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[イギリス] 英政府 エネルギー投資新政策を公表:供給保証と自給が目標

2023年4月5日

英政府は3月30日、クリーン・エネルギーによる長期的なエネルギー供給保証と自給の強化に向けた新たな投資政策「Powering Up Britain」を公表した。
原子力と再生可能エネルギーへの莫大な投資を通じて、エネルギー源の多様化と脱炭素化、および国産化を進めていく方針だ。


この政策は、これまでビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が担ってきたエネルギー政策を引き継ぎ、今年2月に新たに発足したエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)が取りまとめた。
DESNZのG.シャップス大臣によると、①クリーンで廉価な国産電力の発電量を拡大し、国内にグリーン・エネルギー産業を根付かせる。
②エネルギーの供給保証と自給を強化するだけでなく、各家庭が支払う電気代を長期的に削減、③英国が世界に先駆けてCO2排出量の実質ゼロ化をリードすることが狙い。


この政策の背景として、DESNZはロシアの違法なウクライナ侵攻にともない世界のエネルギー市場が壊滅的な影響を受けたと説明。
エネルギー卸売価格や電気代の高騰を受けて、英政府はこの冬季のエネルギー料金を約半分肩代わりする措置を取っている。
英国のエネルギー・システムは過去数十年にわたり、高価な輸入化石燃料に依存してきたが、今後はクリーンで一層安価なエネルギー源に大幅にシフト。
今回の政策によって、国内では2030年までにクリーン・エネルギー関係の雇用約50万人分を創出するほか、英国がクリーン・エネルギー産業戦略で優位に立つことで世界中にその専門的知見を輸出する考えだ。


この政策を実行に移す12の具体的手段として、DESNZはCO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)プロジェクトの実施を挙げたほか、「ネットゼロ水素製造基金」の2.4億ポンド(約395億円)を通じてCO2を排出しない水素製造の新規プロジェクトを支援する。
また、電気自動車(EV)の充電器設置地点や関係インフラの拡充に3.8億ポンド(約625億円)を投資。
建物等の暖房用としては化石燃料への依存を減らし、ヒート・ポンプの利用を拡大するため関係基金から3,000万ポンド(約49億円)を拠出するとした。


マンチェスターでの「大英原子力」設置が具体化


原子力については、英政府が将来のエネルギー・システムにおける重要なベースロード電源と位置付けていることから、大規模な開発プログラムを策定して世界的な競争力を確保する方針である。


英政府はすでに昨年11月、サフォーク州で計画されているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(167万kWの欧州加圧水型炉:EPR×2基)建設プロジェクトに、6億7,900万ポンド(約1,119億円)の直接投資を行うと発表。
これに続く新たな原子力発電所の建設計画にも、英政府は産業界や投資家の迅速な取り組みを強力に支援する。


具体的には、昨年4月の「エネルギー供給保証戦略」で約束していた新たな政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」を、イングランド北西部のマンチェスターに設置する。
2050年までに最大2,400万kWの設備容量を原子力で確保、現行の原子力発電シェア15%をそれまでに25%に引き上げられるよう新設計画を牽引していく。
GBNとしての最初の優先事業は英国にとって最適の小型モジュール炉(SMR)を選定することで、第一段階として4月から関係市場でコンペを開始。
夏からの第二段階で候補リストの絞り込み評価を行い、秋には炉型を最終決定する計画だ。


英政府はその後、選定したSMR技術の開発に共同出資する方針で、事業者が資金調達や建設サイトの選定を適切に進めるための協力を提供。
次の議会期間中に、2件のSMR建設計画で最終投資決定(FID)が下されるよう促していく。
また、BEISが昨年5月に立ち上げた1億2,000万ポンド(約198億円)の補助金交付制度「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund=FNEF)」を通じて、新規の原子力発電所建設を阻む課題の解決等に資金提供するとしている。


GBNの暫定会長としては、昨年5月から首相やエネルギー相の原子力産業アドバイザーを務めていたS.ボウエン氏を起用。
暫定CEOには、原子力施設の廃止措置専門企業マグノックス社のG.パリージョーンズCEOを充てることになった。


(参照資料:英政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞

 

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