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[欧州] 欧州の「原子力アライアンス」 CO2排出ゼロに向け原子力支援を呼びかけ

2023年5月25日

欧州で原子力発電を利用している14か国の協力イニシアチブ「原子力アライアンス(Nuclear Alliance)」の参加国も含め、合計16か国が5月16日に共同声明を発表。
欧州でエネルギー生産の脱炭素化を進め、遅くとも2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするため、CO2を排出せず安全で信頼性の高い電源に一層の支援を行うよう、欧州連合(EU)その他の国際パートナーに呼び掛けた。


声明の中で16か国は、この目標の達成において原子力は再生可能エネルギーとともに大きく貢献し、無炭素電力を確保する上で先導的役割を担うと指摘。
現在欧州で稼働している約1億kWの原子力発電設備容量を2050年までに最大で1億5,000万kWまで拡大することは可能であり、この数字は域内で大型炉や小型モジュール炉(SMR)などの原子炉を新たに30~45基建設することを意味している。
これらの新設プロジェクトにより、域内では現在約25%の原子力発電シェアを今後も維持できることから、16か国は原子力分野における協力を一層深めるとともに、EUにも同様の関与を促すため、ロードマップを共同作成することでも合意している。


フランスが主導する「原子力アライアンス」は今年2月、同国のほかブルガリア、クロアチア、ハンガリー、フィンランド、オランダ、ポーランド、チェコ、ルーマニア、スロバキア、スロベニアが初会合をストックホルムで開催。
その後3月にブリュッセルで開催した第2回会合を経て、ベルギーとエストニア、スウェーデンが加わり、現在参加しているのは14か国。
今回、フランスのA.パニエ=リュナシェ・エネルギー移行相がパリで招集した第3回会合では、オブザーバー国としてイタリア、ゲスト国として英国が出席したほか、欧州委員会(EC)のK.シムソン・エネルギー担当委員も参加した。


今回の会合では、各国の閣僚級の代表者が欧州独自の原子力サプライチェーンをどのように確立するか、また、原子力関係の技能や技術革新などの側面で、欧州の原子力産業界を再生する必要性などを議論した。
その中で、ロシア産エネルギーへの依存を引き続き削減していくには、原子力や放射性同位体を確保する必要があるとの指摘があり、原子燃料などの核物質は特に確保していかねばならないとした。
また、そのためにはECやG7等の国際的な枠組みと協力していく重要性が強調された。


今回の共同声明は、これらの議論を踏まえて最終的に16か国が調印したもので、技能や技術革新の側面だけでなく原子力の安全性や廃止措置、放射性廃棄物の管理等についても協力を強化するとしている。


声明ではまた、原子力の発電設備を拡大するのにともない、EU域内の原子力部門で2050年までに新たに30万人分の雇用が創出されると予測。
退職者数を考慮すると今後30年間に域内では45万人以上の新規採用が見込まれるが、これには高度なスキルを持つ人材20万人以上が含まれるとした。


また、この設備拡大により、EUの原子力部門は域内GDPの1.5~2%に相当する920億ユーロ(約14兆円)の経済効果をEUにもたらすと指摘。
既存の原子力設備を2050年まで維持するのと比べて、化石燃料の輸入量削減等により追加で330億ユーロ(約4兆5,000億円)の貿易黒字も期待できるとしている。


16か国が共同で策定する協力ロードマップの骨子には、以下のものが含まれる。


-原子力発電をEUのエネルギー戦略の中に位置付ける


・欧州の全体的規模で脱炭素化とエネルギーの供給保証、および送電網の安定化を図るため、加盟各国のエネルギー戦略で(原子力の有用性を認めるなど)進化を促す。
・より良い資金調達の方法も含め、域内での新たな原子力発電設備の開発・建設に必要な条件を整える。


-原子力発電所の安全性と放射性廃棄物管理


・国際的な良好事例に沿って最も厳しい安全基準を順守していく。
・各国の規制当局間の情報交換を促進し、既存の原子炉や将来世代の原子炉の規制に関する知識ベースを拡大する。


-原子力産業界相互の協力と各国の主権


・原子燃料や放射性同位体の供給確保も含めて、欧州全体の原子力バリューチェーンにおけるEUの戦略的な能力を強化する。
・発電以外の目的も含めた原子力の生産能力を向上させるため、原子力産業界の協力とEUの役割を強化する。


(参照資料:仏政府の発表資料①(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

【情報提供:原子力産業新聞】 

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