海外電力関連 トピックス情報

【世界】 世界の原子力発電所における原子燃料リサイクル---MOX燃料利用

2020年1月9日

   現在世界中で、資源を有効活用することで廃棄物(ごみ)の量を最小限に抑える3R(リデュース・リユース・リサイクル)の実践を通じた「循環型経済」への転換の取り組みが進められている。
   原子力発電の分野では、すでに長きにわたりこうした取り組みが行われてきた。代表的な例が、原子力発電所で発生した使用済燃料を再処理して回収したプルトニウムとウランを混ぜてつくった混合酸化物(MOX)燃料としての再利用であり、これを我が国では、「プルサーマル」と呼んでいる。

   我が国は英仏に委託して再処理を行ってきたが、エネルギー安全保障の強化の観点などから、国内再処理とMOX燃料製造を目指しており、日本原燃株式会社(JNFL)が青森県六ヶ所村で再処理施設(2021年度上期竣工予定)、MOX燃料加工施設(2022年度上期竣工予定)の建設を行っている。

   実はMOX燃料は1960年代から利用されており、2019年1月1日時点で、世界中の原子力発電所(軽水炉)におけるMOX燃料の利用実績は、累計7,000体以上にのぼる(図1)。多くの国と国境を接する中で、限られた自国領土で放射性廃棄物を処分していくことになる欧州大陸の原子力国では、数十年前から、再処理を通じた原子燃料リサイクルによる資源の有効利用と廃棄物発生量の抑制というオプションを検討、採用してきた。例えばフランスは3,500体以上の利用実績を持ち、世界で最もMOX燃料を利用している。これに続くドイツでも約2,500体の利用実績がある。両国に加え、スイス、オランダでも2019年現在、定常的にMOX燃料の利用が行われている。オランダでは同国で唯一運転中のボルセラ原子力発電所で、2014年から新たにMOX利用が開始された。




図1:世界のMOX利用の現状
   (出所)日本原子力文化財団 原子力・エネルギー図面集「世界のMOX利用の現状」、2019年1月1日

   MOX利用の中心地である欧州では、特にMOX燃料の利用に関して安全上の問題も発生しておらず、原子燃料としてごく普通に利用されている。

   上に挙げたフランス、ドイツ、スイス、オランダというMOX定常利用国のラインナップを見る限り、原子力発電利用そのものに対する政府の姿勢は、国によってまちまちである。フランスは原子力比率を低減させていく方針であるが、再処理及びMOX燃料利用の燃料サイクル政策は堅持している。またオランダは1基のみとなったボルセラに続く新規建設計画がペンディングとなっているとはいえ、原子力オプションを維持している。一方、ドイツとスイスは原子炉の新規建設・リプレースを行わず原子力発電から撤退する方針である。こうした脱原子力国でも、今ある原子力発電所でのMOX燃料利用は以前と変わらず続いている。ドイツやスイスは我が国と同じく、英仏に委託して再処理を行っていた。今後原子力発電所が閉鎖されていくことから、新規の再処理契約は禁止となり、既契約分の国外輸送もすでに終了しているが、製造済みのMOX燃料については、残った原子炉で着実に利用していくというスタンスである。
   1998年に脱原子力政策が開始されたドイツでは、2019年11月現在、運転中の発電炉が残り7基となっているが、これら全てでMOX燃料が使用されている。2017年に脱原子力を盛り込んだ原子力法改正が発効したスイスでは現在、運転中の5基のうち2基でMOX燃料が使用されている。

   図1に示す通り、我が国でも5基の軽水炉で利用実績がある。今後については、再処理で回収されるプルトニウムを確実に利用していくため、16〜18基の原子炉で順次、MOX利用を実施する方針である。資源循環の輪は、リサイクルされたものをきちんと使うことで、初めて完成する。エネルギー安全保障の確保、資源の有効利用、廃棄物発生量の抑制を考える上で、MOX利用は実証済みのオプションのひとつと言えるであろう。

   参考文献
●   日本原子力文化財団 原子力・エネルギー図面集「世界のMOX利用の現状」、2019年1月1日現在
      https://www.ene100.jp/zumen/7-5-6
●   電気事業連合会、電気事業者におけるプルトニウム利⽤計画等の状況について
●   IAEA PRIS

以上

【作成:株式会社三菱総合研究所

 

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