[ウクライナ] ウクライナ大統領、原子力発電拡大への支援を約束
2020年10月26日
ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社は10月1日、同国のV.ゼレンスキー大統領が同社のロブノ原子力発電所が立地する地域を訪れ、「ウクライナ政府は今後も原子力発電を擁護しその拡大を支援していく」と明確に表明したことを明らかにした。
これは大統領が現地メディアとの会見の場で述べたもので、建設工事が中断しているフメルニツキ原子力発電所3、4号機(各100万kWのロシア型PWR)の今後に関する質問に対して、同大統領は「我が国には原子力発電開発と原子力発電所の完成に向けた確固たる戦略がある」と回答した。
「両機を完成させた後はロブノ地域についても原子力発電所の建設を検討するし、これらは必ず実行する」と明言。
その上で、「いずれにせよ、ウクライナではすでに原子力で総発電量の半分以上を賄っているし顧客が負担する電気代も最も安い」などと指摘した。
同大統領はまた、原子力には潜在的な危険性があるとの非難に対し、「根拠のない非難だ。専門の業者が原子力発電所を建設し国家がその安全性確保のために働けば、自然環境への悪影響や地球温暖化を懸念することもなくなる」と説明。
「原子力は安全な発電技術である」との認識を改めて強調している。
同大統領はこれに先立つ9月22日、「エネルギー部門の状況の安定化と原子力発電のさらなる開発向けた緊急方策のための大統領令」を公布しており、この中でフメルニツキ3、4号機を完成させるための法案を2か月以内に議会に提出するよう内閣に指示した。
また、2017年にP.ポロシェンコ前大統領時代の内閣が承認した「2035年までのエネルギー戦略:安全性とエネルギー効率および競争力」を実行に移すため、原子力発電開発のための長期プログラムを策定することも命じている。
ウクライナではまた、公共の利益を守るために電力市場の参加者が公共部門の特殊な義務事項を履した結果、電気事業者に負債が生じる事態となっていた。
このため、同大統領令は内閣に対して返済のための包括的な対策を取るよう命令。
さらに、エネルゴアトム社を含む電気事業者に今後、同様の負債が生じることを防ぐため、内閣にはあらゆる手段を講じることを指示していた。
旧ソ連邦時代の1986年、国内でチェルノブイリ原子力発電所事故が発生した後、ウクライナは1990年にフメルニツキ3、4号機の進捗率がそれぞれ75%と28%の段階で建設工事を停止した。
しかし、国内の電力不足と原子力に対する国民の不安が改善されたことを受けて、同国政府は2008年に両炉を完成させる方針を決定している。
(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料と大統領令(ウクライナ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会】
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