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[世界] IAEAの新しい協働研究、原子力と再エネのハイブリッド・システムで技術評価

2021年6月8日

国際原子力機関(IAEA)は5月20日、原子力と再生可能エネルギーを統合したハイブリッド・エネルギー・システム(HES)について技術面の評価や合理化を行うため、新たな「協働研究プロジェクト(CRP)」を来年1月から3年計画で開始すると発表した。
原子力と再エネは現時点で利用可能な低炭素エネルギー源としては最も重要であるものの、統合した際の相乗効果は未だ十分に活用されておらず、得られる利益や課題に関する調査がようやく始まったところである。
IAEAのCRPは、IAEAが公募したテーマに加盟国の研究機関が参加し、情報交換を行ったり協調体制を取り、それぞれの研究を進めるという活動。
今回のCRPでは、原子力と再エネのHESについて、設計やシステム合理化のためのモデリングやシミュレーション、分析の方法に関する加盟国の既知知識を一層向上させ、同HESの商業化に向けてデータベースの構築や分析活動を支援する。
IAEAはこれまでも、加盟国の原子力発電所で十分な性能や安全性、信頼性が確保出来るよう、様々な支援を提供してきたが、今回は加盟国の幅広い部門で脱炭素化が持続的に進むことを目的に、非発電分野への原子力の適用方策を探る。
また、十分な情報を獲得しながら、エネルギーや地球温暖化、経済の最適化などに関する政策決定が行われることを目指すとしている。
発表によると、原子力や石炭、LNG、水力などの発電システムは一般的に「出力調整可能な」エネルギー源と捉えられており、電力需要の変化に応じて出力を調整できる。
これとは対象的に、風力や太陽光などの再エネはその日の天候や時間帯で出力が変動し易く、加盟各国が持続可能なエネルギー・システムに移行するには、低炭素な発電オプションを合理的に統合するための分析が必要である。
原子力と再エネによるHESでは、それぞれの長所を活用できるようお互いのシステムを連結。
双方の運転モードによって、廉価で信頼性の高い電力を送電網に持続的に供給するとともに、その他のエネルギー消費部門に対しても低炭素なエネルギーを供給することになる。
IAEAはまた、原子力と再エネのHESが未だ新しいものである点を考慮すると、技術面のすべての制約やエネルギー・システムとしての代表的な性能指数を明らかにする必要があると指摘。
これらを適切に特定することで同システムの役割を評価することが出来、現在のみならず将来のエネルギー・システムとして稼働させることが可能になるとした。
今回のCRPでIAEAは具体的に、以下の項目について調査する方針。
すなわち、原子力と再エネのシステムを結合することで既存の原子炉に及ぶ影響の分析状況、今後建設される先進的原子炉や革新的技術を採用した原子炉への影響、そして必要に応じて、エネルギー貯蔵やCO2の補足など、関係するその他の技術に対する配慮、などである。
このCRPで判明した事項は加盟国の間で共有される予定で、共有の場としては、IAEAの訓練ワークショップやケース・スタディへの参加、エンジニアや科学者としての学位取得を目指す女性や新人の訓練研究の場などが考えられる。
IAEAはCRPの研究合同会議・初会合を、2022年3月に開催する予定である。
(参照資料:IAEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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