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[英国] 英国の分析企業、「脱炭素化に向けた水素製造に原子力が必要」と指摘

2021年10月6日

英オックスフォード大学の教授や経済学者が中心となって設立したエネルギー関係の分析・コンサルティング企業、オーロラ・エナジー・リサーチ社は9月25日、「CO2排出量を実質ゼロ化する経済における水素製造の脱炭素化」と題する分析調査報告書を公表した。
英国が地球温暖化の防止目標を達成し、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化した低炭素なエネルギー社会に移行するには、再生可能エネルギー(再エネ)と原子力の両方を活用して製造した水素が一助になると指摘。
これにより英国は、移行にともなう使用燃料源の中で化石燃料への依存度を軽減できると分析している。
オーロラ社が作成した報告書は、英国政府が8月に「水素戦略」を発表したのに続くもの。
同戦略では原子力を利用したクリーン水素の製造に様々なオプションが存在するとした一方、コスト面や競争力の関係で原子力がもたらす貢献を数値モデル化していなかった。
今回の報告書は、ウラン濃縮役務の供給大手であるURENCO社の委託を受けてオーロラ社が作成しており、必要なデータは、英国のシンクタンクであるルシード・カタリスト社と国際原子力機関(IAEA)、およびフランス電力(EDF)が追加提供した。
分析調査の実施背景としてオーロラ社は、「将来の水素製造部門に関して、これまでに行われた調査の多くが再エネや化石燃料の発電電力を用いて、水電解で水素製造することに重点を置いていた」と述べた。
原子力は近年、建設費が高騰し新設プロジェクトが保留となったことなどから、水素エネルギー社会に加えようという議論はあまり行われなかった。
しかし、今回の報告書でオーロラ社は、「低炭素な電解水素を供給するビジネス・モデルや新しい原子力技術に対する政策的支援によって、これらのコストをどのようにして削減できるか、また、再エネと原子力を活用した水素製造がどのような恩恵をもたらすか分析調査した」と説明している。
その結果、判明した主な事項として、オーロラ社は以下の点を指摘した。すなわち、
•化石燃料への依存度を軽減し脱炭素化を迅速に進めるには、再エネと原子力の両方が発電と水素製造のために必要。これにより、2050年までの累積CO2排出量は8,000万トン削減することができる。
•「CO2排出量の実質ゼロ化」に必要とされる水素量を化石燃料抜きで確保するには、再エネと原子力で製造した電解水素が不可欠。輸送や産業部門ではベースロード水素を高い割合で必要とするため、原子力で製造した大量の水素を除外した場合、すべての想定シナリオで、2050年までに35%以上を化石燃料で製造した低炭素水素に依存することになる。
•再エネと並んで、水素製造用の電解槽を敷地内に備えた大容量の原子力発電所では、システム全体の経費を2050年までに6~7%、すなわち400億~600億ポンド(6兆400億~9兆600億円)削減できるため経済効率が高い。電解槽の併設により、原子力発電所では一層柔軟性の高い発電が可能になり、変動し易い再エネの発電量にも対応することができる。
•水素製造も行うという原子力発電の新しいビジネス・モデルによって、原子力はコスト面の競争力が高く、CO2を排出せずに電力と水素の製造が可能なエネルギー源となる。これに加えて、小型モジュール炉(SMR)や第4世代の先進的原子炉を活用した場合、脱炭素化が加速されるとともに化石燃料の使用量削減が可能になる。

(参照資料:オーロラ・エナジー・リサーチ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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