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脱炭素化に向けた現実的な選択肢とは ~原子力と再エネの共存による議論の動き~

2019年3月6日

   従来、気候変動対策や脱炭素化に向けた国際会議等において、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を中心とした議論が繰り広げられる中で、発電時にCO2を排出しないという再エネと同じ長所をもつ原子力との共存は語られることは少なかった。しかし、近年、米国における原子力発電所の早期閉鎖等の動き等も踏まえ、脱炭素化を目的として原子力と再エネの共存が現実的な選択肢として議論されるようになってきた。

   米国では、原子力推進系の組織であるクリア・パス社や気候エネルギーソリューションセンター、米国資本形成委員会、超党派政策センターなどの団体が2019年2月、風力や太陽光はその出力が天候や時間帯によって著しく変動するため、エネルギー貯蔵技術を大量に使用しなければ、再エネだけでは電力部門の大幅な脱炭素化は達成できないとして、既存の原子力発電や、より小型の先進型次世代原子炉の開発なしには米国および世界の気候変動対策目標を達成することはできないとする共同論文を発表している。

   一方で、原子力に批判的な団体として知られる、憂慮する科学者同盟(UCS)も、2018年11月、「原子力のジレンマ:利益の減少や早期閉鎖と炭素増加」と称する報告書を公開し、原子力発電の当面の維持は必要だと主張したことから大きな話題となった。UCSはこの報告書で米国の原子力発電所の早期閉鎖を考慮したCO2排出量等の分析を実施しており、急速な再エネの普及は当面は困難であり、原子力発電所の早期閉鎖に伴う代替電源は天然ガスによる火力発電が主とならざるを得ないことから、CO2排出増のリスクを抑えるためには、原子力発電所の存続が有効であると結論付けている。

   地球温暖化防止のため、再エネとともに原子力も必要との考えを表明し、これまでの主張からの転換が行われている。

   一方欧州ではEU大で、GHG排出量を、1990年比で、2030年までに少なくとも40%、さらに2050年までに85~90%を削減するとの目標が掲げられている。適切な範囲で原子力を利用していくことはこの目標達成のために必要という認識は、少なくともフランス、英国で共通してみられる。
   原子力を推進してきたフランスでは、総発電電力量に占める原子力比率を縮減する政策を進めつつも、原子力縮減を代替するための石炭火力発電所閉鎖の先送りや新規ガス火力発電所の導入によって、GHG排出量が増えるような原子力比率の縮減は行わないとの方針を明確に打ち出している。またEU離脱の渦中にある英国政府も、2050年までに1990年比でGHG排出量を80%削減する方針は維持しており、この目標達成に向けて、洋上風力発電を中心とした再エネ開発に注力しつつ、新規原子炉建設も推進している。

   再エネの普及が世界的な潮流となる中で、米国ニューヨーク州では、GHGの大幅削減や2030年までに州の電力の50%を再エネによるものとする目標を掲げている。その目標達成の移行期における既存原子力の早期閉鎖に伴うGHG排出量増加を避けるため、ゼロ排出クレジット(ZEC)制度を2017年4月より導入し、既存原子力の当面の存続を図るという現実に即した動きがある。ZEC制度は、公的必要性を満たした既存原子力に対し、原子力のもつ環境価値に対する対価の支払いを小売事業者に義務付け、原子力を経済的に援助する制度である。

   脱炭素化という達成すべき目標を見失うことなく、その目標達成する手段について、原子力と再エネの共存も含めた、より現実的な議論を展開していくべきかもしれない。

以上 

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