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[欧州] 仏大統領と東欧6か国の首相、EUの温暖化防止での原子力の役割を強調

2021年4月7日

欧州連合(EU)に加盟する仏国のE.マクロン大統領、および東欧6か国の首相は3月19日、EUの執行機関である欧州委員会(EC)のU.フォンデアライエン委員長らに連名で書簡を送った。
  この中で、EUの地球温暖化防止政策で原子力が果たす役割を強調するとともに、原子力を含むすべての低炭素エネルギー技術が平等に扱われることを要請している。
この共同書簡に署名したのは、いずれも国内で原子力開発利用を積極的に推進している7か国の首脳。
マクロン仏国大統領を筆頭に、チェコのA.バビシュ首相、ハンガリーのV.オルバーン首相、ポーランドのM.モラエビツキ首相、ルーマニアのF.クツ首相、スロバキアのI.マトビッチ首相、およびスロベニアのJ.ヤンシャ首相である。
宛先はECの委員長に加えて、F.ティマーマンス筆頭副委員長とM.マクギネス金融安定担当委員、およびK.シムソン・エネルギー担当委員となっている。
7か国の首脳はまず、EUが2050年までに気候中立(=CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロの状態)を達成するという目標を掲げたことを高く評価。
しかし、EUの加盟各国にはそれぞれの事情があり、この目標の達成に向けて国内政策を立案する際、方法選択の余地がほとんどないと憂慮している。
EU域内において原子力はCO2をほとんど排出しない技術の一つと認められるべきだが、加盟国それぞれのエネルギー政策の中で原子力開発利用を進めるのも、進めないのも自由である。
また、原子力は地球温暖化との戦いで欠くことのできない重要な貢献をするにも拘わらず、開発利用国の原子力部門は他の多くの加盟国から異議を唱えられている。
7か国首脳によると、低炭素なベースロード電源である原子力は、再生可能エネルギーとの相乗効果により再エネ開発の比率を引き続き高めていくことに貢献できる。
原子力はまた、クリーンな水素を手頃な価格で製造するのに非常に有望と見られているため、エネルギー部門を有機的に運営する上で重要な役割を果たすことも可能。
さらには、新型コロナウイルスによる感染が終息した後、経済不況の中で原子力は安定した質の高い雇用を多数創出できるとしている。
これらを踏まえて7か国の首脳は、EUの政策決定の中で原子力がますます除外されているため、加盟国がエネルギー源を自由に選択する権利等も近年は非常に制限されているとの懸念を表明。
2050年以降も商業的に利用可能なエネルギー源の選択では、原子力発電所を新設する適切な体制が失われたまま安全性の強化や廃止措置活動を進めていけば、原子力は徐々に衰退していき、EU域内の多くの国で質の高い雇用が多数失われていく。
これは原子力の新設のみならず、水素生産のように既存炉活用のための投資にとっても非常に大きな懸念材料だと指摘した。
その上で7か国首脳は、「EU加盟国は皆、EU法に全面的に従って政策選択をしているものの、原子力をEUの地球温暖化防止政策から排除することなく、他の発電技術と真に平等な取り扱いを確保したいという我々の緊急要請はまた別の議論になる」と強調。
今や、EU加盟国の約半分が原子力発電を利用し、最も厳しい安全基準を満たしつつ域内における低炭素電力の半分近くを供給していることを心に留め置くべきだと指摘した。
また、ECに対しては2050年までの気候中立達成に向けて、特定の技術に固執することなく貢献可能な方法すべてを地球温暖化防止エネルギー政策に取り入れることを要請。
中心となるグリーン事業の分類投資(EUタクソノミー)にも原子力を含めるなど、あらゆる政策の決定において低炭素な発電技術はすべて対等に取り扱われねばならないと訴えている。
(参照資料:7か国の共同書簡、ポーランド政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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