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[カナダ] カナダの4州、SMRの戦略的開発・建設計画を共同策定
2022年4月6日
カナダのオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州、およびアルバータ州の4州は3月28日、小型モジュール炉(SMR)を開発・建設していくための共同戦略計画を策定したと発表した。
この戦略計画では、各州の経済成長や人口増加に対し、安全で信頼性の高い無炭素なエネルギーをSMRがどのように提供していくかを集中的に取り上げており、将来カナダのSMR技術や専門的知見を世界中に輸出していくための新たな機会を模索。
これらの州ですでに進展中の3つの方向性にSMRの建設を進めていくとしており、2026年までにチョークリバーで小型の高温ガス炉を完成させる計画や、2028年までにダーリントン原子力発電所敷地内で送電網への接続が可能なSMRを完成させる計画などを明記している。
同戦略計画の元になっているのは、オンタリオ州とNB州、およびサスカチュワン州の3州が、2019年12月に締結したカナダ国内での多目的SMR開発・建設するための協力覚書に基づき、それぞれの州営電力に委託して実施した「SMR開発の実行可能性調査(FS)」の結果である。
アルバータ州が2021年4月にこの覚書に加わった際、同時に公表されたFS調査の結果報告書によると、「出力30万kW以下のSMRはカナダのエネルギー需要を満たすのに貢献するだけでなく、温室効果ガスの排出量を削減。
そのクリーンエネルギー技術と地球温暖化との取り組みで、カナダを世界のリーダーに押し上げることが期待される」と結論付けていた。
今回の戦略計画で4州が進める5つの優先対策は以下の通りである。
・送電網に接続可能なSMRとそうでないものの両方について、3つの方向性で複数のSMR技術の開発・建設を推進し、カナダを世界的なSMR輸出国に位置付ける。
・SMR用に適切な規制枠組みが構築されるよう促し、SMR周辺住民の健康と安全、環境を防護しつつ合理的な建設コストと工期を実現する。
・新しいSMR技術の開発に対し、財政面や政策面でカナダ連邦政府の支援を取り付け、カナダ全土でその経済的利益を得るとともにCO2の削減目標達成の一助とする。
・SMR計画に先住民コミュニティを含むカナダの一般市民が参加可能となるよう、機会を創出する。
・SMRから出る廃棄物の盤石な管理計画の策定で、連邦政府や原子力発電所の運転会社と協力する。
最初の優先方策で示された3つの方向性について、戦略計画はオンタリオ州のダーリントン原子力発電所内で、2028年までに送電網に接続可能な出力30万kWのSMRを1基建設すると表明。
後続のSMRを複数サスカチュワン州内で建設するとしており、このうち最初の1基の運転開始時期を2034年に設定している。
ダーリントンでの建設計画については、オンタリオ州営電力(OPG)会社が2021年12月、候補の3設計の中から米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWR型SMR「BWRX-300」(電気出力30万kW)を選定した。
2つ目の方向性としては、第4世代のSMRを2種類、NB州のポイントルプロー原子力発電所敷地内で建設する。
米ARCクリーン・エナジー社製のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)を、2029年までに本格的に運転開始するほか、英国のモルテックス・エナジー社が開発した「燃料ピン型溶融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」(電気出力30万kW)については、2030年代初頭までに商業規模の実証炉を建設する計画である。
3つ目では、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)製の第4世代の小型高温ガス炉「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(電気出力0.5万kW)を、USNC社とOPG社の合弁事業体であるグローバル・ファースト・パワー社が、2026年までにカナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー・サイトで完成させる。
これにより、基幹送電網に接続できない遠隔地域への電力供給や、鉱山での採掘活動におけるSMRの実行可能性を実証するとしている。
今回の戦略計画について、オンタリオ州政府は「我々のSMR開発を世界中が注目しており、SMR技術の研究開発の世界的センターとしてのわが州の名声はますます高まっていく」と指摘した。
また、「SMRは信頼性の高い廉価なクリーンエネルギーを生み出せるため、新たな雇用の創出に貢献するほか、クリーンエネルギーにおけるカナダの優位性を一層促進、オンタリオ州では州の全域で雇用を生み出す新たな投資が確保される」と強調している。
(参照資料:オンタリオ州、ニューブランズウィック州、サスカチュワン州、アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:原子力産業新聞】
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