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[NEA・IAEA] 世界のウラン資源関係報告書の最新版を公表
2019年1月23日
経済協力開発機構・原子力機関(OECD./NEA)と国際原子力機関(IAEA)はこのほど、世界のウラン資源量や探査状況、生産量、需要量等に関する分析報告書「2018年版:ウラン資源、生産と需要」(通称「レッド・ブック」)を公表した。
36か国から提供された2017年1月1日現在の公式データや5か国からの報告書の内容を取りまとめたもので、2035年までの世界の原子力発電設備容量やこれらで必要となるウラン所要量についても予測。
将来的な電力需要量の増加や地球温暖化対策で原子力発電が果たす役割とは無関係に、世界のウラン供給量は予測可能な将来において、原子力発電所で必要となる量を十分上回るとの認識を示した。
ただし、現時点で保存整備段階にあるウラン鉱床も含めて、タイムリーなウラン生産を行うには、相当量の投資や技術面の専門的知見が必要になると警告している。
レッド・ブックはNEAとIAEAが2年に1度取りまとめているもので、今回の報告書は第27版目。
世界のウラン市場動向に関する最新の分析結果を盛り込むとともに、世界のウラン産業についても関係する41か国のデータも含めて統計的側面を提示している。
レッド・ブック最新版によると、2017年1月1日現在、1kgUあたり130ドル以下で回収可能な既知資源の量(確認資源量と推定資源量の合計)は614万2,200トンUで、2015年のデータから7.4%増加した。
最も高コストなカテゴリー(260ドル以下で回収可能)では、前版から4.5%増の798万8,600トンUとなり、全体的な既知資源量は増加している。
ただし、増加分は主に新たに発見された資源であり、これらでウランの生産に至るには追加の投資が必要になるとした。
また、世界中のウラン探鉱と鉱山開発に費やされた年間の総支出額は、2014年時点の約21億ドルから2016年には約6億6,400万ドルに低下した。
約59%も低下した理由の一部は、カナダのシガーレイク鉱山やナミビアのハサブ鉱山の開発に起因するが、2011年の半ば以降、世界でウラン市場の冷え込みが長期化していることから、支出額は今後も減り続けるとの予想を示している。
世界のウラン生産量は、2015年から2016年にかけて3%増加し、約6万2,000トンUになった。
しかし、2017年には約5万9,000トンUと減少し始めており、2018年にはさらに減少すると予想される。
これは、ウラン価格の低迷が長期化しているのに呼応し、主要生産国であるカナダやカザフスタンなどが全体的な生産量を制限しているためだとしている。
原子力発電とウランの需給
前回の2016年版以降、世界では原子力発電開発が縮減すると予想されていた。
しかし、規制された電力市場においては電力需要量が増加するとともに、低炭素な電源の必要性も拡大すると見られており、原子力発電は拡大していく見通し。
これにともない、予測し得る将来にウランの総需要量も継続して増加していくことが見込まれるとした。
2017年1月1日現在、世界では449基の商業炉が送電網に接続されており、総設備容量(ネット)は約3億9,100万kW。
これらが必要とするウランの総量は年間約6万2,825トンUだが、いくつかの国で公表されている政策変更や原子力プログラムの改定を考慮すると、世界の原子力発電設備容量は2035年までに3億3,100万kW(低需要ケース)~5億6,800万kW(高需要ケース)に増加するとした。
このためレッド・ブックは、2035年までに原子炉関係で必要とされるウラン所要量(MOX燃料を除く)は、世界の合計で約5万3,000トンU~約9万トンUに増加するとの見方を示している。
結論としてレッド・ブック最新版は、いくつかの先進国では近年、電力需要が低迷しているものの、世界のウラン需要量は今後数十年にわたって増加していくと予測した。
理由としては主に、開発途上国における大規模な人口増加に対応するためだと指摘。
原子力は競争力のある価格で低炭素なベースロード電力を供給可能であるほか、原子力発電開発によりエネルギーの供給保証も強化されるため、今後も重要なエネルギー供給源であり続けるとした。
しかしながら、いくつかの国では福島第一原子力発電所事故により原子力に対する国民の信頼が損なわれ、原子力発電設備も縮小していくと予想。
これに加えて、低コストな天然ガス資源に恵まれた北米では、リスク回避的な投資環境が、自由化された電力市場における原子力発電の競争力を失わせていくとした。
このため、原子力がもたらすエネルギーの供給保証や低炭素な電力による恩恵が政府や市場の政策に反映されれば、そうした競争圧力を軽減できるかもしれないとレッド・ブックは予測。
電力需要が増加するとともにクリーンな発電へのニーズが高まれば、規制された電力市場においてもなお、原子力発電は拡大していくとの見方を示している。
(参照資料:2018年版レッド・ブック、OECD./NEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会】
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