[世界] WNA:2019年に原子力で過去2番目の発電量 達成
2020年9月2日
英国のロンドンに本拠地を置く世界原子力協会(WNA)は8月25日、世界の原子力発電所における昨年1年間の実績をまとめた「世界の原子力実績報告(World Nuclear Performance Report)2020」を公表した。
2019年末に世界中で稼働する原子炉442基(3億9,200万kW)の総発電量は、ピークとなった2006年(2兆6,610億kWh)に次いで大きな値の2兆6,570億kWhだったことを明らかにしている。
この発電量は世界の総電力需要の10%以上を賄うのに十分な量であるものの、WNAは新規の雇用を生み出すとともに経済を発展させ、将来的にクリーンエネルギー社会を実現するには、「新たに100基以上の原子炉建設計画を始動させるために、直ちに行動を起こす必要がある」と提言している。
WNAのA.リーシング事務局長は、「世界では原子力発電所の運転実績が近年、堅調に推移しており、2019年実績により発電量は7年連続で増加したことになる」と説明。
これらの発電所は、新型コロナウイルス感染症への対応を要する2020年も引き続き優れたレジリエンス(一時的な機能不全等から復帰する力)や柔軟性を発揮しており、需要量の変化に対応しつつ安定的に信頼性の高い電力供給を続けていると述べた。
WNAによると、発電量の増加が著しい地域はアジアで、2019年は前年実績から17%増加している。
中国の原子力発電量は2013年に1,050億kWhだったのが2019年は3倍以上の3,300億kWhに増えており、今やアジア地域における原子力発電量の半分以上が中国によるものだとした。
しかし、運転実績が継続的に改善されても、新規原子炉の運転開始ペースは原子力産業界が目指す「ハーモニー・ゴール(2050年までに世界の電力需要の25%を原子力で担う)」の達成には不十分で、今後は一層拍車をかける必要がある。
2016年から2020年までの新規送電開始容量の目標値として、WNAは年平均1,000万kWを掲げているが、2019年に世界で送電を開始した原子炉は6基(520万kW)に過ぎない。
このほか、WNAは2019年の世界の原子力発電実績として以下の事項が判明したとしている。
・新たに送電開始した6基のうち4基が大型PWRで、内訳は韓国とロシアの各1基に加えて中国の2基である。残りの2基は世界初の海上浮揚式原子力発電所で、ロシア北東部のペベクで起動した。
・原子力発電量は北米と西・中欧地域でわずかに減少した一方、アフリカ、アジア、南米、東欧およびロシアでは増加した。
・世界の原子炉の平均設備利用率は、前年実績の79.8%から82.5%に上昇した。
・世界の原子炉の3分の2以上が80%以上の設備利用率を記録しており、1970年代以降大幅に改善されている。
・2019年に世界で5基の原子炉が50年間の継続運転を達成した。
・高経年化により設備利用率の下がった原子炉は皆無で、むしろ40~50年稼働している原子炉の方が平均設備利用率は上がっている。
・2019年に世界で合計13基の原子炉が永久閉鎖されたが、このうち日本で閉鎖された4基は2011年以降稼働していなかった。また、韓国とドイツおよび台湾で各1基が脱原子力政策により閉鎖されている。
・2019年に世界で5基の原子炉が着工しており、内訳は中国で2基、イランとロシアおよび英国で各1基である。
・2019年に起動した原子炉の工事期間は中央値が117か月で、2001年以降の平均値より高くなっているが、理由の1つはこれらの多くが設計初号機だった、あるいは初号機の直後に着工した原子炉だからである。
・新設計を採用したからといって必ず工事期間が長くなるわけではなく、「ACPR-1000」設計採用炉としては2基目となる中国の陽江6号機は、完成までの期間が66か月だった。
(参照資料:WNAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会】
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