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[欧州] 欧州議会の議員約90名が原子力をタクソノミーに含めることでEC幹部に請願
2021年7月14日
欧州議会に所属する約90名の議員は7月8日、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)の幹部5名宛てに書簡を送り、EUタクソノミーにおける投資対象の分類規制(EUタクソノミー規制)の中で、原子力発電を始めとする非化石燃料発電技術への投資に大きな不利益が生じることがないよう強く要請した。
EUタクソノミーは、EUが2050年までにCO2排出量が実質ゼロ化の達成を目指すにあたり、環境上の持続可能性を満たした、真にグリーンな事業に正しく投資が行われるよう定義づける枠組み。
「EUタクソノミー規制」は具体的に、何に対する投資が持続可能な資金調達と言えるか判断するための基準で、2020年6月に欧州議会で可決・法制化されている。
CO2を出さないという点で原子力はクリーンな電源であり、「地球温暖化の影響緩和に十分貢献する」というEUタクソノミーの基準の一つをクリア。
その一方で、放射能による汚染や生態系への影響、放射性廃棄物の処分といった問題があるため、もう一つの基準である「(資源循環や生態系など)他の環境分野に重大な悪影響を及ぼさない(Do No Significant Harm=DNSH)」への適合性については決定的な勧告をしておらず、現時点で原子力はEUタクソノミーに含まれていない。
今回、スウェーデン選出のS.スカイテダル議員を中心とする欧州議会の超党派議員87名は、ECで「欧州グリーンディール」を担当するF.ティマーマンス執行副委員長、「人々のための経済」を担当するV.ドムブロフスキス執行副委員長のほか、エネルギー問題担当のK.シムソン委員と環境問題担当のV.シンケビチュウス委員、および金融問題担当のM.マクギネス委員に書簡を送付した。
議員らはその中でまず、EUタクソノミー規制を法制化に導いたECの努力を称えた上で、「CO2排出量の実質ゼロ化達成に貢献すると分かっているエネルギー源を意図的に無視するだけの余裕はEUにはない」と表明。
原子力がそうしたエネルギー源の一つであることは明らかであるため、いくつかの加盟国では原子力発電設備に対する投資や民間資本の動員という道を選択したが、EUはこのような判断を奨励こそすれ、反対すべきでないと指摘した。
議員らはまた、ECの調査機関である「共同研究センター(JRC)」が今年3月、原子力をEUタクソノミーに含めるべきかという点について、技術的側面の包括的な分析評価報告書を発表したことに言及。
JRCはEUタクソノミーに含まれている他の電源との比較で、「原子力がそれら以上の健康被害や環境への悪影響をもたらすという科学的根拠は見受けられなかった」と結論付けていた。
また、ECの2つの科学的専門家組織も先週、環境上の側面からJRCの結論をほぼ裏付ける報告書を出していた。
このことから議員らは、「欧州議会のみならずEU全体で、地球温暖化に強力なツールを使って真剣に立ち向かうのなら、原子力のように明らかなポテンシャルを持った非化石燃料発電技術を敢えて差別することなどできない」と強調した。
議員らはさらに、「原子力を使用していない加盟国や、その段階的廃止政策を進めている加盟国には明らかな政治的意図があり、専門家による科学的な結論を無視して原子力発電に積極的に反対するようECに働きかけている」と指摘。
「我々としては、ECがそうした働きかけを一蹴し、専門家の助言に従って原子力発電をタクソノミーに加えていく勇気を持ってほしい」と呼びかけた。
議員らによれば、EUタクソノミー規制は「CO2排出量の実質ゼロ化を達成したい」という強い要望や「DNSH」の原則によって導かれるべきもの。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」はかつて、「地球温暖化との闘いの中で原子力は必須の手段」と指摘していたが、ECの専門家組織も今回は同様の結論に到達した。
そうした以上、ECには原子力その他の非化石発電技術への投資であからさまな不利益を生じさせない、公平なEUタクソノミー規制を構築してほしいと訴えている。
(参照資料:欧州議会スカイテダル議員の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:原子力産業新聞】
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