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【中国】第三世代炉プラントの試運転状況とその情報公開~2018年4月以降、次々と試運転開始へ~

2018年7月19日

2018年4月以降、中国で建設中の原子力発電プラントの試運転の進捗が次々と報じられている。本稿では、第三世代炉であるEPRおよびAP1000型炉プロジェクトを中心に現在の動きと中国国内での情報公開の状況についてまとめた。

1.試運転中プラントの進捗状況
現在中国国内(大陸部)で、原子炉に燃料が装荷された状態、すなわちホット状態で試運転中のプラントは4基あり、この状況を次の表―1にまとめる。

表―1 中国国内の燃料装荷済みプラントの試運転進捗状況

出所 各種公表資料により作成

表―1の「燃料装荷許可」および「初臨界作業許可」は、中国の原子力安全規制当局である国家核安全局(NNSA)から事業者に対して発給される許可であり、日付は発給日としている。事業者は、許可の発給を受けると直ちに作業を開始することが通例となっている。
3基の第三世代炉をみると、中広核集団(CGN)傘下の台山1号機(EPR、図―1)が先行し、これにAP1000の三門(図―2)、海陽両1号機が続いていることが判る。また、AP1000については、中国核工業集団(CNNC)傘下の三門1号機が、国家電力投資集団(SPI)傘下の海陽1号機に2ヵ月先行している。
陽江5号機は、CGNがこれまで主力プラントとして建設を進めてきた第二世代炉であるCPR1000(3ループPWR、電気出力1,000MW級)に外部からの注水や給電のための接続設備など、いわゆる福島第一原子力発電所事故対応設備を追設したCPR1000改良型のACPR1000である。しかし、炉心部はこれまで多数の実績があるCPR1000プラントと同様であるため、表―1から判るように、燃料装荷許可から初併入までは37日間となっている。
これに対して、台山1号機の初併入は7月中の予定とされており、燃料装荷から初併入までの期間は3ヵ月を超えることとなる。三門1号機の初併入の時期は現時点では明らかになっていないが、台山1号機同様に、事業者、規制当局ともに慎重な対応をとるものとみられる。

図-1 台山原子力発電所1号機

(2017年5月18日撮影)

図-2 三門原子力発電所1、2号機(左が1号機、高温系統試験中の状況)

(2016年9月21日撮影)

2.試運転情報の公表と内外の反応
中国国内では第三世代炉、特にAP1000プラントに対して高い関心が示されている。また、中国で本年年初から施行された核安全法に「情報公開と公衆の参画」が規定されたこともあり、国家核安全局(NNSA)は従来以上に情報公開に力をいれていることが伺える。
例えば、台山1号機の初臨界作業許可を発給した件の公表にあたっては、初臨界前の検査報告もあわせて公開されている。同報告には、検査の実施内容に加え、検査時の不具合やその是正措置、NNSAと事業者の参加者の名簿も含まれている。
このような情報公開のための取り組みがみられる一方、NNSAにおいてプラントにより取り扱いに差異があるほか、現時点ではまだ事業者間で足並みが揃っていない。
表―2に、第三世代炉3プラントの試運転に関する情報公開の状況を主要ポイント毎にまとめている。

表―2 各プラント、試運転の主要ポイント毎の情報公開の状況

※注 6/21にNNSAが公表した情報は、台山1号機の現状について記者のインタビューに対してNNSA幹部が回答する形式となっている。
出所 各種公表資料により作成

(1)台山1号機に関する情報公開
表―2にあるように、台山1号機に関して、事業者である中広核(CGN)が試運転の状況について一切公表していないのに対して、NNSAが許可発給などの行政上の処分の事実を公表するだけでなく、台山1号機の現状について、記者のインタビューに対するNNSA幹部の回答という形式で掲載していることが注目される。
NNSAによるこのような形での中国国内への情報公開は、福島第一原子力発電所事故の直後を除き異例なものであり、更にその内容が、試運転の状況、安全監督の内容といった一般的な情報に加え、EPRプラントの原子炉圧力容器上蓋の炭素偏析問題や、試運転中に発生した二次系脱気器内部の破損など具体的な事項にも触れていることが目を引く。
NNSAが6月21日の時点で、このような異例かつ詳細な情報公開に及んだのは、6月6日の台山1号機の初臨界達成が中国国内で報じられない一方、国外ではいち早く報じられ、香港などで思わぬ大きな反響を呼んだことがその理由ではないかとみられる。
中国国外では、台山1号機の初臨界達成の情報がEDFからもたらされ、AFP通信やWNN Dailyでただちに報じられている。台山サイトから直線距離で百数十kmに位置する香港では、これらの国際報道がキャリーされる一方、6月中旬には台山原子力発電所の安全性に従来から懐疑的な見方をしていた一部メディアが試運転中の脱気器の破損事故の影響への懸念や初臨界の事実を公表しない事業者および規制当局の姿勢を批判する論調の記事を掲載している。さらには、この香港情報が中国国内のSNSを通じて拡散されるに至ったとされている。
このような状況から、6月21日のタイミングで、また、内容的には規制当局でなく事業者側が説明すべき事項まで含め、NNSAがインタビューへの回答という形で情報公開に及んだものとみられる。

(2)三門1号機および海陽1号機に関する情報公開
ともに6月21日となった三門1号機の初臨界および海陽1号機の燃料装荷開始についての情報は、NNSAではなくAP1000の技術導入を主管する国家核電技術公司(SNPTC)から直ちに公表されている。
発表のタイミングに加え、NNSAや事業者であるCNNC/SPIからでなく、SNPTCから発表されていることが台山1号機の例と大きく異なっていることが注目される。これは、台山の先例を踏まえて、情報公開の取り扱いに何らかの方針変更があったものとも考えられる。
いずれにしても、当北京事務所としては全世界の注目を集める第三世代炉プロジェクトの進捗を確実にウォッチするとともに、内外の反響についても引き続き注視していきたい。

 【情報提供:一般社団法人海外電力調査会

以上

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