エネ発電投資支援策に大別される。前者は、再エネによって発電した電力の購入を義務付ける制度であり、後者は再エネ発電プロジェクトにかかる金銭的負担を軽減させるものである。

 2012年1月時点で、再エネ電力購入支援策である固定価格買取(FIT)制度、あるいは再エネ利用基準(RPS)制度を実施しているのは、欧州、アジア、オセアニア、北米、および南米、アフリカの一部など88カ国である。そのうち、FITだけを実施しているのは53カ国(一部の州で導入する国も含む)、RPSのみを実施しているのが9カ国(同)、FITとRPS両方を採用しているのは13カ国となっている。一方、補助金や融資、発電税額控除など各種税額控除といった再エネ発電投資支援策を導入しているのは、104カ国にのぼる。

 

□世界における2011年の再エネ発電投資額は2574億ドル

 再エネ発電プロジェクトに対する世界全体の投資額は、2004年の394億ドル(約3兆9000億円)から2011年には2574億ドル(約25兆5000億円)へと増加した。投資先は欧州が一貫して最も多い。2011年で見ると、欧州が1010億ドル(約10兆円)で、中国の522億ドル(約5兆2000億円)や米国の508億ドル(約5兆300億円)と比べ、約2倍に達している。しかし、中国も近年急増しており、2009年以降は米国を抜いて欧州に次ぐ世界第二の投資先になっている。

 また、電源別投資額では、2008年までは風力発電やバイオ燃料発電が増加していたが、2009年以降は太陽光発電の伸びが著しい。2011年における投資額の電源別割合は、太陽光57.2%、風力32.5%、バイオマス・廃棄物4.1%、バイオ燃料2.6%、小水力2.3%、地熱1.1%、波力・潮力0.1%である。

 

 

 2010年における世界全体の最終エネルギー消費量に占める各電源の割合は、化石燃料が80.6%、原子力2.7%、再エネ16.7%。この16.7%のうち、薪や木炭など伝統的なバイオマスが8.5%、水力が3.3%、バイオ燃料が0.7%、風力・太陽光・太陽熱・地熱等が4.2%である。一方、2011年末において再エネが発電に占める割合を見ると、世界全体の発電電力量に占める再エネ(水力を除く)の比率は5.0%で、化石燃料と原子力で79.7%、水力が15.3%となる。さらに、世界全体の発電設備容量(5360GW)のうち、7.3%(390GW)が再エネ(水力を除く)であり、18.1%(970GW)が水力。この再エネ390GWの内訳は、風力238GW、バイオマス72GW、太陽光70GW、太陽熱1.8GW、その他8.2GWである。

 再エネ発電設備容量を国別比較すると、導入量が多い国は米国、中国、ドイツ、スペイン、イタリア、ブラジル、インド、日本などだ。2011年末時点で、最も発電プロジェクト投資が盛んな風力では世界全体の導入量が237669MWに達した。このうち、中国が最も多く26.2%を占め、次いで米国19.7%、ドイツ12.2%、スペイン9.1%、インド6.8%が上位5カ国となっている。また、近年投資が盛んな太陽光発電の累積導入量は69684MWで、ドイツ(35.4%)、イタリア(18.3%)の2カ国で過半となる。

 

□再エネ発電関連雇用は世界で500万人、CO2削減にも効果

 こうした再エネ導入量の増加に伴い、再エネ発電関連産業で雇用人口が増加している。世界全体で見ると、同産業の雇用数は2009年の300万人から2011年には500万人へと急増。とりわけ、中国が160万6000人、EUは111万7000人とこれらで過半数を超えている。雇用人口を国・地域別に見ると、EUではバイオマス、太陽光、風力の各発電関連作業でそれぞれ約25万人の雇用が生み出されている。米国で雇用が最も多いのはバイオマス発電関連産業で15万人が従事。中国では、太陽熱冷暖房システムに80万人、太陽光発電関連で30万人、バイオマス発電関連に27万人が働いている。

 

 

 2010年の国別CO2排出量は、ワースト1が中国で83億2100万トン、次いで米国の56億1000万トンと圧倒的に多く、その後にインド、ロシア、日本、ドイツ、韓国などが続く。

 1980~2010年における1人当たりCO2排出量の推移を、CO2排出量上位20カ国と各種別再エネ(水力、地熱、風力、太陽光、バイオマス)導入量が世界5位以内に入る19カ国とで比較した結果、再エネ導入量が増加しているにもかかわらず、1人当たりCO2排出量の平均は、1980年の4.14トンから2010年には4.64トンへ微増している。この平均よりもCO2排出量の増加が著しい国は、再エネ導入量もCO2排出量も多い3カ国(中国、ロシア、イラン)とCO2排出量が多い4カ国(サウジアラビア、台湾、韓国、南アフリカ)。1人当たりCO2排出量が減少している国は、再エネ導入量もCO2排出量も多い6カ国(米国、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、カナダ)と、CO2排出量が多い2カ国(英国、オーストラリア)である。CO2排出量が減少している国は、再エネを大量に導入している国が多いことから、再エネ導入はCO2排出量の削減に寄与しているといえる。

 

 

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