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[英国] 議会・科技委が報告書、「政府のCO2削減目標達成にはクリーン・エネルギー拡大政策が必要」

2019年9月26日

英国議会の超党派議員で構成される科学技術委員会は8月22日、温室効果ガスの排出量を削減しつつ国民所得を成長させる(=クリーン成長)ために必要な技術に関する報告書を公表し、「政府が現在の政策から転換するアクションを早急に取らない限り、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという目標の達成は難しい」との見解を表明した。
これは今年6月、この目標に法的拘束力を持たせた法案が可決・成立したことを受けたもので、科学技術委はまず、CO2削減に向けた長期的目標の強化で、政府が意欲的な判断を下したことを高く評価。
その上で、英国は今の所、2023年から2032年までの期間に設定した既存目標ですら、達成可能な方向に進んでいないと指摘した。
報告書は、政府が低炭素技術に講じてきた支援策のうち、遅れが生じたり効果の上がらなかった10分野を特定する一方、2050年までのCO2実質ゼロ化を実現するため、輸送や暖房、エネルギー使用の効率化など、様々な部門が実施すべき10項目の優先事項を勧告。
このなかで、原子力発電を維持しつつも新規原子力発電所の建設は一度に1発電所ずつ進めるべきだとしており、原子力産業やサプライ・チェーンを拡大させる必要はないとの認識を示した。
実際、異なる発電技術でコストを直接比較することは不可能であるものの、CO2を排出しない原子力発電への政府支援は、CO2の削減目標を達成する一助となるため、正しいことであると報告書は指摘。
政府は年末までに原子力発電所建設計画への資金調達で「規制資産ベース(Reglated Asset Base=RAB)モデル」を取り入れるか、最終判断を下すべきであり、金額に見合った価値がもたらされることを条件に、原子力発電の維持のみを目指した新規原子力発電所建設支援の道を探るべきだとしている。

原子力の課題は新設コスト
従来型の原子力発電について報告書はまず、既存の8サイト・15基の原子炉が2017年に英国の総発電電力量の約21%を賄ったという事実に触れた。
これらのうち、7サイト・14基までが2030年までに運転を終了するが、新規発電所の建設計画のうち、ヒンクリーポイントC発電所の320万kW分が2025年の運転開始を目指して建設中、サイズウェルCとブラッドウェルBの両発電所で合計550万kW分が提案中であるとした。
しかし、ムーアサイド、ウィルヴァ・ニューウィッド、およびオールドベリーの各発電所建設計画は近年停止されており、報告書はエネルギー・クリーン成長担当大臣のコメントとして、「再生可能エネルギー源のコストが急激に低下している以上、これらの計画に対する財政支援に十分な価値はない」と述べていた点に触れた。
また、英国エネルギー研究センター(UKERC)も、「東アジア地域以外で原子力発電のコストが低下した証拠はない」との見解だが、英国の主要な国際エネルギー企業が支援する技術革新センター「エネルギー・システムズ・カタパルト」は、将来的に見た場合、「英国内の新規原子力発電所建設では大幅なコスト削減の可能性がある」とした。
報告書によると、発電所の新設コストについては英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長が、「最も影響が大きいのは資本コストであり、今後の新設計画が上手くいくかどうかは、適切な資金調達モデルの適用がどれだけ進むかにかかっている」と説明した。
ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.クラーク大臣も2018年11月当時、政府が資金調達モデルの代替案を模索中であると発言。
これに関して報告書は、政府が検討しているRABモデルについて、オックスフォード大学のD.ヘルム教授が、「次善の策だが政府の直接的な資金調達を財務省が制約している以上、ヒンクリーポイントC計画で採用された差金決済取引(CfD)よりは好ましい」としていた点に言及した。
ただしこれとは対象的に、国内の主要インフラ関連で政府に専門的アドバイスを提供している国家インフラ委員会は、「原子力発電のように複雑かつリスクの高い事業にRABモデルを適用した経験はあまりない」と警告。
新規原子力発電所の建設計画には、どのような資金調達モデルが最適であるか、明確ではないとの考えを同委員会が示したとしている。

SMRの開発支援
同報告書はこのほか、従来型の原子力発電所より低コストな小型モジュール炉(SMR)の開発についても、政府が支援アクションをとるべきだと勧告した。
SMR建設計画に資金調達するため、BEISが設立した「小型炉の資金調達に関する専門家作業グループ(EFWG)」の対政府勧告・7項目を取り上げており、知的所有権など投資家が期待するものと引き替えに、実証炉の初号機プロジェクトにリソースを提供してもらうことや、SMR用に先進機器のサプライ・チェーンを構築する、などの項目に言及した。
報告書はまた、政府と民間産業部門の戦略的かつ長期のパートナーシップとなる「部門別協定」の中で、政府がSMR開発に対する支援を打ち出したことを歓迎。
政府は支援の新しい枠組として、新型原子炉技術の研究開発に最大5,600万ポンド(約72億2,300万円)を提供するほか、ベンダーと電気事業者、エネルギー多消費型の顧客、および金融部門を1つにまとめ、民間部門からの資金調達を通じて見込みの高い商業提案をしてもらうこと、などを挙げていた。
これらのことから報告書は、規制環境の整備や初号機建設に過度の遅れを生じさせないことも含め、政府はEFWGの勧告7項目を確実に実行に移さねばならないと強調。
今回の報告書に対しても、政府がこれまでに講じた措置や提案した方策など、2030年までにSMR初号機を建設する上で重要なマイルストーンの達成日程などを明示すべきだとしている。

(参照資料:英国議会リリースと科技委の報告書、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

 【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会

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