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[米国] 米テラパワー社、ワイオミング州でのナトリウム冷却高速炉の実証炉建設で州知事らと合意

2021年6月16日

米マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社は6月2日、ナトリウム冷却高速炉「ナトリウム(Natrium)」の実証炉をワイオミング州内で建設することで同州のM.ゴードン知事、および同州を含む西部6州に電力を供給するパシフィコープ社と合意。
  同日、3者の連名で、建設計画を進めていく考えを表明した。
立地点としては現在、同州内で閉鎖された複数の石炭火力発電所を評価しているところで、年内にも最終決定する方針。
3者は十分な発電機能を持つ実証炉を建設し、設計の有効性や建設手法、運転性能を確認する。
さらに次の段階においては、プロジェクトとしてのさらなる評価やそれを踏まえての教育・広報活動を実施し、州政府や連邦政府から許可の取得を目指すとしている。
「ナトリウム」は電気出力34.5万kWの原子炉で、小型モジュール式高速炉「PRISM」を開発したGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社とテラパワー社が共同で開発している。
これに溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを組み合わせることで、同炉による発電所は必要に応じて出力を50万kWまで拡張し、5.5時間以上稼働し続けることができる。
両社はこのエネルギー貯蔵システムについても2020年8月から共同開発を進めており、2020年代後半に実質的な利用開始を目指している。
これら2つの施設の建設については、米エネルギー省(DOE)が2020年10月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象に選定した。
2020会計年度予算から初回の交付金8,000万ドルをテラパワー社に提供することが決定し、DOEとテラパワー社はこれに基づき今年5月に協力協定を結んでいる。
テラパワー社の今回の発表によると、ワイオミング州のプロジェクトにおいても、「ナトリウム」の実証炉とエネルギー貯蔵システムの両方を建設する。
これらを再生可能エネルギー源と統合すれば、発電システムを一層迅速に、かつコスト面の効果も高い方法で脱炭素化することが可能。
また、簡素化した主要機器を別々の構造物に納めるという画期的な設計により、少ないコストと短い建設期間で安全で信頼性の高い電力を供給できる。
テラパワー社のC.レベスク社長兼CEOは、「この先進的原子力技術によって、この先何年も高サラリーの雇用やクリーンエネルギーをパシフィコープ社とともに提供し、将来のエネルギー供給網を構築したい」とコメント。
脱炭素化に向けたCO2の削減目標を達成しつつ、信頼性の高い安定した送電網を築くという電気事業者の課題を「ナトリウム」は解決できるとの認識を示した。
ワイオミング州のゴードン知事も、「このように革新的な施設を建設する場所として当州は最適だ」と強調。
「私はこれまで、『利用し得るすべての資源を活用する』という電気事業者の包括的エネルギー政策を支持してきたが、当州は今後も将来のエネルギーのために道を拓き、先進的エネルギー技術を商業化に導く場所であり続ける」と抱負を述べた。
なお、「ナトリウム」による発電と貯蔵システムの開発チームには、GEH社とパシフィコープ社のほかにエンジニアリング企業のベクテル社や電気事業者のエナジー・ノースウエスト社、デューク・エナジー社などが参加。
これに加えて、大学や国立研究所、その他企業など約12のパートナーが協力中である。
(参照資料:テラパワー社ワイオミング州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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