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[世界] IEA:今後3年間の電力需要増に原子力が重要な役割担う
2023年2月24日
国際エネルギー機関(IEA)は2月8日、「電力市場報告書」の最新版を公表。
原子力や再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー源により、今後3年間に世界で増加する電力需要をほぼすべてカバーできるとの見通しを明らかにした。
2023年版の報告書でIEAは、2025年までの電力需給やCO2排出量の予測、これとともに変化する発電ミックスの詳細な調査などを通じて、世界各国の現在のエネルギー政策や市場動向を詳細に分析。
様々なエネルギー危機に直面した欧州の2022年のエネルギー開発動向を包括的に分析しているほか、エネルギー需要が急速に拡大し、クリーンエネルギー開発が加速しているアジア太平洋諸国についても焦点を当てている。
同報告書によると、2022年に世界の電力需要は気候条件や世界的なエネルギー危機を背景に伸び率が約2%に低下したものの、それ以降3年間は平均3%で増加することが見込まれる。
こうした速いペースの増加は主に、中国とインドおよび東南アジア諸国の需要によるもので、2025年までの増加分2兆5,000億kWhの7割以上を占めている。
一方の先進諸国も、輸送部門や暖房用、産業界で使用されてきた化石燃料発電をクリーン電力に置き換えて使用量を拡大する方針だ。
幸いにも世界では、再エネと原子力の発電量がこれらの増加分をほぼすべて賄うのに十分な速さで拡大していくと予想され、増加分の大半がカバーされる見込みだ。
このような見通しについて、IEAのF.ビロル事務局長は「発電部門のCO2排出量が転換点に近づいたことを意味しており、各国政府は低炭素なエネルギー源の開発を一層迅速に進め排出削減目標を満たしながらエネルギー供給が確保されるよう努力する必要がある」と述べた。
EU諸国の原子力発電量は低下
2022年に欧州連合(EU)諸国では、原子力発電量が2021年実績に比べ17%低下したが、これはドイツとベルギーで原子炉が閉鎖されたほか、フランスで原子炉のメンテナンスやその他の問題により、利用率がかつてないレベルに低下したため。
欧州ではこれに水力発電量の低下と、火力発電所の閉鎖にともない出力調整可能な電源の容量が低下したことが組み合わさって、残りの調整可能設備の発電容量が一層圧迫されることになった。
結果として、様々な再エネによる発電量が増加し、ガス価格の記録的な高値が石炭火力への切り替えを促したにも拘わらず、EU諸国では2022年にガス火力の発電量が2%増加した。
このようなファクターは、EU諸国のこれまでの電力輸出入構造を大きく変化させることになり、フランスが実質的に電力輸入国となった一方、英国は過去数十年間で初めて輸出国に転じている。
欧州ではまた、電力供給量を保証するため2022年~2023年、および2023年~2025年の冬季に向けて、従来の発電設備で予備の容量を確保しようとする動きがみられた。
発電所の閉鎖時期を延期するというもので、ドイツでは原子炉3基の閉鎖時期を延期させたほか、現行の火力発電設備の15%に相当する火力プラントを再稼働、あるいは閉鎖を延期させている。
アジア諸国では原子力発電量急増へ
世界規模のエネルギー危機によって、エネルギーの供給保証と発電部門のCO2排出量削減で原子力の果たす役割に新たな関心が寄せられている。
欧州と米国では今後のエネルギーミックスの中で原子力が果たす役割について議論が再燃しているが、世界のこれら以外の地域ではすでに原子力発電所の建設を加速する動きがみられている。
その結果、2023年~2025年に世界では原子力発電量が平均で約4%増大する見通し。
これは2015年~2019年の増加率2%をはるかに超える数値で、2025年まで毎年約1,000億kWhの原子力発電量が新たに追加されることを意味しているが、これは米国の原子力発電量の約8分の1に相当する。
この増加分の半分以上は中国とインド、日本、および韓国の原子力発電所によるもので、中でも中国は2022年から2025年の間に原子力で新たに580億kWhを発電するなど、高い成長率を牽引。
インドの成長率は過去最高の81%を記録すると予想され、日本がこれに続くと思われるが、これは日本政府が輸入天然ガスへの依存削減とエネルギー供給保証の強化に向けて、原子力発電量の増加政策を推し進めた結果となる見通しである。
(参照資料:IEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
【情報提供:原子力産業新聞】
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