【定例会見】排出量取引制度(GX-ETS)の制度設計に対する業界としての考え
排出量取引制度(GX-ETS)の制度設計に対する業界としての考え
電気事業連合会の林でございます。本日もよろしくお願いいたします。
まず、会見に先立ちまして、先般の台風15号について、一言申し上げます。今回の台風15号では、各地で大雨や突風等による被害が発生いたしました。被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
また、特に静岡県の一部地域におきましては、台風の通過に伴い発生した竜巻等により、長時間にわたり停電が発生いたしました。多くの皆さまにご不便とご迷惑をおかけしたことについて、深くお詫び申し上げます。
今回、局所的に甚大な設備被害が発生しておりましたが、中部電力グループをあげて、復旧に取り組み、早期に停電は解消しております。
近年、わが国では、災害が激甚化しております。電気事業者としましては、地震や台風など、大きな災害が発生した際には、国や自治体とも協力し、早期復旧に全力で取り組んで参る所存でございます。
それからもう1点、先般、関西電力が、美浜発電所で後継機の設置可能性の検討に向けて、自主的な調査を再開すると公表した件についても、一言申し上げます。
第7次エネルギー基本計画等で示されたとおり、今後、電力需要が伸びる蓋然性が高い中、安定的な脱炭素電源である原子力発電を最大限活用していくことが重要になります。そのためには、新増設やリプレースを進めていくことが求められます。
そのような中、今回、関西電力が調査を再開したことは、大変意義があるものと考えております。関西電力においては、引き続き、地域の皆さまへ丁寧に説明の上、地形・地質調査等を進めていただきたいと思います。
それでは、会見テーマに戻りまして、本日は、排出量取引制度、いわゆるGX-ETSの制度設計について業界としての考えを申し上げます。
お手元に配付している資料は、先週、国の審議会において、電事連としての意見を説明した内容の抜粋となりますので、ご覧ください。
まず、資料の1ページ目をご覧ください。上の枠のリード部分の2つ目に記載したとおり、ETSが導入され、GXの実現に向けて、非効率石炭の脱炭素化やLNGへの燃料転換、非化石電源の拡大を進めていくことになります。
これは化石燃料中心の経済、社会構造から、クリーンエネルギーへの転換を図るものであります。産業構造の大転換ということであります。電気事業者が、この大転換に対応していくためは、当然、電源構成の変更が必要となります。
これまでは、各発電事業者が、地域それぞれの特性を踏まえて、電源を開発してきました。今後、GX実現に向けて必要となる電源構成の変更を進めるにあたっては、足元の状況や、新たな電源開発のリードタイムなどを考慮することが必要です。
現在、国の議論において、発電分野のETSについてはベンチマーク方式が採られることとなっております。ETSは、第2フェーズとして、2026年度から導入することになっていますが、この期間は各企業のGX実現に向けた投資時期と重なります。
そうした時期に、ETSによる過度な負担が発生いたしますと、事業者の脱炭素投資を減少させ、結果として、ひいてはGXの実現を阻害することになりかねません。
このような事態を招かないためにも、今後の制度設計にあたっては、脱炭素化に向けた時間軸を考慮することや、過度な削減水準とならないよう、制度を設計することが求められます。
具体的に紹介しますので、2ページをご覧ください。脱炭素化に向けた時間軸には、主に2つの考慮すべき観点があります。1つが今申し上げた電源開発のリードタイムです。
脱炭素化に向けたトランジション期において、排出原単位を低減するためには、設備面では、例えば石炭火力からLNG火力へ転換するといった手法があります。しかしながら、LNG火力を建設し、運転するまでのリードタイムは13年程度かかります。
さらに至近では、資機材不足の影響があり、2032年までとされている第2フェーズの期間で、火力発電を追加開発するのは簡単なことではありません。
2点目として、脱炭素技術の導入拡大時期の観点も必要です。水素、アンモニア、CCSといった脱炭素技術の導入拡大は2030年以降と見込まれております。第2フェーズでは大きな排出削減効果はあまりないといえます。
そのため、既存の火力電源構成を踏まえた排出削減策を模索する必要があり、例えば、第2フェーズ期間中は、燃種別でのベンチマーク設計により排出削減を促していく仕組みとして頂きたいと考えております。
続いて、4ページをご覧ください。ETSの導入にあたっては、ベンチマーク以外の課題に対する検討も必要です。電気事業においては、省エネ法等、効果や目的が重複する政策が既にあります。これら制度の目的や既存政策との関係を整理することが必要です。
また、制度導入にあたっては、追加コストの観点から、国民の皆さまのご理解も重要になります。国におきましては、社会全体への理解醸成も並行して進めていただきたいと考えております。
以上、ETS導入に向けた制度設計に対する個別の意見を述べさせていただきました。資料5ページのまとめの冒頭にも記載しましたが、我々電気事業者としましても、非効率石炭の脱炭素化やLNGへの燃料転換、非化石電源拡大を進めていきます。また、需要側でも電化の推進に取り組むことを通じて、GXの実現に貢献していきたいと考えています。
最後に、大阪・関西万博についても一言申し上げます。4月に開幕した万博も残すところ1か月を切りました。電力館には、大変多くの方に来館いただいており、改めて、感謝を申し上げます。
万博では9月17日から28日かけて、テーマウィーク「地球の未来と生物多様性」が開催されております。この期間を利用して、電力館においても様々なイベントを開催いたします。
9月21日にはレーザー核融合技術の開発に取り組まれているEX-Fusionの松尾代表取締役社長らをお招きしたトークイベントを行います。また、9月27日には、屋外ステージでカーボンニュートラルをテーマとした子供向けイベントを開催する予定です。
会期も終盤となり、1日の来場者が20万人を超える日も出てきております。多くの方が来場され、電力館にお越しいただいた皆さまに安全に楽しんでいただけるよう、引き続き、職員一丸となって取り組んでまいります。まだ万博にお越しになられていない方は、是非ご来場いただければと思います。
本日は以上でございます。