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[世界] WNAの新事務局長、エネルギー供給保証の強化で原子力への投資促進を提言

2020年11月17日

世界原子力協会(WNA)の新しい事務局長として10月末に就任したS.ビルバオ・イ・レオン氏は同月28日、「エネルギー供給システムの脱炭素化に向けた近年の試みは効果が無かった。今こそ、新たな原子力設備に投資すべき時だ」と訴えた。
これは、10月26日から30日までシンガポールで開催されていた「国際エネルギー週間2020」で同事務局長が表明したもので、「新型コロナウイルスによる感染が世界的に拡大(パンデミック)したことで、(原子力のように)低炭素で強靱性があり、料金も手頃なエネルギーシステムへの投資を検討するチャンスが世界各国にもたらされた」と説明している。
ビルバオ・イ・レオン事務局長の就任は、同職を約8年間勤めたA.リーシング前事務局長の退任の意向とともにWNAが9月15日付けで公表。
10月5日以降、約1か月の引き継ぎ期間が設けられていた。
スペイン出身の同氏は、マドリード工科大学で機械工学の学士号とエネルギー技術の修士号を取得。
米国のウィスコンシン大学では原子力工学と工学物理学で修士号と博士号を取得した。
その後、原子力産業界や学術界、国際機関など様々な部門の職歴があり、米国のドミニオン・エナジー社では原子力安全分析エンジニアとして勤務したほか、バージニア・コモンウェルス大学では機械・原子力工学部の准教授を務めた。
また、国際原子力機関(IAEA)では水冷却炉技術開発ユニットの技術ヘッドを、WNAで事務局長に就任する直前は経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)で原子力技術開発・経済課の課長を務めていた。
「国際エネルギー週間2020」の発表の中で同事務局長は、2000年に世界では総発電量の約36%を低炭素電源が発電したものの、これは2017年実績とほぼ同じであったと指摘。
これは、クリーンエネルギー社会の実現に向けて人々が積み上げてきた努力が、脱炭素化という目的の達成にあまり貢献できなかったことを明確に示している。
世界では様々な再生可能エネルギーに巨額の投資が行われた一方、その効果はほんの少しだけだったと述べた。
同事務局長によると、低炭素電源としての原子力の発電量は世界でも2番目となるが、地球温暖化防止や持続可能な経済という目標を達成するには、世界全体のエネルギーミックスのなかで原子力による発電シェアを拡大する必要がある。
「各国経済はパンデミックで大きな痛手を被ったが、今やすべての国が純粋に持続可能な世界の構築に向けて、チャンスが得られるような政策的対応を慎重に模索している」と述べており、低炭素な上に回復力があり、価格も手ごろなエネルギー・電力インフラをコスト的にも効果のある方法で開発するチャンスだと指摘。
その上で、「原子力はパンデミック後の経済を回復させる際、中心的役割を果たすことができる」とした。
同事務局長は新型コロナウイルスが引き起こした危機への直近の対応として、また、地球温暖化や大気汚染、エネルギー利用へのアクセスといった、一層規模の大きい慢性的課題で将来的に危機が発生するのを防ぐためにも、各国政府が原子力発電に投資を行う絶好の機会であると説明。
このような投資は社会的に責任の大きいものとなり、一層クリーンで将来的に持続可能な社会・経済を形成する一助になると強調した。
同事務局長の認識では、原子力に投資することで世界のエネルギー供給保証が強化されるとともに、ほかの部門の脱炭素化にも有効な低炭素な熱や水素が供給されるなど、エネルギー供給全体への貢献が可能である。
また、新しい原子力発電設備の建設は、1970年代や80年代の傾向から見ても速やかに実行することができるとしており、同事務局長は「今回のように、低炭素な電力を緊急に増やさねばならない時期には非常に大きな助けになる」と表明している。
(参照資料:WNAの発表資料、WNAの10月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」、原産新聞・海外ニュース、ほか)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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