[米国] 米DOE パリセード発電所再稼働に融資保証
2024年4月11日
米エネルギー省(DOE)融資プログラム局(LPO)は3月27日、2022年5月に閉鎖したパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)の再稼働に向け、同発電所を所有するホルテック社に対して15.2億ドル(約2,306億円)を上限とする条件付き融資保証を決定した。
この計画が進めば、閉鎖後に再稼働する米国初の原子力発電所となる。
ホルテック社は、原子力発電所の廃止措置のほか、放射性廃棄物の処分設備や小型モジュール炉(SMR)の開発など、総合的なエネルギー・ソリューションを手掛ける企業。
同社は2018年、ミシガン州南西部のパリセード発電所の廃炉に向けて、当時の所有者兼運転者のエンタジー社から同発電所の買収で合意。
閉鎖から数週間後の2022年6月に買収が完了し、2041年までにサイトの解体、除染、復旧作業を完了する計画だった。
しかし、CO2の排出削減に各国が取り組む中、原子力がクリーンなエネルギー源として重視されるようになり、DOEが既存の原子力発電所の早期閉鎖を防止するため2022年4月に設置した「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」に同発電所を適用対象として申請した。
しかし、同発電所への適用は認められず、2023年初め、再稼働に必要な融資を求めてDOEのLPOに連邦融資資金を申請していた。
パリセード発電所の再稼働方針は、ミシガン州のG.ホイットマー知事も2022年9月に支持を表明。
同知事が2023年7月に署名したミシガン州の2024会計年度の州政府予算法案で、同発電所の再稼働に向けて1.5億ドル(約228億円)の支援を盛り込んでいる。
ホルテック社は2023年9月、州内の非営利団体のウルバリン電力協同組合と、子会社を通じて再稼働時に同発電所による発電電力の長期の電力売買契約(PPA)を締結。
同10月には米原子力規制委員会(NRC)にパリセード発電所の運転認可の再交付を申請した。
DOEによると、ホルテック社はNRCの承認を条件に同発電所を稼働させ、少なくとも2051年までベースロードのクリーン電力生産のために改良する計画だという。
同発電所の再稼働により、年間約447万トン、今後25年間で合計1.11億トンのCO2排出が削減される見込み。
DOEのJ.グランホルム長官は、「原子力発電は、米国でカーボンフリーの唯一最大の電源であり、全米で10万人の雇用を直接支え、さらに数十万人の雇用を間接的に支えている」とし、「J.バイデン大統領の『米国への投資(Investing in America)』アジェンダは、パリセード発電所への多額の資金提供により、ミシガン州で活気に満ちたクリーンエネルギー分野において労働力を支援・拡大するもの」と強調している。
DOEによる融資保証の発表を受け、ホイットマー知事は「パリセードの再稼働により600名の高賃金・高スキルの雇用維持と80万家庭にクリーンで信頼性の高い電力供給が可能になる。
再稼働すれば、パリセードは米国初の閉鎖後の再稼働に成功した原子力発電所となり、地域経済に3.63億ドルの好影響をもたらす」と述べた。
パリセード発電所の再稼働は、2022年8月に署名された米国インフレ削減法に基づくエネルギーインフラ再投資(Energy Infrastructure Reinvestment: EIR)プログラムを通じて条件付きの融資保証を提供された初プロジェクト。
EIRプログラムでは、温室効果ガス排出への対処を目的に、稼働していない既存のエネルギーインフラの再稼働や、稼働中のインフラに対するプロジェクトへの融資が可能である。
ホルテック社は、DOEが最終的な融資文書を作成し融資を実行する前に、一定の技術的、法的、環境的、財務的条件を満たす必要がある。
なお、ホルテック社はパリセード・サイトに小型モジュール炉(SMR)の2基導入も計画している。
DOEによるとSMRは条件付き融資の対象ではないが、「既存インフラを活用しながら、敷地内に容量を追加し、気候変動との闘いに不可欠な新型炉の国内開発を促進する可能性がある」という。
パリセード発電所は1971年に営業運転を開始。
閉鎖に至るまでの50年以上、安全で信頼性の高い運転実績を持つ。
運転の認可期限は2031年であったが、エンタジー社は売電契約が満了したタイミングで同発電所を閉鎖した。
同発電所は閉鎖後に燃料を取出し済みで、再稼働にあたっては、既存の発電所インフラを利用するが、既存設備の点検、試験、改修等は必要である。
【情報提供:原子力産業新聞】
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