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[英国] エンジニアリング企業、政府のCO2実質ゼロ化目標達成に向け原子力等の重要性訴える

2020年2月19日

英国を本拠地とする世界的建設エンジニアリング企業のアトキンズ社は、このほど「CO2の実質ゼロ化に向けて」と題する報告書を公表し、国内すべての温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに実質ゼロにする英国政府の目標を達成するには、国内エネルギー・ミックスに原子力や二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)等が含まれるよう改革することや、そのための大規模投資が必要になると英国政府に訴えた。
同社は、EDFエナジー社がサフォーク州で進めているサイズウェルC原子力発電所(160万kW級のPWR×2基)建設計画で、建設作業の最初のプログラムとなる開発準備基本設計契約を昨年7月に受注したほか、日立製作所が凍結したウィルヴァ・ニューウィッド計画(135万kWの英国版ABWR×2基)では、支援企業の1つとして近隣海底の調査などを行っていた。
今回のレポートで同社は、近年世界で進展中のCO2排出抑制努力だけでは、世界の平均気温が人々の生活様式や安全性に影響するレベルまで上昇するのを食い止めることは出来ないと指摘。
このまま行けば、2100年までに平均気温は3.2度C上昇するとの国連環境報告の見方を、改めて提示している。
英国では昨年6月、世界主要7か国の中では初めて、国内GHG排出量の実質ゼロ化を法的拘束力のある目標として掲げた法案が可決・成立した。
地球温暖化がもたらす破壊的な影響の根拠と各国の政治的な約束が明らかになるなか、GHG排出量は今後も増加し続けると同社は予測。
破壊的影響の根拠や関連のデータが蓄積されるにつれ、人類がこれまで取ってきたアクションに限界があることが分かっており、小出しの対応では最早、破壊的影響を抑えるには不十分だとした。
このため同社は今回の報告書を通じて、英国による実質ゼロ化の目標達成を妨げる技術的要素をどのように解決すべきか、詳細な技術レポートや一連のブログ記事により英国のエネルギー・ミックスを考察し、同社の考え方を具体的に説明している。
同社によると、英国は地球温暖化への対応政策やアクションで世界のリーダー的役割を果たしており、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという法的な約束の下、地球温暖化のリスクに効率的に対応するため、先進各国の誓約すべてを統率し続ける方針。
今後数か月間でエネルギー・システム開発における既存の中心政策を補完し、2020年の早い時期にインフラ部門や輸送部門にも焦点を当てたいと述べている。
同社は今回の報告書で、英国のエネルギー・システムで2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化することは可能であるが、エネルギー・システムの構造変革で柔軟なアプローチを採るべきだとしており、現時点で2050年以降の最終的なシステムを決定することは難しいと指摘。
今後数年間の判断でCO2の実質ゼロに向けた市場の枠組が設定されるため、あらゆる選択肢はオープンにしておかねばならないとした。
次に、CO2を実質ゼロ化したエネルギー・システムは構造が高度に複雑になるため、効果的なバランスを保つことが重要であり、政府の介入なしで合理的なシステムを維持することは難しいと説明。
発電やインフラ、輸送の各部門にわたり2050年のエネルギー・システム全体を計画・合理化するため、「エネルギー・システム・アーキテクト(ESA)」のような機関を創設する必要があるとしている。
このようなエネルギー・システムの電源として、同社が最初に言及しているのが原子力で、英国をCO2排出量実質ゼロに導く上で、クリーンさや信頼性の高さなど原子力が果たす役割は重要だと強調。
国内の天然ガス生産が先細るなか、原子力は唯一、低炭素な電力供給を確実に約束できるとした上で、英国政府は原子力発電の開発戦略に一層重点的に取り組む必要があるとした。
同社はまた、原子力発電所の建設にともなう資金の調達やリスクの軽減で、革新的な手法を開発すべきだと断言。
原子力は技術面のリスクは小さいものの、近年の資金調達モデルには大きな問題があると述べた。
英国では現在ヒンクリーポイントC原子力発電所を建設中であり、サイズウェルCとブラッドウェルB原子力発電所計画も含めると、合計840万kW分の計画が進展中だとしている。
(参照資料:アトキンズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月13日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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