電気事業連合会

海外電力関連 解説情報

【米国】電気事業の最近の動向

2019年2月21日

1. トランプ政権のエネルギー政策とその電気事業への影響
  (1) トランプ政権のエネルギー政策
①「エネルギーの支配」を目指して
   2017年1月に発足したトランプ政権は「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」の実現を優先政策課題として打ち出している。エネルギー政策について、トランプ大統領は2017年6月29日、エネルギー省(DOE; Department of Energy)主催のイベントで演説を行い、これまでの「エネルギーの自立」(Energy Independence)のみならず、「エネルギーでの支配」(Energy Dominance)という新たな概念を掲げ強調した。この「エネルギーでの支配」の目標は、米国経済のために低コストの国内産エネルギーを提供することで、経済を成長させ、米国のエネルギー安全保障の脆弱性を最小限にすることにある。
   トランプ政権は、この「エネルギーでの支配」を達成するため、国内の石油・ガス生産と石炭産業の再活性化を促進することに焦点を当て、エネルギー・環境分野における規制を緩和し、国内エネルギー生産を促進させるべく、エネルギー・電力政策の大幅な方向転換を図ろうとしている。トランプ大統領の優先課題は、米国の「エネルギーでの支配」を支える米国の化石燃料生産を促進させることにある。このため、前オバマ政権のクリーンエネルギー政策(Clean Energy Agenda)や気候変動行動計画(Climate Action Plan)について、再生可能エネルギー(再エネ)の支援、化石燃料の環境規制などを「過度に重視している」と批判している。
   また、トランプ政権は、前政権による再エネと分散型エネルギーの支援が、結果的に重要なベースロード電源(主に石炭火力と原子力)を蝕み、米国のエネルギー安全保障と信頼性を弱める可能性のある不適切な政府介入だと問題提起している。このため、トランプ大統領は、ベースロード電源の閉鎖が米国の電力系統のレジリエンス(事故などからの回復力・耐性)に及ぼす影響に関する議論を含め、一連のエネルギー政策議論を進めている。トランプ政権は、天然ガスと再エネによる発電量の割合が増加するにつれ、それらによって低下するとされる電力系統の信頼度とレジリエンスを確保するために、「電源ポートフォリオの多様性」を維持する必要性があるとし、ベースロード電源の減少について懸念を示している。
② トランプ政権のエネルギー政策の動向
   トランプ大統領は就任後、オバマ政権下で導入された石炭産業に関する環境規制の撤廃に焦点を当てた政策に着手し、電力市場に影響を及ぼし始めた。時間の経過とともに、トランプ政権の電気事業政策は、初期の環境保護局(EPA; Environmental Protection Agency)のような政府機関の規制撤廃から、卸電力市場のルール変更要求へと進展してきた(表-1参照)。



   至近の電力政策では、経済的に劣後したベースロード電源を救済するため、DOEは、連邦エネルギー規制委員会(FERC; Federal Energy Regulatory Commission)に対して従来の卸電力市場制度の見直しを指示(FERCは却下)したほか、国家安全保障の観点からのベースロード電源の重要性の検討などを行っている。

【情報提供:一般社団法人海外電力調査会

以上

 

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