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[スウェーデン] スウェーデン首相 原子炉の新設に向け法改正を提案
2023年1月19日
昨年10月にスウェーデンで発足した中道右派連立政権のU.クリステション首相は1月11日、環境法に記されている原子力関連の制限事項の撤廃を提案した。
多くのサイトで原子炉の新設を可能にすることが目的。
現行法では、新たなサイトでの原子炉建設が禁止されているほか、同時に運転できる原子炉の基数も10基までに制限されている。
これらを撤廃することで、クリステション政権は中道左派の前政権が提唱していた「2040年までに100%再生可能エネルギーのエネルギー供給システムに移行」を、「(再エネのみに限定しない)非化石燃料100%のシステム」に変更。
小型モジュール炉(SMR)も含めた数多くの原子炉を国内で建設することにより、CO2を排出せずに安価な電力を潤沢に発電し、産業界や輸送部門の電化を進めていく。
また関係雇用を創出しスウェーデンの競争力を強化、グリーンなエネルギーシステムへの移行を促進する。
原子力発電は堅固なエネルギー供給システムを構築するインフラとして、同国のエネルギーミックスに必要だと強調している。
クリステション首相は今回、この提案を環境・企業省で気候・環境問題を担当するR.ポルモクタリ大臣とともに発表した。
同提案については、今後3か月にわたり一般から幅広く意見を募集し、今年の夏以降に正式に法改正を提案、2024年3月にも改正法を発効させたいとしている。
クリステション政権は右派勢力である穏健党などの3党、および閣外協力するスウェーデン民主党による連立政権で、原子炉の新設と維持に関する今回の方針は、2022年10月にティード城における4党の政策協議で合意されていた。
この「ティード合意」では、2045年時点の電力需要が少なくとも3,000億kWhになることを見込んでおり、現在の倍の規模となるこの需要を安定的に満たすため、原子炉の新設を含め、合計4,000億クローナ(約4兆9,400億円)の投資を実施する。
具体的な方策として同首相は今回、規制当局であるスウェーデン放射線安全庁(SSM)の予算を拡充し、既存炉や新設炉に関する許認可手続きを規制の見直しで迅速化すると表明。
原子力の研究開発予算も増額する。
また、より多くの事業者が原子炉を建設できるよう門戸を開き、SMRの建設と運転に向けた条件整備として関係規制を制定。
SMRでは発電のみならず、水素や高温熱の製造にも利用を広げる方針である。
スウェーデンでは現在、6基の商業炉で総発電量の3割を発電するなど、原子力は水力と並ぶ主力電源だが、1980年には前年のTMI事故とその後の国民投票の結果を受け、2010年までに脱原子力を達成するという政策を施行した。
1999年と2005年にバーセベック1、2号機を閉鎖したものの代替電源の確保が進まず、2006年に発足した中道右派政権は2010年に脱原子力政策を見直し、当時運転中だった原子炉10基に限り建て替えを認める法案を議会に提出、同年6月に可決された同法案は2011年1月に発効した。
しかし、2014年9月に社会党を中心とする中道左派連立政権(前政権)が発足。
政権内の政策協議で、「原子力は将来的に再生可能エネルギーとエネルギーの利用効率化で代替する」、「原子力発電所の安全要件を厳格化し、放射性廃棄物基金の徴収額を増額する」などの方針を打ち出し、再び原子力利用を制限する方針に傾いていた。
(参照資料:スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:原子力産業新聞】
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