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[ルーマニア] ルーマニアの増設計画に米国が実務協力開始

2021年8月17日

ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は7月30日、米エネルギー省(DOE)のK.ハフ原子力担当次官補代行を団長とする一行がルーマニア側との原子力関係協力で運営会議に参加するため、同国唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ原子力発電所(稼働中の1、2号機は各約70万kWのカナダ型加圧重水炉:CANDU炉×2基)を訪れたと発表した。
ルーマニアと米国の両国は2020年10月、建設工事が中断したチェルナボーダ3、4号機(各70.6万kWのCANDU炉)の完成プロジェクトも含め、ルーマニアの民生用原子力発電部門の能力拡充と近代化に米国が協力するため政府間協定を締結した。
今年6月にルーマニア議会が同協定を批准したことから、SNNのエネルギー戦略に沿って、3、4号機がそれぞれ2030年と2031年に運転開始できるよう、今回DOEの代表団が実質的な協力活動を開始したもの。
SNN株主総会が承認した同戦略によると、3、4号機は以下の3段階で完成させる予定。
すなわち、①24か月間の準備段階に契約を締結し、米国から技術面や法制面、および財政面の支援を受けるための準備を進める、②18~24か月間の予備的作業段階で、EPC(設計・調達・建設)契約企業が同プロジェクトのエンジニアリング作業を実施し、安全性関係の文書を準備する、③その後は69~78か月の建設段階に入り、工事を実行する。
また、米国との協力を通じて、ルーマニアは多国籍の建設チームと米国の技術や専門的知見を活用する機会を確保する。
チェルナボーダ1号機については、改修工事を実施する計画である。
SNNのC.ギタCEOは、「我が国はレジリエンス(耐久性)と持続可能性を兼ね備えたエネルギーシステムを必要としており、原子力発電設備を拡張することでルーマニアはクリーン経済に移行しつつ、これらの必要性を満たすことができる」と指摘。
チェルナボーダ発電所で3、4号機を完成させて、社会経済の成長やサプライチェーンの開発を促すとともに、脱炭素化にパラダイム・シフトするための要件を満たしていくとした。
具体的には、間接雇用も含めて1万9,000名もの雇用を産業界で創出し、新しい世代の専門家を育成。
これと同時に、合計4基のCANDU炉で年間2,000万トンのCO2排出を抑制すると強調している。
チェルナボーダ3、4号機は1980年代半ばに本格着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊により、進捗率がそれぞれ15%と14%のまま建設工事が停止した。
これらを完成させるという政府決定を受け、SNNは2009年にプロジェクト会社を設置したものの、同社への出資を約束していた欧州企業6社は経済不況等によりすべて撤退した。
その後、2011年に中国広核集団有限公司(CGN)が出資参加の意思を表明したことから、SNNはCGNと2015年11月に両炉の設計・建設・運転・廃止措置に関する協力で了解覚書に調印した。
2019年5月にはプロジェクトの継続に関する暫定的な投資家協定を締結したが、2020年1月にルーマニアのL.オルバン首相は地元メディアに対しCGNとの協力をキャンセルすると表明。
同年6月には、この協力関係から撤退したことが報じられた。
首相のこの判断は、当時の米トランプ政権が中国との対決姿勢を強めたことから、米国との戦略的パートナーシップに配慮したものとみられている。
(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

【情報提供:原子力産業新聞】 

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