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[米国] 大西洋評議会、米原子力産業界の繁栄は国家の安全保障上、重要と報告
2019年7月16日
北米と西欧諸国の協調主義的理念を持つ米国の国際問題シンクタンク「大西洋評議会」は5月20日、新たな報告書「原子力産業における米国のリーダーシップ:技術革新と地球規模の戦略的課題」を公表し、米国の原子力部門が世界的に活躍することは、原子力の民生利用と軍事利用における相互連携や対外政策など、米国が国家安全保障を確保する上で非常に重要との見解を表明した。
同評議会グローバル・エネルギー・センターが2018年に招集したタスク・フォースがとりまとめたもので、米国内で既存の原子力発電所を維持・拡大することや、革新的技術の開発を促すような規制環境の整備を勧告。
また、原子力関係の輸出についても、促進していくべきだと訴えている。
同報告書によると、米国の民生用原子力産業は国内総発電量の約20%を賄うとともに、無炭素電源による発電量では大半を占めるなど、米国の安全保障上、極めて重要な戦略的資産。
サプライ・チェーンは米軍の空母や潜水艦にも原子燃料や機器を供給しており、国内原子力産業に官民の研究所や大学、電力会社、機器・サービス供給企業などを含めた科学複合体は、米国における技術革新能力の支柱とも言うべき科学技術の専門的知見を備えている。
米国の原子力産業はまた、世界中の原子力発電所に対する原子燃料・機器の供給など、輸出による収益源であることを示している。
原子力輸出は、原子力発電所の安全運転を保証する国際的基準の維持という点で、大きな役割を担っているほか、原子力貿易を通じた他国との長期の深い結びつきは、世界の核不拡散体制における米国のリーダーシップも強化。
米国内においては、エネルギー・ミックスの全体的な多様化に貢献するだけでなく、電力供給の信頼性増強にも深く関わっているとした。
同報告書はさらに、国際的な原子力安全や核不拡散体制、民生用原子力発電において、米国が過去数十年にわたり世界のリーダー的立場を担ってきた事実に言及。
同盟国の民生用原子力技術開発に協力する際もこのような役割を果たしてきたが、国内の既存の原子力発電所では早期に閉鎖されるものが後を絶たない。
また、世界で建設されている原子炉の6割以上を中国とロシアが供給するなど、両国が国内外で展開する意欲的な原子力プログラムにより、米国のリーダーシップは大きく揺らいでいる。
このような状況に対応するため、タスク・フォースは主に次の4分野――(1)米国内の既存原子力発電所の維持、(2)先進的原子炉の開発と商業化、(3)世界市場における原子力輸出と競争、(4)原子燃料の供給と安全確保、核不拡散の強化――について、米国政府や議会当局、外部の専門家らと協議した。
報告書の主な結論として、米国は既存の原子力発電所を維持して、その運転と核不拡散に関わる内外の基準を遵守する一方、次世代原子炉の開発と実証・建設を通じてリーダーシップを奪還するという、確固たる国家的ミッションを担うべきだとした。
同報告書の主張としては、米国の原子力産業界が将来的に成長して技術開発を進めれば、安全・セキュリティや経済、環境などの面で多大な恩恵が米国にもたらされ、一層高い国際競争力を得ることにもなる。
国際的なリーダーシップを取り戻すには複数年の持続的努力が必要なため、この国家的ミッションは早急に実施されねばならない。
同タスク・フォースはまた、原子力を米国の国家安全保障戦略に含めるべきだと訴えている。
トランプ大統領は今のところ、民生用原子力部門で大きな戦略や政策を打ち出しておらず、この問題に関する指示やリーダーシップ、大統領府が主導する省庁間の協力プロセスなどが緊急に必要。
このためタスク・フォースは、大統領が国家安全保障会議や国家経済会議などの機関に指示を出し、官民の連携努力を促進するとともに重要措置に関する合意が形成されるよう、レベルの高い省庁間連携を組織することを勧告。
ここでは、以下の3点が主要目標になるとした。
すなわち、
(1)国内の原子力発電設備を維持・拡大し、民生用原子力部門とそのサプライ・チェーン、研究基盤についても温存と強化を図る。
(2)新技術の開発促進につながるような環境を創出する。
(3)原子力輸出を促進する。
(2)については具体的に、先進的原子炉に対する規制と許認可プロセスの改良・合理化、連邦政府による先進的原子炉支援を増強し、発電税控除(PTC)制度における制限容量を引き上げ・撤廃することや、連邦政府機関が締結する電力購入契約(PPA)の期間延長、などを挙げた。
また、(3)に関しては、米国輸出入銀行(USEXIM)や新たに設置された米国開発投資公社(USDFC)を通じて、連邦政府が原子力輸出に競争力を持たせるための財政支援を行う、などとしている。
このようなタスク・フォース提案を採用することにより、米国の広範な経済・エネルギー政策が補完され、様々なエネルギー技術やサービスの商業化等が進展すると同タスク・フォースは明言。
高度な脱炭素化を目指す国においても、米国は十分な競争力を得られるとした。
途上国などは特に、2040年までに拡大する世界の電力需要量の85%~90%を占めると予想されていることから、米国はこのような好機を捉えるため、新しい原子力発電システムの建設ではコストの削減と設置期間の短縮が可能になるよう、長期的に取り組まねばならない。
原子力の技術革新プロセスには複数の不確定要素が内在しているが、そうしたリスクを上回る恩恵として、米国と世界の経済が成長する可能性や環境面での利点、技術開発競争における米国の先行という国家安全保障上の重要性が指摘されるとタスク・フォースは強調している。
(参照資料:大西洋評議会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:一般社団法人日本原子力産業協会】
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