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[欧州] 欧州の原子力関係企業ら、EC宛て公開書簡で原子力が経済復興に果たす役割強調

2020年6月18日

フォーラトム(欧州原子力産業会議)を含む欧州の14の原子力関係協会、および仏国の仏電力(EDF)やフラマトム社、オラノ社、チェコのCEZグループ、フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)、イタリアのアンサルド社など25の原子力関係企業は6月3日、欧州委員会(EC)の幹部に宛てた公開書簡を発表した。
この中で経済面や健康面で未曾有の危機に直面した欧州その他の国々にとって、新型コロナウイルスによる感染の世界的拡大(パンデミック)に対応することは喫緊の優先事項であり、原子力発電を中心とする欧州のエネルギー部門は信頼性の高い電力供給の維持で今後も重要な役割を担い続けると指摘。
欧州各国とEUがパンデミック後の経済復興を果たせるよう、欧州の原子力産業界は適格に支援を提供すると強調している。
書簡の宛先は欧州連合(EU)で政策決定を担うECのU.フォンデアライエン委員長のほか、V.ドムブロフスキス副委員長、F.ティマーマンス執行委員長、エネルギー総局のK.シムソン委員など。
書簡はまず、EUにおける総発電量の26%を原子力が供給しており、低炭素電力としては最大シェアとなる事実を指摘。
しかし、50%は依然としてCO2を排出する化石燃料からの電力であり、EUが2050年までに「排出されるCO2と吸収されるCO2の量が同じ(カーボン・ニュートラル)状態」へ移行する際、これらを低炭素な新しい電源に置き換えなくてはならず、これと同時に電力需要量の増加を満たすため、追加の電源が必要になるとした。
この問題の解決に要する投資額は莫大なものだが、この書簡はECがその戦略的ビジョン「Clean Planet for All」の中で、「EUが発電部門で2050年までにカーボン・ニュートラルを達成するには、原子力が再生可能エネルギーとともに重要な要素になる」とはっきり示していた点を指摘。
今日すでに開発済みの原子力技術に加えて、先進的原子炉や小型モジュール炉(SMR)などの研究開発によって、毎日24時間、一年に365日、低炭素な電力を供給できる原子力は、再生可能エネルギーを完璧に補うことができる。
原子力はまた、地域熱供給や低炭素水素の生産に大きく貢献。
がんの診断・治療にも適用されるなど、医療分野でも不可欠な役割を担っていると述べた。
フォーラトムらの認識では、「もしも地球温暖化の防止目標を達成するのであれば、技術面で中立なアプローチを取ることが重要」とEUの加盟各国が考えていることに疑いの余地はない。
原子力を排除した解決策はどれも、CO2の排出量削減という点で非効率的かつ割高であり、エネルギーの供給保証と送電システムの耐久性という点でリスクを増大させることになる。
また、EUのエネルギー集約型産業は国際的競争力を維持するため、価格が手ごろで安定した確実な電力供給に依存しており、原子力発電はこれらを可能にする重要電源であるとした。
欧州全体が現在、コロナウイルス後の経済立て直しと地球温暖化への取組が必要と考えており、そのための方策が形作られつつある。
エネルギー部門も引き続き重要な役割を果たすことになり、欧州の原子力産業界はEUや加盟各国がクリーンでグリーンな経済を取り戻せるよう、以下の準備が整っているとした。
それらはすなわち、▽EUおよび各国や各地方レベルの経済成長と雇用創出、および富の創造(現在、原子力産業界は全体で110万人規模の雇用を維持している)、▽研究と技術革新、▽輸出を拡大する可能性、▽放射性廃棄物問題も含めて環境面の厳しい規制を満たしつつ、CO2の実質ゼロ経済に向けて進むこと――である。
フォーラトムらによると、欧州の原子力産業界はすでにEUにおける重要な産業部門となっており、EU域内でそのバリュー・チェーンを強化・維持することは重要との認識が高まっている。
その意味で、原子力部門がEUの新しい産業戦略の一部となるためには以下の2点の取組が必要であるとした。
1.関連政策の策定と実施に一貫性を保たせ、投資が促進されるよう明確なシグナルを送る。
また、大型炉やSMRなど低炭素で新しい原子力発電所を建設するとともに、既存の原子力発電所を維持。
適切であればそれらで一層長期の運転を可能にする。
2.科学的根拠のある環境評価によって、EUタクソノミー(CO2排出量の実質ゼロ化に向けたグリーン事業の分類)における原子力の立場を早急に回復する。
EUタクソノミーの最終報告書を取りまとめたECの「持続可能な金融に関する技術専門家グループ(TEG)」は、科学技術の知識を有する専門家がさらなる分析を行うべきだと勧告しており、重要な投資判断が遅滞なく下されるよう、この分析は今年中に実施しなければならない。
結論としてフォーラトムらは、原子力を中心とするエネルギー部門が今後もEUへのエネルギー供給という重要な役割を担い、各世帯や事業所に安全で競争力のある信頼性の高い方法で低炭素なエネルギー・サービスを提供し、経済を動かし続けると指摘。
原子力産業界には経済復興を牽引する準備ができており、人々が将来的に探し求めている一層クリーンで頑健な経済をもたらす強力な手段になるとしている。
(参照資料: SNSにおけるフォーラトムの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会

 

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