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[世界] IEA事務局長:「コロナウイルス危機に際しすべての発電オプション維持が重要」

2020年4月8日

国際エネルギー機関(IEA)のF.ビロル事務局長は3月22日に「LinkedIn」に投稿し、「新型コロナウイルスがもたらした危機によって、電力の供給保証がこれまで以上に重要欠くべからざるものであることが再認識された」とコメントした。
原子力発電の設備容量に関しても「確実な電力供給を支える重要要素」と位置付けており、「電力供給保証に対する貢献など、様々な電源がもたらす恩恵に見返りを与えられるような市場を政策立案者が設計する必要があり、これによって実行可能なビジネスモデルの構築も可能になる」と説明。
クリーン・エネルギー経済に移行する中で、あらゆる発電オプションを維持することが重要だと強調している。
ビロル事務局長によると、コロナウイルス危機による経済活動の大規模な途絶は、近代社会がどれほど電力に依存しているか明確に示した。
数百万の人々が自宅に閉じこもってテレワークで仕事をこなし、買い物は電子商取引サイトが頼り。
このようなサービスのすべてが信頼性の高い電力供給によって支えられているが、これを当然のことと思い込んではならない。
アフリカでは今なお、数億もの人々が電力を使用できない環境にあり、病気その他の危険に対し非常に脆弱な状態にさらされている。
我々の生活の中で電力の果たす重要な役割が、今後数年先あるいは数十年先にどの程度大きく拡大・進化していくか、コロナウイルス危機は手がかりを提供している。
多くの経済圏がこの危機に対し強力な封じ込め対策を取っているが、工場や事業活動が停止したことにより電力需要量は約15%低下。
そうした経済圏のなかで、スペインや米国のカリフォルニア州は風力と太陽光の発電シェアが世界でも最も高いが、気象条件が普段と変わらないなかで電力需要が急落すると、これらの発電シェアは通常より高まることになる。
ビロル事務局長は、「需要量が低下すれば発電設備は十分だと見なされがちだが、実際に近年、最も注目された停電のいくつかは需要量が低い時期に発生している」と指摘。
風力や太陽光からの発電量で需要量の大半が満たされていても、電力系統の運用者は日没など電力供給パターンの変化に備えて、その他の電源による発電量を素早く増やせるよう柔軟性を維持しなければならない。
このため、風力や太陽光からの発電シェアが常に高い状態になれば、送電網の安定性を維持することは一層難しくなると説明した。
今回のように、大規模なパンデミックで国全体が封鎖されるような事態においては、欧州の大部分で経済活動が突然停止し電力需要量も低下。
これは、電力系統から柔軟性のある主要電源を取り除くことにもなるため、政策立案者は極限の状況下で柔軟性の高い電源を利用できるか注意深く評価する必要がある。
同事務局長の認識では、現状で多くの電力系統運用者が頼りとしているのは天然ガス(LNG)火力発電所だが、これらが仮に送電システムにおける需要量の調節のみに使われれば、多くのLNG発電所が赤字を出すことになる。
今般のコロナウイルス危機においても、電力需要量が低下したことでこのようなプレッシャーが加わっていると警告した。
ビロル事務局長はまた、「コロナウイルス危機によって、電力関係のインフラやノウハウの持つ重要な価値が明確に示されたが、これらはまた、クリーン・エネルギー技術の台頭で将来の電力システムが変化した場合においても、その信頼性を維持するために政策立案者が何をすべきか等について極めて重要な示唆をもたらした」と指摘。
各国政府は国民の健康上の緊急事態に対応するため適切な策を取っているが、これらの政府はまた電力の供給保証についても警戒を怠らず、市場が乱高下するなかでも生命維持に必要な資産を守らねばならない。
このように異常な事態において人々は、「他のものはどうでも、電力なしではどうにも生きられないのだ」と強調している。
(参照資料:IEAビロル事務局長の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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