[米国] ホワイトハウス 国内原子力導入に関するサミットを開催
2024年6月12日
米国のバイデン・ハリス政権は5月29日、国内における原子力導入に関するホワイトハウス・サミットを主催した。温室効果ガス実質ゼロの達成とエネルギー安全保障を強化するための国家戦略として、原子力部門の強化をめざす政権のコミットメントを示すとともに、官民が一体となった取り組みの進展を強調。原子力産業、政府、学界のリーダーたちが一堂に会し、米国のエネルギー政策における原子力の役割について議論した。
ホワイトハウスによる同日公表のファクトシートによると、バイデン政権はこれまで、米国のエネルギーと経済安全保障強化に向け、民生用原子力発電におけるロシア産ウランへの依存低減や核燃料の新たなサプライチェーンの構築、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという昨年のCOP28での多国間宣言への署名のほか、新しい原子炉設計の開発、既存原子炉の運転期間延長、新たな展開に向けた気運の醸成など、多くの行動をとってきたことに言及。さらに米国は、既存の国内原子力フリートと大規模な原子力発電所の継続的な建設の双方の重要性を認識し、大規模建設に係るプロジェクトのリスクを軽減し、米国の産業が積極的な導入目標を支援できるよう措置を講じているとしている。
今回、米政府は、消費者とプロジェクト関係者を保護しつつ原子力導入を推進するために、原子力ならびに巨大プロジェクトの建設業界全体から主要な専門家を動員し、コストとスケジュール超過リスクの原因を積極的に軽減する機会を特定するための、「原子力プロジェクト管理ならびに実現作業部会」(Nuclear Power Project Management and Delivery working group)の設置を発表した。作業部会のメンバーは、ホワイトハウス国内気候政策局、ホワイトハウスクリーンエネルギーイノベーション・実施局、ホワイトハウス科学技術政策局、エネルギー省(DOE)などの連邦政府機関で構成され、プロジェクト開発者、エンジニアリング・調達・建設会社、公益事業者、投資家、労働団体、学者、NGOなど、様々なステークホルダーも関与して進められる。
また、ホワイトハウスは、米陸軍が国内の複数の陸軍施設への電力供給に関する先進炉配備プログラムについて情報提供を要請する情報提供依頼書(Request for Information)を間もなく発出すると発表。小型モジュール炉(SMR)やマイクロ炉は、物理的攻撃やサイバー攻撃、異常気象、パンデミックによる生物学的脅威など、新たな課題の脅威に対して、防衛施設に数年間、レジリエントなエネルギー供給が可能。先行するアラスカ州のアイルソン空軍基地のマイクロ炉や国防長官室(OSD)戦略能力局(SCO)のプロジェクト・ペレ(Project Pele)の可搬型マイクロ炉プロトタイプによる現在の防衛プログラムと並行し、連邦政府の施設やその他の重要インフラにクリーンで信頼性の高いエネルギーを供給する高度な原子力技術の追加導入を計画している。
更に、DOEは、受動炉心冷却能力や先進燃料設計など、先進炉の安全性向上を強調する新しい入門書(primer)を発表した。また、アイダホ国立研究所は、開発者や利害関係者の新プロジェクトのコスト要因評価に役立つ、高度な原子炉資本コスト削減ツールを発表している。
米政府はまた、ジョージア州のボーグル3、4号機(AP1000×2基)の完成が、米国で30年以上ぶりに建設された原子炉であり、DOEの融資保証によりプロジェクトが可能になったと強調。また、雇用を維持しながら、既存の原子力を復活し活性化するため、DOEの融資による資金調達や生産税額控除などの措置を導入したほか、DOEの先進炉実証プログラム(ARDP)や石炭火力発電から原子力発電への移行プログラム等を通じて、新しい原子力技術の実証と導入を支援していると指摘。また、新規炉の建設、既存炉の運転期間延長や出力増強に向けた原子力規制委員会(NRC)による許認可プロセスの改革や、濃縮ウランや先進炉で使用するHALEU燃料の国内供給サプライチェーンの確立とスキル向上、研究開発推進の取り組みについても言及した。
バイデン・ハリス政権が米国における民生用原子力導入を加速させるために講じたこれらの行動は、過去50年近くで最大の持続的な推進力であるとし、原子力業界における米国のリーダーシップを再確立するための措置を引き続き講じ、先駆者(first movers)が先進的で革新的な技術を導入できるよう引き続き行動を起こしていくとしている。
【情報提供:原子力産業新聞】
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