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[中国] 年内に完成する高温ガス炉実証炉で大気汚染改善へ

2017年10月4日

中国山東省の石島湾で2012年から電気出力20万kWの高温ガス炉(HTGR)実証炉の建設を請け負っている中核能源科技有限公司(チナジー社)は9月19日、年内にも同炉が完成する見通しとなったことから、多数の産業用石炭火力発電所をリプレースして国内の大気汚染とCO2排出を劇的に改善することが可能になるとの認識を明らかにした。
今月18日から国際原子力機関(IAEA)がオーストリアで開催している総会のサイド・イベントで、同社の呉郁龍総経理が述べたもので、ウランとプルトニウムを燃料球として使用する革新的HTGRの建設状況を詳細に説明した。
すでに中国では、北京の清華大学が中心となって、2003年から同大の研究院で熱出力1万kWの実験炉「HTR-10」を運転中。
同大と協力関係にある核工業建設集団公司、および華能集団公司が「華能山東石島湾核電有限公司」を設立して実証炉「HTR-PM」の建設を進めており、チナジー社はエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を請け負っている。
同総経理はまた、江西省瑞金市などでは、出力60万kWの商業用HTGRを複数、建設する構想も進展中と述べたことが伝えられている。
HTGRは発電だけでなく地域熱供給や脱塩、水素製造にも利用できるため、ポーランドが大型炉建設計画と並行して導入の実行可能性を模索しているほか、サウジアラビアも韓国製小型モジュール炉などとともに中国製HTGRを建設する可能性調査を実施中。
すでに高温工学試験研究炉(HTTR)を保有する日本も、米国が主導する国際実証炉(開発)計画「PRIME」に参加しており、固有の安全性を有するという第4世代のHTGRは、実用化への期待が世界レベルで高まっている。
「産業プロセスへの高温核熱利用」に関するIAEAの円卓会議では、中国のほかにポーランド、米国、日本から専門家が出席した。
HTGRが排出する高温熱の潜在的な活用方法について議論を交わした結果、産業用の代替エネルギー源として世界全体のCO2排出量を削減する重要ツールになり得るなど、地球温暖化の影響緩和で直接的な役割を担う可能性がある点を指摘。
HTGRは今後数年以内に導入できると予想されることから、輸送用の低炭素エネルギー源としてだけでなく、高温熱を必要とする数多くの産業への適用が期待されるとした。
IAEAのM.チュダコフ原子力エネルギー局担当事務次長も開会挨拶の中で、「原子力開発を行っている多くの加盟国が、発電以外で原子力を活用する方向性として輸送市場や熱供給市場への進出を確信している」と指摘した。
同会議ではまた、ポーランド・エネルギー省の原子力局長が、2020年代後半に熱出力1万kWの研究用HTGR、2030年代前半に20~35万kWの実用HTGRを導入するという同国の計画の進展状況を説明した。
HTGRによって、ポーランドは年間1,400~1,700万トンのCO2排出を抑制するとともに、年間500万トン以上のLNGや石油を消費する大型化学プラントには、HTGRの高温熱を供給予定だと明言。
現在、化石燃料が100%を占める同国の熱供給市場においては、HTGRによる高温熱の産業利用は途方も無く大きなポテンシャルを持っていると強調した。
このほか、ポーランド国立原子力研究センターから参加した専門家が、欧州域内でHTGRによるコジェネレーション・システムを共同開発するという多国間のイニシアチブについて考察。
米国の「次世代原子力プラント産業アライアンス」が取りまとめている「PRIME」にも参加して、EUや日本、韓国の核熱利用開発に協力していく考えを示した。

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