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【ドイツ】 ドイツの再生可能エネルギー拡大を支える「他国の原子力」

2019年12月24日

   ドイツは福島第一原子力発電所事故から10年以上遡る1998年以来、脱原子力と再生可能エネルギー(再エネ)拡大をワンセットで推し進める政策を継続している。1998年から2016年までに、ドイツの発電電力量に占める再エネの割合は2.6%から27.5%に拡大し、環境先進国のイメージを世界に定着させることに少なからず貢献した。原子力に関しては段階的閉鎖を進めており、2022年までに全ての原子炉が閉鎖される予定である。1998年に約30%であった発電電力量に占める原子力比率は、2016年には13%まで縮小した(国際エネルギー機関(IEA)データ))。2019年11月現在、運転中の原子炉は7基となっている。
    「脱原子力+再エネ拡大」と「電力の安定供給」は両立するのかという問いに対し、両立すると回答する場合に決まって引き合いに出されるのが、「ドイツは電力輸出国である」というセンテンスである。確かに、ドイツが年間ベースで電力輸出超過であることは事実だ。しかしそこで忘れてはいけない別の事実が、2点ある。
   まずドイツではこれまで、再エネ増加の一方で、石炭火力発電がベース電源として供給力を支え、天候や季節で大きく変動する再エネのバックアップの役割を果たしてきたことである(図1)。これは、ドイツの二酸化炭素排出量削減にとって大きなブレーキとなった。


図1:ドイツにおける電源別発電電力量推移

   もう一つは、大陸欧州の中ほどに位置するドイツにとって、電力輸出国であることは電力完全自給とイコールではないということである。ドイツでは年間ベースで輸出超過といっても、以下の図2に示すとおり、電力需要のピーク期(冬季)に再エネの出力が下がった場合には、供給力が需要を下回る時間帯が発生する。この状態で大停電が起きないのは、ひとえにこのギャップを国外からの電力輸入で埋めることができるからである。


図2:2019/2/25~2/27のドイツにおける電力需給と電力由来CO2(kWhあたり)の推移

   一方、海に囲まれた島国で送電網の国際連系がない我が国では、いかなるときも自国の電源のみで国内の電力需要の変動に対応しなければならない。出力の変動が大きい再エネのバックアックも、全て国内で確保するほかない。
   図3は、図2と同じ期間のドイツにおける電力輸出入の状況を示したグラフである。国際連系する送電線を通じて、隣り合う国々の間では常時、電力の輸出入が行われている。図3のとおり、ドイツでは再エネが低調な間は輸入超過となり、その電力は主にフランスやスイス、チェコ、デンマークから来ている。デンマークを除き、これらの国々は全て原子力国である。ドイツが変動の大きい再エネを増やしてこられたのは、国内の石炭火力と、近隣の原子力国からの電力輸入によって需給のバランスを取ることが可能だからである。


図3:2019/2/25~2/27のドイツにおける電力輸出入と相手国、電力市場価格の推移

   さらに言えば、ドイツの電力安定供給に一役買っているのは輸入だけではない。ドイツにおける再エネの一大電源地帯は、風力発電の多い北部沿岸部だが、同国では架空送電線に対する周辺住民の反発が根強く、国内を縦断する送電網の新設が進まない。このため大規模な電力消費地を抱える国土南部に電力を送ることができず、余った電力は隣国に流れ込んだ後、他国を迂回して国土南部に供給される形となっている。ドイツ北部からの電力は、西側ではオランダに流れ込み、その一部がベルギー、フランスを経由してドイツ南部に流れ込む。東側では、チェコやポーランドに流れ込んだ電力の一部が、オーストリアを通ってドイツ南部に入る。このように他国を電力の迂回路にすることでドイツは供給の安定を確保しているが、一方で通り道となる周辺国では、強風時にドイツから流入する電力で系統の安定に支障が出るなど、問題が発生している。

   すでに述べたように、年間ベースでみれば電力輸出超過のドイツだが、今後は輸入が大きく増える可能性が高い。というのも2019年現在、同国では2038年までに石炭火力発電から撤退する脱石炭政策が法制化される見込みだからである。図1で示したように、ドイツでは再エネが増えても、二酸化炭素排出量の多い石炭火力が減っていない。結果としてドイツは、2020年の排出削減目標(1990年比で40%減)の不達が確実となってしまった。脱石炭は2030年目標必達の鍵となるが、これまで自国の電力の半分を担ってきた電源の脱落は大きい。
   二酸化炭素の排出量が石炭火力より小さく、需要に応じた柔軟な運用が可能な天然ガス火力発電は、石炭火力を代替し再エネと共存させる上で、技術的には好適な選択肢である。しかし発電コストが高く電力市場での競争力に劣ることから採算の確保が難しく、増強は一定程度に留まる見込みである。再エネについては今後、さらに拡大する計画だが、送電網や蓄電設備等、インフラ整備が間に合うのか、見通しは不透明である。
   こうした状況を勘案すると、供給力の落ち込みを避けるのは難しく、いずれは「ドイツは電力輸出国である」というセンテンスが通用しなくなる日が来るかもしれない。そのころには、ドイツだけでなく欧州の多くの国で旧型の火力発電所等が閉鎖されるため、大陸欧州全体で安定した電源の設備容量余力が小さくなると考えられる。
   こうした状況を見越して、チェコでは2036年までに原子炉の新設を行う計画である。ポーランドも、原子力発電の新規導入を計画している。フランスも減原子力とはいいつつ、現在の設備容量を維持する方向である。その結果、2030年代の終わりには原子力も石炭火力も手放すドイツでは、こうした原子力を持つ隣国の電力への依存が、今以上に高まると考えられる。

参考文献
●Agora Energiewendeウェブサイト、Recent Electricity Data(25.02.2019_27.02.2019)、
   https://www.agora-energiewende.de/service/agorameter/chart/power_generation/25.02.2019/27.02.2019/
   https://www.agora-energiewende.de/service/agorameter/chart/power_import_export/25.02.2019/27.02.2019/
●連邦ネットワーク庁 Monitoringbericht 2018、2019年5月
   https://www.bundesnetzagentur.de/SharedDocs/Downloads/DE/Allgemeines/Bundesnetzagentur/Publikationen/Berichte/2018/Monitoringbericht_Energie2018.pdf?__blob=publicationFile&v=6  
●IEA、World Energy Balances 2018

以上

【作成:株式会社三菱総合研究所

 

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