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【中国】再処理推進と原子炉の積極的な輸出の規定も盛り込んだ原子力法案を公表
2018年10月24日
中国政府・司法部(我が国の法務省に相当)は9月20日、原子力法案を公表し、10月19日を期限とするパブリックコメントの募集を開始した。法案は、国として原子力利用や原子燃料サイクルを推進し、また事業者によるプラントや設備、技術サービスの海外展開を支援していく姿勢を示している。
中国では、原子力分野において基本法の制定が遅れてきたが、2017年には原子力安全法が制定された。原子力法が制定されれば、原子力の推進と安全を規定する両基本法が整備されることとなる。
法案は8章・54の条文で構成されており、技術開発や原子力利用、安全監督等が規定されている。その中でも、原子力における輸出入や国際協力に向けた積極的な姿勢を示す諸規定は注目に値する。法案では、原子炉、原子燃料やプラントの設備、技術サービスの輸出を国が支援することが規定されている。中国は従来から首脳によるトップ外交で海外市場の開拓を進めてきたが、原子力法により国による輸出支援が法律で明文化されることとなる。
また、原子燃料サイクルについても積極姿勢をうかがわせる規定が見られる。従来から中国では、熱中性子炉から高速増殖炉を経て核融合炉に至る3ステップの開発方針が示されていた。熱中性子炉に関しては、運転中の商用炉の基数は我が国を上回る43基であり、建設中のプラント基数は世界一の13基となっている。高速増殖炉の開発については、既に電気出力2万5,000kWの実験炉が運転中であり、また2017年12月には電気出力60万kWの実証炉の建設が開始された。一方で、フランス・Orano社との協力で進めている商用再処理施設の建設プロジェクトは、サイト選定や契約の締結で足踏み状態が続いている。
こうした状況がある中で、公表された法案は原子燃料サイクル体系の確立や使用済燃料の再処理の実施を明確に謳っている。さらに法案には、国が承認すれば、中国から輸出した原子燃料を輸出先で発電に使用した後に中国に返送し、中国で貯蔵や再処理をすることができるとの規定が置かれている。こうした規定から、燃料サイクル確立や再処理推進に対する国の確固たる姿勢を見て取ることができる。また、上述の通り国による輸出の支援対象としても、原子燃料や技術サービスが掲げられている。中国は、原子炉輸出に留まらず、自国製の原子燃料を輸出し、輸出先が使用した燃料を返送させ貯蔵・再処理するといったパッケージの販売を視野に入れたビジネス展開を模索している可能性も考えられる。
一方で法案は、中国国内における事業環境の整備にも配慮したものとなっている。中国ではここ数年一部の省で、設備容量の過剰から送配電事業者の指示により原子力発電所が出力低下を命じられ、さらには運転停止まで命じられるという事態が生じている。その根底には、依然として石炭火力発電の発電コストが廉価であることがあるが、法案は国が、原子力発電設備がフルに利用されるようにするための政策を進めていくことを規定している。
今回の法案は、中国国内における原子力発電の事業環境改善とともに、海外市場開拓に向けて国と事業者が一体となる体制の構築をも規定したものとなっている。ここ最近中国では、国内では新規の原子力発電所の建設承認が久しく発給されず、また海外展開でもそれほど顕著な成果が見られない状況が続いてきたが、原子力法制定が中国内外における原子力事業の新たな躍進の出発点となる可能性は十分に考えられる。
出典:中国政府・司法部ウェブサイト他
中国では、原子力分野において基本法の制定が遅れてきたが、2017年には原子力安全法が制定された。原子力法が制定されれば、原子力の推進と安全を規定する両基本法が整備されることとなる。
法案は8章・54の条文で構成されており、技術開発や原子力利用、安全監督等が規定されている。その中でも、原子力における輸出入や国際協力に向けた積極的な姿勢を示す諸規定は注目に値する。法案では、原子炉、原子燃料やプラントの設備、技術サービスの輸出を国が支援することが規定されている。中国は従来から首脳によるトップ外交で海外市場の開拓を進めてきたが、原子力法により国による輸出支援が法律で明文化されることとなる。
また、原子燃料サイクルについても積極姿勢をうかがわせる規定が見られる。従来から中国では、熱中性子炉から高速増殖炉を経て核融合炉に至る3ステップの開発方針が示されていた。熱中性子炉に関しては、運転中の商用炉の基数は我が国を上回る43基であり、建設中のプラント基数は世界一の13基となっている。高速増殖炉の開発については、既に電気出力2万5,000kWの実験炉が運転中であり、また2017年12月には電気出力60万kWの実証炉の建設が開始された。一方で、フランス・Orano社との協力で進めている商用再処理施設の建設プロジェクトは、サイト選定や契約の締結で足踏み状態が続いている。
こうした状況がある中で、公表された法案は原子燃料サイクル体系の確立や使用済燃料の再処理の実施を明確に謳っている。さらに法案には、国が承認すれば、中国から輸出した原子燃料を輸出先で発電に使用した後に中国に返送し、中国で貯蔵や再処理をすることができるとの規定が置かれている。こうした規定から、燃料サイクル確立や再処理推進に対する国の確固たる姿勢を見て取ることができる。また、上述の通り国による輸出の支援対象としても、原子燃料や技術サービスが掲げられている。中国は、原子炉輸出に留まらず、自国製の原子燃料を輸出し、輸出先が使用した燃料を返送させ貯蔵・再処理するといったパッケージの販売を視野に入れたビジネス展開を模索している可能性も考えられる。
一方で法案は、中国国内における事業環境の整備にも配慮したものとなっている。中国ではここ数年一部の省で、設備容量の過剰から送配電事業者の指示により原子力発電所が出力低下を命じられ、さらには運転停止まで命じられるという事態が生じている。その根底には、依然として石炭火力発電の発電コストが廉価であることがあるが、法案は国が、原子力発電設備がフルに利用されるようにするための政策を進めていくことを規定している。
今回の法案は、中国国内における原子力発電の事業環境改善とともに、海外市場開拓に向けて国と事業者が一体となる体制の構築をも規定したものとなっている。ここ最近中国では、国内では新規の原子力発電所の建設承認が久しく発給されず、また海外展開でもそれほど顕著な成果が見られない状況が続いてきたが、原子力法制定が中国内外における原子力事業の新たな躍進の出発点となる可能性は十分に考えられる。
出典:中国政府・司法部ウェブサイト他
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