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[ブルガリア] 温暖化対策とエネルギー安定供給の強化に向け、中止されたベレネ原子力発電所建設計画を再開へ

2018年6月29日

   ブルガリア議会は6月7日、2012年に中止されたベレネ原子力発電所建設計画について、計画再開に向けて潜在的投資家との交渉に着手するよう政府に指示する勧告を決議した。ブルガリアが今、改めてベレネ計画の再開を検討し、原子力発電の設備容量の確保・増強を図る背景には、欧州をはじめ世界的に進む温室効果ガス削減や、エネルギー安全保障への対応といった課題がある。
 
   かつてブルガリアでは6基の原子発電所が稼働していたが、2002年と2006年に、EU加盟の条件として旧ソ連型のコズドロイ1~4号機を閉鎖。現在はコズロドイに残った5号機、6号機(いずれも100万kW級VVER ※ロシア型加圧水型原子炉)の2基のみが運転を続けている。EU加盟に伴う1~4号機閉鎖前の2002年に48%だった原子力比率も、2015年時点で約3割に低下した。一方、石炭火力の比率は41%から46%に上昇した。原子力容量の低下と、この間増大した電力需要、そして同国にとって重要な商品でもある電力輸出分を賄うために、石炭火力が増えたことが見て取れる。

   石炭火力の増加は当然の帰結として、温室効果ガスの増加をもたらす。現在、ブルガリアが加盟する欧州連合(EU)をはじめ、世界で温室効果ガスの削減に向けた努力が求められている。しかしEUが公表したデータによれば、ブルガリアのGDPあたり温室効果ガス排出量(2015年)はEU加盟国で2番目に多く、EU平均の2倍を超える。また、2017年にはエネルギー起源のCO2排出量が前年比+8.3%を記録し、これはエストニア、マルタに次ぐ加盟国第3位の伸び率であった。ブルガリアがエネルギー起源のCO2排出を大きく増やさないためには、現在約半分を占める石炭火力発電を、他の低炭素電源に置き換えていく必要がある。

   ブルガリアは一部で低品位の褐炭の産出があることを除けば、総じて国内資源に乏しい。それでも上述のとおり同国は、従来、原子力と石炭を主軸とし、バルカン地域のエネルギー供給に重要な役割を果たす「電力輸出国」と位置づけられてきた。しかし、最近、ブルガリアのエネルギー安全保障を揺るがす事態が発生した。2017年1月に欧州を襲った大寒波で、ブルガリアでは過去最高の電力需要を記録して需給が逼迫し、国内各地で停電が発生した。隣国ルーマニアに電力融通を求めたが、同国にも余力がなく、融通は受けられなかった。ブルガリアのエネルギー省は緊急的措置として、2017年1月13日、電力輸出を当面禁止する措置を発動した。措置が解除されたのは、約1カ月後の同年2月9日であった。つまり、ブルガリアはバルカンの電源としての地位以前に、地域全体で電力需要が跳ね上がる事態が発生した場合、自国需要への対応も危うくなることが明らかになったのである。6基の原子炉が運転されていた2002年当時と比べて水力や再生可能エネルギーの割合が拡大したものの、それぞれのポテンシャルを生かすには課題がある。水力は需要が増大する厳冬期に出力が低下する傾向がある。また天候に左右される再エネは、上述のような非常事態への即応が難しい。

   ブルガリアでは、2012年のベレネ計画中止以後、ベレネの代替プランであるコズロドイ7号機計画も停滞していた。しかし、温室効果ガスの抑制、エネルギー安全保障強化の緊急度を考えると、もはやこれ以上、低炭素・安定電源の確保に向けた取組を先延ばしするわけにはいかない。原子力発電拡大における資金調達は引きつづき課題ではあるものの、ブルガリアはすでに、ベレネに使うはずであったVVER機器を手元に持っている。こうした機器を活かしたベレネ計画の再開が、今のブルガリアにとって、最も現実的な解であるといえるであろう。今後同国政府がベレネ再開について、どのようなスキームを策定するのか注目される。

以上

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