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[イギリス] 英財務省、国家インフラ戦略で原子力の価値を強調

2020年12月14日

英国政府の財務省は11月25日、「国家インフラ戦略-より公平、迅速かつ環境に優しく」を公表し、英国が国家としてレベルアップを図るとともに連合王国としての結束を強め、2050年までにCO2排出量実質ゼロに移行するためのインフラ計画を明らかにした。
この中で原子力発電については、「実証済みの技術を用いた費用対効果の高い電源であり、再生可能エネルギーの補完も可能な信頼性の高い低炭素電源」と説明。
今月18日に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」にも明記したように、英国政府は今後、大型原子炉建設や先進的原子力研究開発への投資に最大で5億2,500万ポンド(約728億円)投入すると約束している。
発電部門のインフラ戦略
財務省は、英国全体のCO2排出量のうち発電部門の排出シェアが過去10年間に27%から12%まで減少したことに触れ、主な成功要因は再生エネ源の拡大と石炭火力発電所の削減だったと指摘。
民間部門による投資が再生エネの発電コストを大幅に低下させる一方、数多くの補助金制度や市場改革が再生エネへの投資を着実に増加させたとした。
2014年以降、30%だった石炭火力への依存度も1%以下に下がっており、英国は2050年までに石炭火力発電所の全廃を目指す方針である。
英国政府はまた、脱炭素化を進めるにあたり、これまで通り電力の安定供給を最優先事項としており、この世代初の原子力発電所となるヒンクリーポイントC発電所(172万kWのPWR×2基)を建設中。
今世紀後半に運転が開始されれば、低炭素で信頼性の高い電力を年間約600万戸の世帯に供給するのとほぼ同量、発電することになる。
財務省によれば、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成するには、発電システムを事実上「CO2フリー」なものとし、輸送部門の電化等にともなう追加の電力需要に対処しなければならない。
このために必要となる電力量の大部分を低コストな再生エネで供給することになるが、その間欠性を補うには一層信頼性の高い電源として、原子力や二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)、水素燃焼等の機能を持つ発電所が将来的に必要。
このため英国政府としては、民間部門の資本投資が確実に継続されるよう保証するとしている。
原子力発電
今回の戦略の中で、財務省はこれまで長い間、原子力が発電部門で重要な役割を果たしてきたと明言。
一定期間内や予算内での建設が可能なら、原子力は今後も同様の役割を果たし続けるし、ヒンクリーポイントC原子力発電所では、パンデミックの最中も新たな作業環境の下で建設工事が続けられている。
英国政府としては、電力消費者や納税者にとって明らかに費用対効果が高く、関係する承認すべてが得られることを条件に、大規模な原子力プロジェクトを進めていく。
「10ポイント計画」では今後、大型原子炉や先進的原子力研究開発に大規模な投資を行うが、このうち最大3億8,500万ポンド(約534億円)は、小型モジュール炉(SMR)や先進的モジュール炉(AMR)の開発に向けた「先進的原子力基金」に投入することになる。
英国政府はまた、新規原子力発電所建設プロジェクトに対する資金調達で、「規制資産ベース(RAB)モデル」の実行可能性調査の結果を昨年、パブリック・コメントに付した。
現在はコメントへの対応を取りまとめているところで、近いうちに報告書として公表する予定。
RABモデルの検討と同様、英国政府は引き続き建設期間中に英国政府が財政支援する可能性を検討していくが、ここでも明確な費用対効果の高さが条件になるとしている。
(参照資料:英財務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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