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2025年12月19日に開催した電事連会長定例記者会見において、弊会会長の林から

今年の振り返りと来年の抱負

についてお話ししました。

電気事業連合会の林です。今年、最後の会見となりました。本日も、よろしくお願いいたします。

本日は、会長会見のテーマに入る前に、先日、中部電力として公表した原子力担当役員が辞任した案件について、中部の社長として一言申し上げたいと思います。

今回、中部電力において、浜岡原子力発電所の工事発注に際して、正式な契約変更や精算手続きを行わないまま、工事を進めていたことを確認しました。地域の皆さま、そして、広く社会の皆さまにご心配をおかけしたことについて、中部電力社長として、心より深くお詫び申し上げます。

今回の事案により、地域の皆さまをはじめ、多くの皆さまにご心配を抱かせる事案を発生させたことは痛恨の極みです。中部電力の社長として、重く受け止めております。

新たな執行体制のもと、速やかに内部統制システムおよびガバナンスを適正に機能させ、社会の皆さまから信頼される原子力事業の運営に努めていくことが、経営としての責任であると考えております。

現在、中部電力において、国の報告徴収も踏まえて、事案の全体像や原因調査を進めており、私自身が先頭に立ち、この原因究明にしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

今後も地域の皆さまから信頼いただけるよう、改めて努めてまいりたいと思います。よろしくお願いします。

今年の振り返りと来年の抱負

それでは、次に会見テーマとして、今年の振り返りと来年の抱負について申し上げます。お手元に、2025年の主な項目を振り返ったメモを配布しております。こちらもご覧いただきながら、お聞きください。

2025年も残すところ1週間あまりとなりました。今年は、エネルギー業界のみならず、国内外において大きな変化があった1年であったと思います。
海外では、1月にトランプ氏が「アメリカ・ファースト」を掲げて大統領に就任されました。関税政策や国際協調の枠組みからの脱退等、自国の利益を優先する政策が進められました。

その結果、ロシアや中国といった大国との対立が鮮明になる等、国際秩序の不安から安全保障体制や自由貿易、脱炭素などの先行きが不透明な状況になっております。

このような国際秩序の不安定化を背景に、半導体やレアアース等のサプライチェーンが強化される等、先端技術や資源の輸出規制が進みました。

また、エネルギー分野においても、世界的な原子力回帰やLNG確保の動きが進み、各国が、経済・技術・エネルギー分野での安全保障強化を加速させる方針に舵をきった1年でした。

国内に目を向けると、昨年の衆院選に続き、参院選においても与党の議席数が過半数割れとなりました。一方、国民民主党や参政党などが躍進し、多党化が進展したと思います。さらには公明党が26年間続いた連立政権を離脱する等、依然として、政局は不安定な状態にあると言っても過言ではありません。

初の女性総理として高市政権が発足し、物価高による社会への影響が顕在化する中、電気・ガス料金補助やガソリン税の暫定税率廃止等、国民生活を支えながら、政府は積極財政で経済成長を模索しております。

その一つの方策として、政府が設置した「日本成長戦略本部」においては、全17の成長戦略分野が示されました。その中に「資源・エネルギー安全保障、GX」や「フュージョンエネルギー」が含まれる等、日本の経済成長に向けて、その基盤を支えるエネルギー分野の重要性が、改めて示されたものと認識しております。

このような動きの背景としては、今年2月に、第7次エネルギー基本計画やGX2040ビジョンが閣議決定されたことが大変重要なポイントであったと思います。

また、3月には、電力システム改革の検証結果が取りまとめられる等、今年は、我が国のエネルギー政策の新たな方向性が示された1年であったと考えております。

現在、我が国は、国内投資が伸び悩み、世界における経済的地位が後退しております。その状況を打破するために、新たな技術革新等により、高い付加価値を生み出す産業構造へ転換し、国力を高めることが求められております。

その基盤として、強靭なエネルギー供給の整備を行うことが必要となります。第7次エネ基やGX2040ビジョンでは、伸びていく電力需要を背景に、エネルギー安全保障と安定供給が第一に据えられました。

今後、様々な不確実性がある中でも、産業政策とエネルギー政策を一体として考え、経済成長を目指していく決意が示された大変意義のあるものであったと思います。

一方で、広域機関が6月に発表した電力需給シナリオでは、将来の供給力不足について、大変衝撃的な結果が示されました。

また、資材費の高騰や人材不足による設備投資の停滞懸念も高まっております。それにより、洋上風力等、発電事業の継続が困難になるケースも発生しております。

そのような中、今週17日に開催された国の審議会において、エネルギーの事業環境整備の方針が示されました。大変重要な方針が盛り込まれておりますので、これを速やかに、具体的な政策に落とし込み、実行に移していくことが大切だと思います。

国には、政策の優先順位をつけて、スピード感を持って対応していただくことを期待しております。

また、将来の安定供給と脱炭素化の同時実現に向けて、今年は、原子力でも大きな進展がありました。

1つは、関西電力が美浜発電所で後継機の設置可能性の検討に向けて、自主的な調査を再開したことです。将来の安定供給のためには、安定的な脱炭素電源である原子力の建て替えを進め、継続して活用していくことが重要になります。

今回、関西電力が調査を再開したことは、大変意義があるものであったと考えております。

2点目は、北海道電力の泊発電所や、東京電力HDの柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けて、地元のご理解が進み、大きな1歩が踏み出されたことだと思います。

この冬や来年の夏など、足元の電力需給も厳しい状況が続きます。また、将来、電力需要の増加が見込まれるなか、原子力発電所が再稼働を果たすことは、電力の安定供給確保や脱炭素化の実現といった観点で大きな効果をもたらします。

各社においては、地元のご判断をしっかり受け止め、引き続き更なる安全性を追求し、地元の皆さまからのご理解をいただけるよう、丁寧に取り組みを進めていただきたいと思います。

さらには、原子力事業者としては、今後もたゆまぬ安全向上に取り組み、他の既設炉の再稼働や稼働率向上、建て替えに向けた検討を着実に進めてまいります。

さて、これまで振り返ってきたとおり、今年は、国内外における不確実性の高まりや安定供給確保の懸念が顕在化しました。その結果、エネルギー安全保障が追及される中で、エネルギー政策の具体化議論や原子力事業が進展した1年にもなりました。
将来、日本のエネルギー事情を振り返ったときに、大きな転換の1年として、捉えられるのではないかと考えております。

一方で、来年は、GX-ETSの導入も予定されております。先日の排出量取引小委員会でも議論されておりますが、まだコスト負担の在り方等が不透明な状況です。

また、国際的な脱炭素化に向けた潮流の変化等、様々な不確実性も高まっております。その中で、我々、電気事業者には、将来のわが国の国民生活や経済成長を支える安定供給の基盤を確かなものとしていくことが求められております。そのためには、環境変化に惑うことなく、地に足をつけて1つ1つ、課題に着実に対処していく1年にしていかなければなりません。

こうした状況を踏まえ、来年は「将来を見据えて、着実に前進させる年」にしていきたいと考えております。

将来の安定供給の確保とGXの同時実現に向けて、課題は多岐にわたります。再生可能エネルギーの推進、原子力の最大限の活用、必要な供給力を維持した上での、低効率な石炭火力のトランジションなど、将来を見据えて、足元のあらゆる課題に取り組み、しっかりと役割を果たしてまいりたいと考えております。

本日、私からは以上となります。