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【国際】 最終処分国際ラウンドテーブルの報告書が公開

2020年10月6日

   OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)から、最終処分国際ラウンドテーブル(以下、ラウンドテーブル)の報告書 “International Roundtable on the Final Disposal of High-Level Radioactive Waste and Spent Fuel” が8月4日に公開された。本ラウンドテーブルは、2019年6月に行われたG20エネルギー環境大臣会合において、我が国の経済産業大臣、米エネルギー省副長官、OECD/NEA事務局長、カナダ政府、フィンランド政府、フランス政府、ロシア政府が立ち上げに合意する旨を表明したものである。ラウンドテーブルの目的は、①最終処分方針の開発を進めるための国際協力の強化、②最終処分に関する開発状況と実施経験、知識の共有、③関係国間の潜在的な二国間または多国間の協力(研究開発、人材交流)の促進であり、日米が共同議長となり、15か国のハイレベル政府代表が出席し、2019年10月と2020年2月の二回にわたって開催された。
   報告書を受け、資源エネルギー庁は概要版を作成しており、報告書のポイントとして、地層処分事業における政府の役割、ステークホルダーとの対話活動や意思決定プロセス、技術分野における国際協力等について表1の通り示している。

表1 資源エネルギー庁が概要版にて示した報告書のポイント

出所:経済産業省資源エネルギー庁資料より、三菱総合研究所作成。

   今回の報告書では、ステークホルダーとの対話活動や意思決定プロセスに関して、段階的かつ柔軟で透明性が確保されたアプローチが重要であることが強調された。また、国際協力による知見の共有を通じて、他国も同様の課題に類似のアプローチを用いて取り組んでいることを示すことが、国内ステークホルダーからの信用と信頼を得る上でも重要であることが明らかにされた。
   日本における地層処分場のサイト選定プロセスは法律(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)に基づいて、文献調査、概要調査、精密調査の段階的なアプローチを採用しており、各段階で調査を継続かするか否かの意思決定を行うプロセスが確保されている。サイト選定で先行する複数の国々でも同様の枠組みがとられている。既にサイトが決定しているスウェーデン、フィンランドでは約20年かけて段階的に調査を実施してサイトを決定した。選定が進むカナダにおいても、2019年11月に候補自治体を5自治体から3自治体へ、さらに2020年1月には2自治体へと絞り込んでおり、段階的なアプローチがとられている。このように現在の日本の取り組み方針は海外においても十分に前例があり、その有効性は本ラウンドテーブルでも評価された形である。引き続き、先行する海外事例を参考にしながらも、日本の地域性を踏まえた対話活動、意思決定プロセスが継続されていくことが必要であろう。
   また報告書では、サイト選定プロセスにおいては、若い世代や原子力以外の専門家をはじめとした全てのステークホルダーによる幅広い参加が重要であることを述べている。現在、北海道の寿都町がサイト選定プロセスに関心を示しており、それに対して賛否両論があることは当然だが、全国的な議論の一石を投じた寿都町の決断には公平な評価がなされるべきであろう。さらに、同じく北海道の神恵内村においても、寿都町に続く形で文献調査への応募が検討されていると言われており、メディアによる取り上げによって、国民の関心が高まっていることは確かだ。放射性廃棄物の処分事業は国全体として取り組むべき事業であることは明白だ。これを機に、特定の自治体だけが向き合うのではなく、若い世代や原子力以外の様々な専門家を巻き込んで、多種多様な意見を出し合いながら進めることが、処分事業の理解にとって重要であろう。この時に、政府も文献調査は「処分場の受け入れを求めるものではない」と明らかにしているように、決して文献調査と処分場受入れとを直結して考えないように注意しつつ、当該地域の意見を尊重するとともに、より広い層に処分事業への理解を深めていくことが重要である。
   今後国内ではサイト選定プロセスに向けた動きが始まることが予測されるが、サイト選定プロセスには約20年を要する見込みである。地層処分事業への社会的信頼性を高めるためには、本ラウンドテーブルのような各国のベストプラクティスの共有や、国際共同研究のような形での技術的協力を国際的に実施し、他国での取り組みを国内でも共有し、適宜反映しながらサイト選定プロセスを進めていくことが、重要である。

【参考文献】
●OECD/NEA、International Roundtable on the Final Disposal of High-Level Radioactive Waste and Spent Fuel: Summary Report, 2020年8月4日、http://www.oecd-nea.org/rwm/pubs/2020/7529-roundtable-radioactive-waste.pdf
●経済産業省資源エネルギー庁、最終処分国際ラウンドテーブルの報告書-ハイレベル政府代表からの国際協力に関するメッセージについて、2020年8月21日、https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200821003/20200821003-1.pdf
●経済産業省資源エネルギー庁、複数地域での文献調査の実施に向けた当面の取組方針について、総合資源エネルギー調査会放射性廃棄物ワーキンググループ第35回会合資料1、令和元年11月、https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/hoshasei_haikibutsu/pdf/035_01_00.pdf

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