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[世界] IAEAの原子力長期予測:「意欲的な見通しのケースで2050年に原子力設備が現在の2倍に」

2020年10月1日

国際原子力機関(IAEA)は9月16日、世界の原子力発電設備の長期的な傾向を地域ごとに分析した最新の年次報告書「2050年までのエネルギー、電力、原子力発電予測」(第40版)を公表した。
R.M.グロッシー事務局長は、「原子力発電は今後も世界の低炭素エネルギー・ミックスの中で主要な役割を果たし続ける」と指摘。
高ケースの予測シナリオでは、2050年までに世界の原子力発電設備容量は現在の倍近くに増大するとしており、「原子力発電を維持・拡大することは引き続き、地球温暖化の影響を緩和する主要な推進力となる可能性が高い」と指摘している。
原子力の設備容量と発電シェア
今年の報告書は、昨年版の予測と比較して数値にそれほど大きな変化はなく、野心的だが妥当と思われる見通しに基づく「高ケース」の場合、世界の原子力発電設備容量は2019年実績の3億9,210万kWが2030年には約20%増えて4億7,500万kWに、2050年には82%増の7億1,500万kWになるとしている。
一方、市場で既存の技術やリソース傾向が持続することを前提とした「低ケース」では2040年に約10%減の3億4,900万kWに低下するものの、2050年時点では下げ幅が若干持ち直して7%ほどとなる。
設備容量は3億6,300万kWに留まると予測している。
高ケースで原子力発電の設備容量が倍化するのにともない、原子力の総発電量も2050年には高ケースで倍以上に増加するとIAEAの専門家は見ている。
見通しでは2019年実績の2兆6,573億kWhが2030年には3兆6,820億kWh、2040年には4兆9,330億kWhと増えていき、2050年には5兆7,620億kWhに達することになる。
ただし、すべての電源の総発電量に占める原子力発電シェアは、高・低両ケースともに2050年まで一定割合を保つ、あるいは若干低下していくとIAEAは予測。
2019年の実績は10.4%だったが、2050年までに低ケースで3ポイント減、高ケースでも1ポイント以下とは言え低下が見込まれる。
IAEAによれば、高ケースで原子力発電シェアを2050年までに11%に向上させるには、各国が緊急かつ共同のアクションを取る必要がある。
低ケースではまた、総発電量の約6%に低下するかもしれないとしている。
原子力の場合、2016年のパリ協定その他の地球温暖化防止イニシアチブで設定された目標のお蔭で、開発への支援が期待できるものの、条件としては(原子力を含む)低炭素でオンデマンド利用が可能な電源への投資を促すエネルギー政策や市場構造が不可欠となる。
IAEAの報告書は、原子力にはこのような利点に加えて電力消費量の増加や大気汚染問題、エネルギー供給保証、その他の電源による発電電力の価格変動なども解決できる可能性があると指摘している。
閉鎖予定の原子炉と新規原子炉
IAEAはこのほか、閉鎖される原子炉と新規原子炉の見通しについても言及している。
世界では今や稼働中原子炉の三分の二で運転開始後30年以上が経過。
これらは近い将来閉鎖されるため、その分を相殺する相当量の新規設備が必要になると強調。
実際のところ、2030年頃あるいはそれ以降に閉鎖が予定されている多数の原子炉のリプレースについては、北米や欧州では特に不確定要素が残る。
こうしたことから、経年化管理プログラムや運転期間の長期化を実施する原子炉の数は次第に増えつつあるとしている。
高ケースでは閉鎖が予定されている原子炉のうち、いくつかでは運転期間が延長されることから、報告書は2030年までに実際に閉鎖される設備容量は2019年時点の約12%に過ぎないと予想。
結果として、この年までに(新規建設分から閉鎖分を差し引いて)正味追加される容量は約8,000万kW、2050年まででは2億kW以上になる。
また、低ケースにおいては2030年までに既存原子炉の三分の一が閉鎖されることを前提とする一方、新規建設分として約8,000万kW分が追加される。
その後、2050年までの期間は、新規建設分と閉鎖される容量はほぼ同じになると報告書は予想している。
(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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