原子力発電所でタービンを回したあとの蒸気は、冷却水として取水した海水で冷やされて、もとの水に戻ります。この蒸気を冷やしたあとの海水は、取水したときの温度より約7度程度上昇して海に戻されます。これを「温排水」といいます。発電所を立地する際に、電気事業者は温排水の拡散実態を調査し対策を講じています。
対策内容
温排水の拡散実態を調査し、対策として以下のことを実施します。
- 発電所計画予定地および周辺の環境調査
- 必要に応じて放水口の位置をできるだけ漁場から遠ざける
- 取水口は温排水が再循環しないような位置に設ける
- 深層取水方式を用いる
電気事業者は、以上の基本的な対策を踏まえ、最も適切な取水方法、放水方法を採用します。
日本原子力文化財団/原子力・エネルギー図面集
日本原子力文化財団/原子力・エネルギー図面集
環境への影響については、発電所の建設計画時に行う環境影響評価法、電気事業法に基づく環境影響評価の中で調査、予測、評価を行います。結果については、経済産業省が厳正な環境審査を実施することになっています。
温排水の利用
温排水の利用で最も進んでいるのは、漁業への利用です。温排水を養殖池に導き、そこで魚介類の種苗の育成または成魚の養殖が行われています。また、温排水は、漁業に限らずほかの目的の熱源として利用することも考えられています。道路の融雪、建物などの暖房、植物類栽培の温室および海水の淡水化などが試みられています。